お問い合わせ

本気のSDGs

第13回 既存事業の価値を向上させる活動とは

  • SDGs・サステナビリティ経営

河合 友貴

河合 友貴(コンサルタント)

sdgs13_main.jpg

なぜ企業がSDGsに取り組むべきか

最近、SDGsがメディアに取り上げられる頻度が増えたため、世の中に広く知れ渡るようになった。しかし、企業がSDGsに取り組む意義やメリットはまだ理解されていない。国際的なNGOであるGRI、国連グローバル・コンパクト、国際企業で構成される組織WBCSDの3団体が作成したSDG Compassの中では、企業がSDGsに取り組む重要性として以下の5つを挙げている。

1.将来のビジネスチャンスの見極め

SDGsは、地球規模の公的ないしは民間の投資の流れを、SDGsが代表する課題の方向に転換することをねらいとしている。そうすることにより、革新的なソリューションや抜本的な変革を進めていくことのできる企業のために、成長する市場を明確にしている。

2.企業の持続可能性に関わる価値の向上

企業の持続可能性のための理論的根拠はすでに十分に確立されているが、(環境コストなどの)外部性がますます内部化されるに伴い、SDGsは経済的なインセンティブを強化する。たとえば、企業が資源をさらに効率的に利用する、あるいはより持続可能な代替策に転換する、などである。

3.ステークホルダーとの関係の強化、新たな政策展開との同調

SDGsは、国際、国家、地域レベルで、ステークホルダーの期待と将来の政策の方向性を反映している。SDGsと経営上の優先課題を統合させる企業は、顧客、従業員その他のステークホルダーとの協働を強化できる。しかし、統合させない企業は、法的あるいはレピュテーションに関するリスクにますますさらされるようになる。

4.社会と市場の安定化

社会が機能しなければ、企業は成功できない。SDGsの達成に投資することは、ルールに基づく市場、透明な金融システム、腐敗がなく、よくガバナンスされた組織など、ビジネスの成功に必要な柱を支援することになる。

5.共通言語の使用と目的の共有

SDGsは共通の行動や言語の枠組みを提供している。これにより、企業がその影響やパフォーマンスについて、より一貫してより効果的にステークホルダーと意見交換を行うことができる。SDGsは世界のもっとも緊急な社会的課題に取り組むために、相互に協力できるパートナーを結び付ける。

企業がSDGsに取り組む場合、アウトサイド・インの考えに基づき、社会課題解決から自社の新事業創出である「1.将来のビジネスチャンスの見極め」に目を向けることが多い。しかし、多くの日本企業には近江商人の心得である三方よし(売り手・買い手・世間)の精神が根づいており、自社の既存事業でもSDGsに十分貢献している。SDGs視点での新たな事業創出とともに自社の既存事業が三方、とくに世間にどのようなよい影響があるかを改めて認識することも重要なステップである。

近江商人の心得

既存事業とSDGsはどう関連しているのか

自社の既存事業や活動とSDGsの17のゴールとの関連性を見るためには、SDGsマッピングを作成する必要がある。
SDGsマッピングは、次の方法で作成する。

①自社の事業活動並びに社会貢献活動を棚卸しする
②各活動を自社バリューチェーンにプロットする
③各活動がSDGsのどのゴールにつながるかをまとめる

SDGsマッピングの結果、一部の社会貢献活動がバリューチェーンに該当しないケースがあるが、それは本業を通じて事業と社会に貢献するSDGs活動ではない(事業性と社会性が両立していない)ボランタリーな活動である。

SDGs活動は、Should(社会課題)、Would(自社の想い)、Could(自社のこだわり・もちもの)の重なり合う活動、つまり自社が行う目的(Why)が明確な活動がもっともよいとされる。こられに1つも当てはまらないボランタリーな活動の場合は、見直しをするとよい。

SDGsマッピングの作成により、自社の既存事業とSDGsの関連性がわかるだけではなく、今現在注力しているゴール、今後注力すべき活動、貢献できていないことが明確になる。

自社が行う目的(WHY)を明確にする

日本企業では既存の事業や活動でも貢献

SDGsマッピングにより注力すべき活動とゴールが明確になったら、次は活動の強化である。
ある大手化学メーカーでは、SDGsマッピングの結果、自社の活動は環境への影響が大きいことがわかり、事業活動を通じて発生する環境負荷のさらなる低減を目指して、MFCAの導入を決めた。

MFCAとは、マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting)のことで、製造プロセスにおけるマテリアル(原材料、副資材など)やエネルギーのロスに着目して、そのロスに投入した材料費、加工費、設備償却費などを総合的にコスト評価する原価計算・原価分析手法である。

MFCA(マテリアルフローコスト会計)の概要

マテリアルとエネルギー消費量削減の取り組みであるMFCAの導入メリットは以下の3つである。

  1. 利益アップ:資源ロスの削減はコスト低減に直結する。また、環境性能差別化による売り上げアップも期待できる
  2. 環境負荷低減:資源消費量および廃棄物処理量の削減はCO2排出量削減につながる
  3. 人材育成:隠れたロスの発見や今まで見送っていた難しい課題への挑戦は組織の改善能力や技術力、管理力の強化につながる 。

MFCAは資源生産性向上により、環境保全活動と経営成果(コストダウン)の同時実現ができる手法であり、SDGsのゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、ゴール12「つくる責任 つかう責任」への貢献を強化する取り組みとなる。
 近江商人の心得である三方よしが根づく日本企業では、既存の事業や活動でもSDGsに貢献している活動は多くある。そのため、ステークホルダーからは、なぜその活動を自社が取り組むのかという目的を明確にすること、そしてその活動そのものを強化することが求められている。バックキャストでのマテリアリティの設定とともに、フォアキャスト、つまり既存事業のさらなる強化も視野に入れてSDGsへの貢献を果たしていただきたい。

JMACのSDGs推進コンサルティング

JMACのSDGs推進コンサルティングについて詳しく >

オピニオンから探す

研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

  • 第25回 “不確実性”を前提としたプロジェクトマネジメントをすべし

イノベーション人材開発のススメ

  • 第6回 イノベーション人材が育つ組織的条件とは

失敗しない組織改革のススメ―問題意識を起点に対策を立てる―

  • 第7回 なぜ「業務改善」は形骸化するのか?

国内の成熟市場で成長するために

  • 【最終回】第10回 働き方改革におけるマネジメント・イノベーション(後編)

本気のSDGs

  • 第7回 脱!手あたり次第のSDGs
  • オンラインサービスは新たなCXをもたらしたのか? オンラインサービス体験から見えた、メリットデメリット

第一線の組織マネジメントを考察する

  • 【最終回】第15回 やりくりのマネジメントの意味合い

新価値創造マネジメントの新潮流

  • 第8回(最終回) 事業戦略での製品群の全体最適化
  • 「職場力」を再生する 〜リモートワーク時代の「場」のマネジメント〜

ものづくりマネジメント最前線

  • 第2回 これからのものづくりは戦略と実行力!

オムニチャネル成功の鍵

  • 第6回 オムニバイシクルモデルの実際 ①Omni‐CRM(顧客起点のCRM) 推進ポイント

オピニオン一覧

コラムトップ