本気のSDGs【No.6】企業の社会的責任はSDGsの活用から

2021年2月10日

大谷 羊平(シニア・コンサルタント)

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企業の社会的責任とは

企業の社会的責任という考え方は、1950年代から日本でも語られ始めた比較的古い概念である。公害や企業による不祥事をきっかけに企業の責任が問われ、企業が社会から受け入れられ、存続し続けるためには果たすべき役割があると言われてきた。つまり、企業の社会的責任は、企業の継続性(サステナビリティ)の議論そのものである。その関心が高まったり、落ち着いたりという時代を繰り返していたのである。

2000年ごろから、SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)ファンドなどのエコファンドが登場し、投資先選定の中で、CSR(Corporate Social Responsibility)のスコアリングや格付けが行われるようになった。それらの動きも受けつつ、経済団体が推進ガイドラインなどを整備してきた中で、CSRという言葉や取り組むべき内容が広く知られ、多くの企業が取り組むようになってきた。

それには次のような、いくつかの時代背景もある。

  • バブル崩壊後の政府による規制緩和
  • 企業におけるガバナンスや内部統制の強化
  • 関連する法の改正
  • 企業の商品化に伴うM&Aや資本提携などの増加
  • 企業格付け・評価の重要性
  • ビジネスのグローバル化およびビジネスモデル革新
  • インターネットの普及による海外情報の入手スピードアップや企業情報の重要性 など

これらの要因が重なり、投資家、他の事業会社、社会から企業を評価する視点は、単に売り上げや収益を上げているかどうかだけでなく、きちんとした会社なのかということが強く問われるようになってきた。「この会社は世の中の流れに対応している会社なのか」「公正さや誠実性を持った会社なのか」など、非財務の視点でみる流れは、コロナの環境下によって、環境変化への対応力やそのスピード感など評価の要素が増えることはあっても減速することはないだろう。「当社の存在は経済的な価値以外に、どのような社会的な価値があるだろうか」を自問すべき時代になっているのである(第1回 のコラムも参照のこと)。

CSR活動とSDGs

それでは、SDGsを意識した場合に、CSR活動にはどのような影響があるのだろうか。

結論から言うとマイナスの影響はなく、プラスの影響が大きいと考える。企業のCSR活動において、<その活動の影響やインパクトは社外に向けたものなのか、それとも社内に向けたものなのか>という視点と、<その活動のねらいは、貢献的なものなのか、義務・防御的なものなのか>という視点から、大きく4つの方向性に区分できる。

CSR活動のポジショニング。活動の影響やインパクトは社外に向けたものなのか、それとも社内に向けたものなのか、活動のねらいは貢献的なものなのか、義務・防御的なものなのか。大きく4つの方向性に区分できる。


図中の「攻めのサステナビリティ」「守りのサステナビリティ」の詳細については、第3回のコラムを参照していただきたい。

義務・防御的で社内に向けた右下の領域は、
・リスクマネジメント活動
・コンプライアンスの強化 などの活動が該当する。
義務・防御的で社外に向けた左下の領域は、
・適切な法的義務の遂行などが該当する。

これら下の領域のなかで、事業継続計画(BCP)などは、社内外の中間に位置する活動と言える。これらは、企業に求められる法的、倫理的な対応をしっかりとモレなく実施し、不祥事などで継続性が脅かされることを予防するための、企業防衛的な「守りのサステナビリティ」活動と位置づけられるからである。

 一方で、貢献的で社内に向けた右上の領域は
・福利厚生の充実やES活動
・働き方改革の活動 などが位置づけられる。

貢献的で社外に向けた左上の領域には、
・寄付活動や芸術や学術の支援活動
・企業見学や就業体験の受入
・地域の活動支援
・ボランティア支援などの慈善的活動 などが含まれる。

そしてもちろん、社会貢献的な本業の事業活動が本来的な活動として位置づけられる。

現実問題として、これまで貢献的な活動に対する企業の取り組みは、創業者の考え方、過去や現在の経営者の思いなどで企業ごとの自主性に任されてきていた部分が大きかった。何をどこまで行うべきなのか、各社悩みながら、要請や内部からの発案に基づき、手探りで実施してきていた部分が大きいのである。今後SDGsを意識して貢献的な活動を検討することは、企業がその方向性を検討する際の大きな軸になるはずだ。

SDGsの活用でCSR活動に広がりを

従来のCSR活動とは、経営者の発想や限られた周囲からの要請、社内でのアイデアの公募などを具体化した貢献的な活動だった。対して、SDGsで定義づけられた17のゴールや169のターゲットは、自社のリソースを使って、社会課題にもつながる活動を考えるきっかけにもなり、活動の位置づけを整理する視点ともなる。さらには、そこに自社の提供してきたサービスや製品の歴史や価値を位置づけることで、<自社らしさ>という視点を追加することもできる。

社内向けの活動や、社員による外部活動についても新たな発想が広がり、その活動が社会的課題の解決にもつながっていく。こうした説明を強化していくことで、社員の士気を高める活動にもつながる。会社としての非財務的なきちんとした活動は、社外からの評価だけではなく、社員による会社の再評価、社員予備軍の学生などからの評価向上にもつながることを認識すべきである。

本業としての事業を社会貢献につなげられないか、というのは古くて新しい課題である。薬品や、医療機器、医療器具などの事業を持っている企業は本業の事業の拡大が社会貢献につながると位置づけやすいが、そのような業種は決して多くない。ボランタリーでも社会貢献できる活動は非常に有益ではあるが、本業と結びつき、収益を伴わないと長く続けにくいのが実態である。古くはトヨタ自動車におけるハイブリッド車の開発・販売や、最近であればテスラによるEV車や、ユーグレナによる石油代替の燃料の開発・販売というように、社会貢献と実益を両立できる(可能性のある)事業の確立はこれからの企業経営にとって非常に重要な課題である。その解決に向けてアウトサイド・イン型発想で新しい事業のタネをなかば強制的に発想する手段として、SDGsを活用すべきである。

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ootani_photo.jpg大谷 羊平
取締役
経営コンサルティング事業本部 本部長 シニア・コンサルタント

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1993年日本能率協会コンサルティング(JMAC)に入社。大手・中堅を含め、多数の業種業界における経営課題解決コンサルティングを支援。収益改革やBPR、情報システム構築、働き方改革やKPI管理、リスク管理など幅広い分野を支援している。