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第8回 コロナ禍だからこそできる保全業務の働き方改革

  • 生産・ものづくり

鐘ヶ江 克則

鐘ヶ江 克則(チーフ・コンサルタント)

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コロナ禍で設備保全業務にも新しい働き方が求められてる。労働人口が減少している中、今後は働き方の改革により、さらに高いレベルでの安定稼動や品質の確保が求められ、保全業務の信頼性向上のための方策も必要だ。これらは今後の日本の製造業を取り巻く環境を考えると、いずれは直面する課題なのだが、コロナにより、その実施ニーズが早まったと言えるだろう。

将来が不透明で不安が募るコロナ禍の今こそチャンスと考え、IoTを活用した「保全の効率化」、ベテランのノウハウなどを担保する「保全の信頼性向上」の課題を考えていきたい。

保全業務にIoTがもたらす効率と効果

保全業務の内訳と効率化対象

保全業務は大きく、間接業務と付加価値業務に分かれる。間接業務とは保全計画や予算計画の立案、保全データから評価・分析を行うための準備作業のことである。付加価値業務とは、保全部門機能を推進させるための行動、点検や交換、測定などの作業を指す。
「故障を未然に防止する」ための設備点検などは、保全に欠かせない付加価値業務であるが、実はここにも多くの間接業務が含まれている。

従来型の点検の方法を見てみよう。保全員が記録用の点検帳票を持って工場内を歩き回り、各設備の計器類やセンサー、製造条件などを確認し、数字の記録やチェックを入れることが一般的である。さらに、数字だけでは変化に気がつきにくいため、記録を表計算ソフトなどで分析することで保全業務対応している企業も多いだろう。

この場合、事務所に戻り、データを入力しグラフ化、さらにメールなどでデータを共有化する、といった業務を行っている。以下の図はA社における保全業務の内訳の実例である。付加価値業務よりも間接業務の割合が多くなっていることがわかる。

保全業務の内訳

保全員1人当たりの担当保全台数が少なかった時代ならまだしも、保全部門へも効率化・省人化が波及している昨今、管理しきれないというのが実情だろう。アナログでこれらの業務を行っているならばなおさらである。

すべての点検項目に対しセンサーなどの測定機器を取り付けて、無人で監視するのが理想だが、現状、アナログ作業を行っている職場が一足飛びでそのレベルに行くのは現実的ではない。そこで、まずは「人が現場で保全業務をするが、業務フローどおりに行うだけでデータベースに自動的に保全データが蓄積され共有化・可視化される」ことを目指してはどうだろうか。保全業務から間接業務だけを排除し、次の段階で付加価値業務の信頼性向上(効率化)を考えるのがよいだろう。

「保全の間接業務×IoT」がもたらすこと

保全の間接業務を効率化するために、IoTツールの活用が非常に有効である。たとえば、点検結果の記録を紙ではなくタブレット端末やスマートフォンに直接入力する。手動の入力作業がなくなるだけでなく、そのデータを自動的に指定のグラフにすることもできる。さらに写真や音声、動画を用いてその状況を瞬時に関係部門に連絡し共有することも可能だ。

最近では工場内にも無線LAN環境が整っており、工場内のどこからでも社内ネットワークやインターネットにつながる。データの入力やまとめ作業など、保全員がやらなくてもいい間接業務をIoTツールで効率化すれば、間接業務として拘束される作業はなくなる。同時に点検や保全といった本来取り組むべき業務の時間を確保できるのである。

保全間接業務 効率化の例

「保全の付加価値業務×IoT」で目指すもの

保全の付加価値業務には、効率化だけでなく信頼性を担保できるIoTツールの検討が必要だ。コロナが終息するのは2022年以降という説もあり、終息までの期間が長くなればなるほど技能伝承がおろそかなまま、ベテラン保全員が退職してしまうなどの問題が発生する。Afterコロナでは、マニュアルがないと点検もできないような経験の浅い保全員も増えてくるだろう。

したがって、誰でも信頼性の高い保全業務を行えるIoT技術が必要になる。たとえば、小型ディスプレーやカメラを内蔵した眼鏡型のウエアラブル端末。音声や映像で点検手順を確認すれば安全かつ効率的に点検でき、異常があれば遠隔地からベテラン技術者がカメラ越しに状況を判断し指示を出すことも可能になる。こうしたIoTは足りない技術や経験の補完になるだろう。

もちろん、点検作業をIoT化すれば製造現場のトラブルが減るというわけではない。オペレーターがその点検の目的や管理規格の意味を理解したうえでデータを分析しなければ、どんなに点検しても設備故障の予兆を捉えることはできない。設備を扱うオペレーターが設備の異常や点検結果の変化にいち早く気がつき、しっかりとデータを分析できるように教育することが何よりも重要である。さらにウエアラブル端末を活用して、ベテラン技術者のノウハウや感覚を伝承しやすい環境を整えたうえで、作業者の設備点検教育を実施することも検討すべきである。

今後、日本の保全人員は減少の一途をたどるのは間違いない。一方でIoTツールに抵抗を感じる技術者もまだいる。しかし、新しい技術を保全業務に取り込んでいかなければ、再び保全起因で設備稼動率が低下してしまうと危惧している。

新しい技術がスキルレスでの点検測定をもたらすとしても、予知保全(設備の劣化状況を把握し、保全の時期を予知すること)による「機能保証」「寿命保証」のための技術の高度化も重要になる。また保全の協業化が進み、各社で、もしくは各工場で保全部門を確保しなくても遠隔ですぐに対応してくれる「保全シルバー人材サービス」などの新しいビジネスモデルも必要になるかもしれない。

設備保全管理から設備ライフサイクル管理へ

ここまでは「IoTを活用した保全の効率化」について説明してきたが、現在稼動している設備だけを対象にした保全業務だけである。さらなる効率化や合理性をねらうのであれば、時間軸を広げて設備の開発設計段階から廃棄までの「設備のライフサイクル」を通じたメンテナンス管理も考えていく必要がある。
開発設計段階からIoTを活用したメンテナンス管理も検討し、ライフサイクル・コスティング(Life Cycle Costing:LCC)で設備ライフサイクル全体のコスト最小化を図る。それにより、ライフサイクル間を保証するための保全技能者の確保や技能育成が明確になる。同様にシャットダウンを外注する場合は、外注業者の事業承継・技能承継などを評価するなどのリスク管理も課題として見えてくるだろう。

今は高価で手が出ないユニットであっても、将来、価格が下がれば実装した方がよいものもある。ユニット価格の下落とユニット更新時期の意思決定モデルなど、設備のライフサイクル全体にわたって、あらかじめシナリオを考えておくことも重要である。想定したシナリオどおりに設備管理ができているかどうかは、これからの時代のキーポイントである。

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