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第3回 経営戦略に「自社らしさ」を

  • SDGs・サステナビリティ経営

栗栖 智宏

栗栖 智宏(チーフ・コンサルタント)

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グレート・リセット時代の経営戦略

2020年6月、世界経済フォーラムは次回のダボス会議のテーマを、新型コロナウィルスの流行を受け、社会構造や経済活動を刷新するための「グレート・リセット」にすると発表した。この中で、「われわれは協力を通じて公正で持続可能かつレジリエンス(適応、回復する力)のある未来のために、経済・社会システムの基盤を緊急に構築すべき」とのメッセージを発している。この内容に象徴されるように、われわれは新型コロナウィルスの流行を契機に、環境・社会の変化が経済活動のあり方を根本から変える影響力を持つことを改めて認識した。

すでに、新型コロナウィルスに起因する新しい生活様式へのシフトは、企業活動を大きく変えつつある。多くの企業が経営方針の見直しを図られている。しかし、Afterコロナ時代に向けた経営戦略の構築に手探りの企業が多いのではないだろうか。このような転換期において重要度が増している考え方が「サステナビリティ」である。

企業が追求するサステナビリティには、守りと攻めの2側面がある。

守りのサステナビリティとは、事業に影響を与える環境・社会変化のリスクを認知し、自社のリスクマネジメントの中に組み込み、影響を緩和するための方策を経営戦略に織り込むことである。新型コロナウィルスに象徴されるパンデミックに限らず、豪雨や地震などの自然災害、その他にも資源の枯渇、人口増加に伴うさまざまな問題に起因する事業活動に与える影響への備えが挙げられる。

一方、攻めのサステナビリティとは、これら環境・社会の課題を新たなビジネスチャンスと見なす考え方である。社会に普遍的に存在する課題解決に貢献することが事業成果にも繋がり、環境・社会のサステナビリティにも貢献する善循環の考え方である。この攻めのサステナビリティが会社の新たな競争力を構築する突破口となる。

共有価値の創造(CSV)の追求がユニークさを生む

従来の経営戦略の発想法では、経営環境を分析する際に既存顧客のマーケティング分析や競合企業の動向調査、法制度改定、技術動向調査など、既存事業周辺を対象とすることが多いのではないだろうか。つまり、大きなパラダイムシフトや予期せぬ環境・社会の変化を、往々にして分析対象から外し、近視眼的な情報に基づく戦略立案に終始していないだろうか。このような分析に基づく企業活動が進むことで、同業種内での模倣競争に陥り、コモディティ化が加速する。新規性ある商品を開発しても、即時競合に模倣され価格競争に陥る。また、単年度目標を追うばかりに、長期成長シナリオは置き去りにされたまま、過去の延長線上の経営方針から脱却できない状況に終始してしまう。こうした事業環境下で閉塞感を感じている企業も多いのではないだろうか。

このような社内起点の経営戦略の発想をインサイドアウト型発想と位置付けると、環境・社会課題から経営戦略を発想するアウトサイドイン型発想の重要性が浮き彫りになる。非連続で長期的な経営戦略の発想が他社と異なる自社のユニークな競争力を生む源泉となる。このアウトサイドイン発想で重要な概念が「共有価値の創造(CSV)」である。これは、マイケル・ポーター氏が提唱した概念で、社会課題を経済活動の力で解決し、経済的価値も追求するものである。つまり、社会価値の創造と経済的利潤追求の両立を目指すものである。

これら、攻めのサステナビリティを推進するうえで、社会課題からビジネスチャンスを見出す視点が、「持続可能な開発目標(SDGs)」の17のゴール視点である。
これは2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標である。17のゴール視点は169のターゲットに詳細化され構成されており、これら視点を用いることで、攻めのサステナビリティを意図した事業機会の発想に活用できる。
※詳細の活用検討は今後の本コラムで紹介予定

SDGs17の目標

ミッション・ビジョンに立ち返る

では、17のゴール視点に基づき経営戦略を検討する際に、何から始めるべきだろうか。答えは、自社の経営判断の起点となる「価値観」に立ち返ることである。この会社の価値観を示すものが、自社の設立趣意書や経営理念である。言い換えれば企業の社会における存在意義を示したものである。

この経営理念を踏まえ、経営を担うトップや経営陣の想いに基づき、将来的(5~10年先が一般的)に目指したい姿を経営ビジョンにまとめる。この経営ビジョンの検討の際はSDGsの17のゴール視点も活用し、社員を巻き込んだワークショップ形式が有効である。自社の価値観に基づき、われわれは将来どうありたいのかについて、経営トップと従業員が経営ビジョンを共有できるからだ。

社会課題の解決への貢献は、社会課題に関係するステークホルダーからの応援に繋がり、企業の存在意義をより明確にする。社員にとっても応援される会社で働くことはモチベーション向上に繋がる。さらには社員が目指す方向性や価値観を共有することで企業努力の対象が明確になり、企業活動のパフォーマンス向上も図れる。

一気通貫の3つの変革

自社らしさを追求する

経営ビジョンの検討では、自社の"らしさ"に立ち返る。たとえば、固有技術の追求、取り扱うサービスの商材への知見、創業当時から積み重ねて来た歴史、地域の雇用や経済、社会への貢献への想いなど、企業それぞれにこだわりと言える"らしさ"を再認識する。言い換えると自社のユニークさ、唯一無二で他社と比較されない独自性は何かを定めることだ。

"らしさ"の追求の際に重要なのが、企業活動を通じて達成したい目的(パーパス)を定めることである。たとえば、ネスレは食品会社ではなく「お客さまのクオリティオブライフの向上に貢献する」会社と定め、栄養価値の向上を追求することで、より社会に貢献することを目的に定めている。

自社の"らしさ"に基づく独自の価値を追求することが、真の競争優位の構築に繋がる出発点である。自社の"らしさ"を活かすことで社会に必要とされ、企業活動を応援される企業になる。社会課題の解決は新たな顧客を創造する。まさにブルーオーシャン市場を開拓することに繋がるのである。

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