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JMACレポート

布施工科高校にて「ものづくり」の授業支援を行いました!

  • 生産・ものづくり・品質

石田 秀夫

 大阪府立布施工科高等学校の「総合的な探究の時間」にてJMACコンサルタントが講義・授業の支援を行いました。

 2018年からの学習指導要領において定められた「総合的な探究の時間」では各学校の生徒育成像に合わせてPBLモデル(課題解決型学習)を年24回の授業として構築・運用しています。同校では従来の工業高校のすがたである「創る技術、造る技能」に加え、「想像力を育む管理技術=価値創造」ができる人材を育てています。

 同校の卒業後の進路は就職9割、進学1割。高校を卒業し、社会に出て活躍できるたくましいエンジニアを輩出すべく、実践的で特色ある学びが特徴です。

【1年次】

  • コミュニケーション能力
  • 情報管理能力
  • プレゼンテーションスキル
  • チームワーク

【2年次】

  • 企業活動・コンプライアンス
  • 管理技術(ものづくりのリーダーとなれる素養)

【3年次】

  • 週に1日×1年間の企業現場で長期就業訓練

 担当教員の福岡洋希先生は、教員になる以前は元々メーカーで働いていた技術者。「会社に入って管理技術をはじめて学んだが、なんでこんな大切なことを今まで教わらなかったんだろうと感じた。いつか教員になって学生に伝えたかった」という想いから外部の支援を求め、立命館大学 織田昌雄博士とJMACが1年間の授業支援を行いました。

 今回は【ものづくりを最適化する「管理技術」】授業風景の一部をレポートします。

「管理技術」ってなんだろう?

 皆さんは「IE」「QC」「VE」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?エンジニアの間ではよく出る言葉ですが、一般的には聞き慣れない方も多いはず。

  • IE:作業や工程を見える化し、ムダを見つけて改善する
  • QC:バラツキなく一定の品質を維持し、また向上させる
  • VE:機能とコストの両面から、製品やサービスの価値向上を考える

 なかなか難しいように見えて、実はこれは私たちが日常生活を営む上で、無意識のうちに考えていることです。管理技術は社会人として必須のスキルであり、さらにこれらのことをきちんと考えられることは、現場の強さにも繋がります。

最強の問題解決方法 TRIZ

 まず最初に織田博士より、デザイン思考系の管理技術TRIZについての講義が行われました。

織田 昌雄 氏

立命館大学 OIC総合研究機構 上席研究員
Open Innovation and Collaboration

元 三菱電機株式会社 人材開発センター ものづくり教室長
博士(技術経営)教育士(工学・技術)CVS(国際バリュースペシャリスト)

【研修実績】

・ものづくりの基本となるQ・C・D(品質・コスト・納期)研修、改善・改革のための管理技術(IE・QC・VE)研修の企画責任者・講師

・製造企業の新入社員、工科系・経営系の大学生・高校生を対象にしたものづくり入門研修の企画責任者・講師

・全体最適の視点でものづくりの改善・改革を牽引するリーダー研修の統括責任者・講師

・実践にこだわったテアダウン手法、VE(バリュー・エンジニアリング)、TRIZ(発明的問題解決理論)等のPBL(課題解決型学習)

 TRIZとはゲンリッヒ・アルトシュラーが250万件ともいわれる特許をもとに構築した「問題解決方法の理論」のことです。TRIZの「40の発明原理」は分割原理、分離原理、局所的原理、非対称原理、組合せ原理・・・などに分かれていますが、今回はその中から織田博士が見出した「10の対極発明原理」に着目しました。

TRIZ演習:分割原理を使った身の回りの発明をみつけよう!

 講義のあとは、身近なものにどのような原理が使われているか以下の「10の対極発明原理」に当てはめ、グループワークで考えます。

  1. 分割
  2. 抽出
  3. 非対称
  4. 逆発想
  5. 曲面
  6. 可変性
  7. 他次元移行
  8. 害益変換
  9. 周期的作用
  10. 使い捨て

織田博士「たとえば、窓ガラスも大きな一枚のガラスじゃなくて分割することで、閉めたり開いたりが容易になっています。ブラインドカーテンも分割していて且つ可変性で陽の光を入れたり、遮ったりすることができます」

 このように、発明原理は実は身近に存在しており、問題が起きたときに当てはめるとそれが解決や開発のヒントとなるのです。
学生たちからは思考を凝らしたユニークなアイデアが飛び出しました。

分割原理:ホワイトボードは表と裏でつかうことができる
害益変換:エアコンから出てきた水をのめるようにする 等

 これらの考えに管理技術・専門技術を組み合わせて価値を作るのがエンジニアの仕事です。

JMACが教える、生産工学・品質管理

 生産工学、品質管理の授業はJMACが担当しました。JMACの授業のポイントは「最初に演習を取り入れる」こと。まず手を動かしてやってみることで「いまからなにを勉強するのか」「何に役立つのか」ということを理解し、その後の講義で理論をインプットする仕掛けです。

 たとえば、JMACコンサルタント石田秀夫によるIEを学ぶ授業ではレゴブロックを使用し、効率の良いライン生産方式を考えました。時間研究・動作研究を実践することを目的とし、オリジナルの生産ラインを考え、改善を行い、時間短縮を図り生産性向上を行います。

 幼いころから触れてきたレゴブロックを効果的に使用する親しみやすい授業に、

  • レゴの車の組み立てで一番早く完成させる事ができ、嬉しかった
  • 自分は車が好きなので話の内容がすぐに理解ができ、分かりやすく、今後に役立つと思った
  • ライン作業において効率よく一定の速さで終えることのメリットがとてもよく分かった

などポジティブな意見が生徒から上がり、評判は上々だった様子です。

 また、QCの授業では5センチのテープを工作物で、早く、均等に切るための方法を考えました。ヒストグラムに落とし込み分析を行いながらオリジナルの治具を開発し、品質のばらつきを改善します。 

 実際に治具を工作し、改善を繰り返すことで、生徒は品質管理の考え方について自然と身につき、実感することができます。最終的な結果はもちろん大切ですが、まずは工夫を重ねることが重要です。

 お互いの工夫をクラス全員で共有し、賞賛し合うことでより一層生徒の皆さんに意欲的に取り組んでもらえる授業となりました。

担当コンサルタント 石田秀夫からのコメント

 ご存じとは思いますが、製造業が活用する「技術」には、固有技術と管理技術があります。固有技術は、製品技術や生産技術そのものであり、製品技術においては機械設計や電気設計、生産技術においては機械工作法やその中のプレス技術などさまざまあります。一方とその製品技術の活用も行い、ものづくりや生産活動を目指す状態にするための方法論の技術が今回行っている管理技術となります。生産性を上げたい・品質を向上したい・商品価値を向上したい・新たな発明をしたいなどを行うための、課題解決・問題解決の思考法であり方法論です。

 社会人になり世の中にでると、特に製造業の業務では解答のない問題・課題がほとんどだと思います。その問題・課題に接した際に今回の管理技術が少しでも活用できればと思います。また、今回の経験を通じて、創意工夫することの大切さとメンバーと議論し何かを創っていく「創発」することが大切であることも少しでも体得してもらえると嬉しいです。一人ひとりが創意工夫・創発が楽しい!となると、社会人になった際の職場も活性することになり、会社としてもその活動が束になれば収益に繋がります。

 今回の管理技術を活用したPBLの機会は、これからの可能性ある工科高校の学生に対して、創意工夫と創発の種か芽を育むものであると思っています。この一歩が学生たちの成長と活用を通じて会社・産業界の発展に寄与するものと確信しており、この活動を影ながら支えていければと思っています。

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