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本気のSDGs

第7回 脱!手あたり次第のSDGs

  • SDGs・サステナビリティ経営

山田 朗

山田 朗(シニア・コンサルタント)

本気のSDGs【No.7】脱!手あたり次第のSDGs

SDGsの悩み:目標の設定がわからない

SDGsに取り組む企業が年々増えている中、どのような目標を立てているのだろうか。
帝国データバンクの「SDGsに関する企業意識調査」※によると、SDGsの17目標のうち、現在力を入れている項目は、目標8の「働きがいも経済成長も」が27.1%でトップとなった。これは従来からの働き方改革など社内業務の生産性改革の流れに加えてコロナ渦によるリモートワークなどの実現が後押しした結果と考えられる。次いで目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(15.9%)、目標12「つくる責任つかう責任」(14.8%)、目標13「気候変動に具体的な対策を」(14.7%)が続いた。

主にそれぞれ再生可能エネルギー導入、資源循環社会への貢献、気候変動の緩和・適応という環境面の取り組みに力を入れている企業が多いことがうかがえる。その一方で、「どう目標を設定したらよいかわからない」が43%と最多となり、企業の切実な悩みを表している。

※有効回答数1万1275社。調査期間:2020 年6 月17 日〜30日、詳細はhttps://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p200708.html

帝国データバンクの「SDGsに関する企業意識調査」

目標設定で必ず考えておくべきこと

グループ単位で管理する

目標を決めることは、企業(グループ)におけるサステナビリティ分野の重要課題を決めることだ。取り組みを持続可能にするには、社会への貢献だけでなく結果として事業への貢献にも結び付く活動にすることが重要なポイントである。ボランタリーな社会貢献活動だけでは長続きしない。そして、取り組みの対象範囲は、できれば連結子会社を含めたグループまで広げるのがよい。統合報告書の発行、SBT(Science Based Target:科学と整合した中長期の二酸化炭素排出目標の認定)などがグループ単位であることからわかるように、昨今の世の中の潮流はグループ単位の管理である。

SDGsの目標番号ありきはダメ

また、目標の数や広さも考える必要がある。事業そのものがSDGs目標に直結している企業、たとえば医薬品メーカーであれば目標3「すべての人に健康と福祉を」、食品メーカーであれば目標2「飢餓をゼロに」、教育機関であれば目標4「質の高い教育をみんなに」などがあるが、それだけの目標ではあまりに寂しい。こうした企業でも日本政府がカーボンニュートラル宣言をして脱炭素の動きが活発化する中、省エネルギーや再生可能エネルギーに対して何も取り組まないわけにはいかないだろう。また働き方改革や女性の活躍なども無視するわけにはいかない。世の中の動向やステークホルダーの意識変化などを踏まえて、まずは広範囲に網を張ってそこから絞り込むというプロセスが必要だ。

SDGsの取り組み目標を考える流れとしては、始めからSDGsの目標番号ありきでなく、サステナビリティの対象である環境・社会・経済を広く捉えて検討し、番号との紐付けは最後に行えばよい。

SDGs目標を決めるプロセスはマテリアリティ特定プロセスそのもの

では具体的に目標をどう設定するか。これは企業のマテリアリティ(重要課題)を特定するプロセスそのものである。マテリアリティ(重要課題)という用語はサステナビリティ報告書の国際ガイドラインをつくっているGRIが、2006年版のガイドラン(G3)で導入し、その後2013年版(G4)でさらに強調した言葉であり、SDGsが出現する前からサステナビリティ先進企業を中心に広く使われてきている。
目標設定の詳細プロセスについては今後このコラムで記載する予定なので、ここではどんな視点でマテリアリティを考えたらよいかを簡潔に述べる。取り組み項目は、社会(外部)向けの困りごとの解決と、自社(内部)向けの困りごとの解決に大別できる。

社会(外部)向けの困りごとの解決

まず社会(外部)の取り組みについては、自社の技術や製品・サービスを活用・展開し、さらには他団体と連携することによって、社会(外部)の困りごとへのソリューションを考える。そのためには自社の事業ごとのバリューチェーンを明確にして、バリューチェーンの各段階に顕在・潜在する困りごと(ニーズ)を明らかにすることだ。
困りごとを探すときは、不便、不安、不満、不適切、不足、不経済、不平等などの「不」を考えるとよい。社会(外部)の困りごとの中には、気候変動などさまざまな環境問題やコロナなどのパンデミック、格差問題などの社会問題が含まれる。そしてこれらの困りごとの解決による社会的な意義を社内でよく認識すべきだ。その際、独りよがりにならないために、こうしたソリューションの提供が、「ステークホルダーから共感・納得を得られて、応援したい会社につながるか?」を一つの評価視点にするとよい。

自社(内部)向けの困りごとの解決

一方、自社内の困りごとのソリューションについては、自社内で顕在化している困りごとのほか、先進企業の事例なども参照して取り組み内容を考える。貧困、ジェンダー、教育、不平等、働き方などSDGsの目標No.そのものをチェックリスト的に使うことは可能だが、具体的には自分が「入社したい会社」の理想を描くのがわかりやすいかもしれない。給料が良い、ワークライフバランスが取れている、仕事の生産性が高い、組織の風通しが良い、働きがいがある、自己成長が感じられる、給与・昇進誰が公平・公正である、子育て期間の業務体系が柔軟である、安全・安心して働ける、ガバナンスがしっかりしている......など、いろいろとあるかと思う。
こうしたことを社内で議論し、ありたい姿を描く。自社が「入社したい会社」に転身することは、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上、優秀な社員の採用という社内的なメリットだけでなく、見本として他社に影響を与え、ひいては社会全体の貢献にもつながる。

「どう目標を設定したらよいかわからない」多くの企業の方々には、「共感・応援したい会社になる」「入社したい会社になる」という視点で議論を重ねていただきたい。

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