本気のSDGs【No.8】伸び続けるESG投資と資金調達

2021年4月20日

石田 秀夫(シニア・コンサルタント)

本気のSDGs【No.8】伸び続けるESG投資から資金を調達するには

持続可能な社会は貨幣価値だけでは計れない

持続可能な社会と経済成長は相対する関係にあるという考えがあるようだが、今後は両立させることが当たり前になるだろう。そのために、経済を今の貨幣価値だけでなく、新たな貨幣価値で計測していく必要がある。新たな貨幣価値とは、SDGsやESG投資を視野に入れた貨幣価値(ここでは新・貨幣価値とする)のことで、旧来の貨幣価値と分けて考えた方がよいと筆者は考える。

これまでの貨幣価値は、計量可能なモノ(財)の客観的な交換価値を表す尺度であった。一方で新・貨幣価値は、モノや財だけでなく、個人の体験や「思い・気持ち」も入った無形的な価値とである。たとえば、SDGsに関係する企業の取り組みに投資をしたり、商品やサービスの購入で金銭を払う場合、そこにはモノや財以外の価値として、地球や他の誰かを思う気持ちをのせていることになる。そのようなお金の使い方したときは、金銭の対価として得るモノ以上の価値を感じ、少しうれしくなるのは筆者だけではないだろう。人の価値観は多種多様なため決して押し付けるものではないが、この価値のネットワークが広がれば持続可能性が高まり、もっと良い未来になるはずである。

このような価値の感覚・感性は社会価値として理解されてきており、昨今では環境・社会・ガバナンスの観点で企業活動を評価して投資するESG投資が伸びている。

ESG投資は「投資家よし・企業よし・社会よし」の善循環をもたらす

ESG投資の伸びを示すデータに、直近ではないがGSIA(Global Sustainable Investment Alliance) が2018年に取りまとめた「Global Sustainable Investment Review の2018年度版」が公表されている。以下に抜粋する。

・ヨーロッパでは、2016年12.4兆ドルが、2018年には14.1兆ドルに伸長
・米国では、2016年8.7兆ドルが、2018年には12.0兆ドルに伸長
・日本でも、2016年0.5兆ドルが、2018年に2.2兆ドルに伸長
(出典:https://japansif.com/gsir2018jp.pdf)

なお、上記以外のカナダ・豪州などでもESG投資残高は伸びている。なぜESG投資が伸びているのか。言うまでもなくESG投資は、環境・社会・ガンバンスに配慮している企業を重視・選別して行う投資である。評価の観点からみると、ESG評価の高い企業は事業に対して、社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと理解できる。とくに公的年金基金などは、中長期的なフリーキャッシュフロー(FCF)の創出力など企業価値向上が期待できる企業を見極めて選別し、投資リスクの軽減の観点から積極的にESG投資額比率を増やしている。世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立法人)が投資ポートフォリオを組み替え、ESG投資を積極的に組み入れていることは、比較的記憶に新しいのではないだろうか。日本人として、ちょっと安心できる話である。

また、ESG投資については伸長率も伸びており、投資総資産に占めるシェアも大きなものとなっている。以下は同じくGSIAがまとめたデータである。主要国の投資総資産に占める割合が大きくなっているのがわかる。

・ヨーロッパでは、2014年58.8%、2016年52.6%、2018年48.8%と推移
・米国では、同様に17.9%、21.8%、25.7%でシェアを上げている
・カナダでは、同様に31.3%、37.8%、50.6%と伸長
・オーストラリア・ニュージーランドで、16.6%、50.6%、63.2%とシェアを占める
・日本でも、2016年3.4%、2018年18.3%と伸長している

このような傾向から今後もESG投資は増大していくだろう。ESGの活動なくしては、将来の企業の資金調達は成立しにくくなることも想定される。ESG銘柄は中長期を見据えたものが多く、ESG活動は安定した資金調達・確保のためのたいへん重要な要素である。投資家がESG投資を行うことで中長期のFCF創出となり、企業にとっては安定的な資金調達となり、かつビジネスの機会としてSDGsに取り組むという関係になる。この善循環が回れば、持続可能な社会が見えてくる。この「投資家よし・企業よし・社会よし」の善循環は、「持続可能な新・三方よし」と言える。

ESG・SDGsなくして、資金調達と事業継続はできなくなる

今後、企業はSDGsの観点を取り入れたビジネス活動なくして、資金調達は難しくなるだろう。SDGsの活動はハードルが高いように思いがちであるが、前回の章(リンク)でも紹介したようにプロセスをしっかり踏めば、どの会社も取り組めるものである。

SDGsの17の開発目標については、他の回にあるので説明はしないが、意味合いを解釈し何かの活動を加えることで、自社の事業活動を位置づけることができるはずだ。また、SDGsは日々目にする広告・宣伝から大企業が主体の活動に見えるが、むしろ中小企業が活動を行うことで、さまざまなメリットがある。

資金調達面

  • 金融機関から融資のハードルが下がる
  • 行政の補助金などを受けやすくなる

売上面

  • SDGs取引を志向する大企業とのネットワーク・取引が増える
  • SDGsに関する商材を持つことで協業などが進み、収益につながる
  • SDGsの目標と合致することで消費者や顧客の賛同を得やすく、意味的な価値を持ち、購入などにつながりやすくなる
  • 自社ブランドイメージや社会的なステイタスが向上する

環境面

  • 活動を行うことで、自社のエネルギーコストの低減につながっていく
  • 廃却の低減・歩留りの向上が得られ、前向きなコスト低減につながっていく

自社の経営面

  • マテリアリティ(重要課題)を特定することで、経営・事業目標に対する求心力が高まり、組織内の一体感を生むことができる
  • 社員の仕事に対する意味づけや目標、貢献が明確になり、モチベーションやロイヤリティーが向上する
  • 人材を獲得しやすくなり、加えて離職も低減できる

このように抽出するときりがないほど多くあるが、SDGsの活動がESG投資や資金調達、そして経営の良化につながることを理解いただけたと思う。あとは実際に行動に移すことが大切である。

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ishida_sdgs.jpg石田 秀夫
取締役
生産コンサルティング事業本部 本部長 シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業戦略・商品戦略・技術戦略・知財戦略を組合せた「マネできないものづくり戦略」を提唱し、次世代ものづくり/スマートファクトリー化推進のコンサルティングに従事している。