• TOP
  • コラム
  • 塚松 一也
  • 第16回 社内で新しいことをやろうとするなら「社会科学」「影響力」を意識すべし
第16回 社内で新しいことをやろうとするなら「社会科学」「影響力」を意識すべし

2022年1月14日

新しいことは、周りの反対にあうのが普通

 今回も新商品・新事業のアイデアを社内提案して先に進める人が意識したほうがいいと思うことを書きます。

 前回、社内に無意味に敵をたくさんつくらないように立ち振舞おうということを書きました。しかし、それは上の人に迎合しろとか八方美人になれという意味ではありません。それが画期的・革新的であればあるほど、社内への新しいことの提案は、"最初"は反対される、懸念を持たれるものです。そもそもが、新しいことの提案とはそのような性質のものですので、上の人・周りの人に迎合するような言動をしていては何もできません。かといって、上の人・周りの人を敵に回してしまうような言動も自らを貶めることになります。上の人・周りの人と"上手く"つきあっていく"術(すべ)"が必要なのです。

 このような"術"は、『自然科学』ではなく『社会科学』の世界です。物理系の力学ではなく、人間系の力学の活用です。もっと俗っぽく表現すれば、社内政治力というか影響力と呼ばれる"力"です。ところが、R&Dにいる人の多くはいわゆる"理系"のバックグラウンドで物理、化学、機械、電気、情報......という科学法則の世界で生きてきたわけで、人間系の上手な振る舞いがあまり高いとは言えない人もいます。

 R&Dの現場から何か新しいことを始めてそれを前に進めていくには、この『社会科学』の重要性を強く認識することが、きわめて重要だと思います。大げさにいえば、一人の研究開発実務を行う担当者の仕事と、新しいことを提案しプロジェクトとして前に進めていく仕事は、別のタイプの仕事なのです。スポーツになぞらえれば、"別の種目"なのです。まずはこの"種目が変わった"ことの認識が重要です。

tsukamatsu_016_01.png

「権力」に頼るのではなく、「影響力」を発揮するようにしよう

 従来にない新しいことを始めると、多くの場合、周りの反対にあうものです。イノベーション実現のためには、その反対論とどのように対峙し前に進めるかということが重要な論点になります。

 そのひとつの方法は、周りから反対されない地位に自分を置く(上げる)ということです。自分でスタートアップ(ベンチャー企業)を立ち上げてトップに君臨して自由に采配をふるうというのがその典型例です。既存企業の中であれば、何らかの方法で(というより、あらゆる方法を駆使して)早く偉くなって(最低でも部長ぐらいになって)裁量範囲を広げてから、自分の権限裁量で新しいことを始めれば、反対にあってもなんとか突破できる可能性は高まります。要するに、先に偉くなってしまうというアプローチです。でも、実際は御曹司でもないかぎり、なかなか急には偉くはなれないものですが......。

 もうひとつは、上手に周りを折り合いをつけながら、少しずつ前に進める方法です。俗に言う(?)"うまくやる"というアプローチです。でも、これも簡単ではないですね。保守的な上の人・周りの人に迎合していてはイノベーションを主導できませんし、反感を買うなどして潰されては、もともこもありません。説明してもなかなかわかってくれない上司もいるでしょうし、古い(?)感覚で判断されてしまうこともあるでしょう。そういうことが続くと、「私には権限がないので、周りが言うことを聞いてくれない、協力してくれない......」と思い悩み、いきおい権限を求めたくなるのが人情ですが、そこをぐっと耐えて、周りに少しずつ影響を及ぼす方法をとりましょう。

 要するに、権限(権力)がない場合には、影響力で何とかするしかありません。影響力を強めていく、影響範囲を広げていく、仲間・賛同者を地道に増やしていく、そういう地道な努力に尽きます。

 実は"社内政治力"には2つの力があります。ひとつは「権力」で、もうひとつは「影響力」です。既存企業の中で新しいことを前に進めるならば、この「影響力」を意識し発揮することが大切だと私は思っています。"うまくやる術"の正体は「影響力」だと言っていいでしょう。

tsukamatsu_016_02.png

 次回は、自分の出世や保身のためではなく、イノベーション・新しいことの実現を志す人が身につけるべき影響力について具体的に書くようにします。

コンサルタントプロフィール

塚松 一也

塚松 一也

R&D組織革新センター シニア・コンサルタント

R&Dの現場で研究者・技術者集団を対象に、ナレッジマネジメントやプロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとして、魅力的なありたい姿を真摯に構想し、現場の組織能力を信じて働きかけ、じっくりと変革を促すコンサルティングスタイルがモットー。ていねいな説明、わかりやすい資料づくりをこころがけている。
コラム一覧を見る