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未来をどこに置くか。 課題を共通言語で議論できる価値

事例

2025.12.25

アネスト岩田株式会社

(左から)
エアエナジー生産管理グループ マネジャー 小宮山裕介さん
同グループ 関根茉美さん、佐藤琳香さん
福島工場 工場長 矢内洋幸さん

創業1926年(大正15年)、日本の塗装機器・空気圧縮機事業を90年以上リードし続け、現在は国内外に34社のグループ企業を有するアネスト岩田。スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(SMDG)の活用を開始し、工場のスマート化プロジェクトが加速している。ハブである福島工場の取り組みを伺った。

大企業から中小企業まで、スマート化プロジェクトのリーダー役を担う管理職と経営層の手引書に

部分的なDX導入は課題解決にならない

 多くの工場において、スマート化は喫緊の課題である。今年、操業開始から50年目を迎えるアネスト岩田の福島工場も、独自の施策を行ってきた。しかし、24時間フル稼働可能な自動化は進んだものの「全体最適」になっていないという課題に直面。加えて、新製品を市場に投入するスピードにも課題を感じていた。生産管理グループの小宮山さんは「これまで新しいシステムや生産設備を導入してきましたが、それが弊害となって中間工程の在庫が増えるなど、投資は個別最適にしかなっていませんでした。SMDGを知るまでは、『全体を見越した投資』という考えに及んでいなかったことに気づきました」と当時を振り返る。

 「この工場には3つの課と10の係があります。ところが横の連携が取れていない。たとえば加工課のスケジュールと次の工程である本体組立課の段取りが合っていないので、使いたいタイミングで部品がない、在庫ロスが生まれる、ということが起こっていました。しかし全体最適を目指すSMDGに照らし合わせて各部門を巻き込むと、課題のすり合わせが明確にできるようになったのです」(小宮山さん)

 さらに新製品開発のスピードに関してもマーケティングチームなどの他部署との連携が課題だったことに気づいた。

 プロジェクトを指揮した福島工場・工場長の矢内さんは「工場も50年目を迎えると、それぞれのやり方ができてしまっている。部分的に自動化も導入しましたが、全体を見るとそれぞれが何にどう関与すればいいのかわからない。部門間で情報がつながっておらず、SMDGでいう『変革課題の実現レベル』(図1)も部門ごとにバラツキがあることがわかりました」と話す。

福島工場の主力製品であるSLP-300EF(写真上)とTFP37CF-10。
同社では、コンプレッサー事業が売上の6割を占める

各部門の「レベル合わせ」で意識合わせが容易に

 福島工場では、小宮山さんの声かけで、関連部署のマネジャー・部長クラスの方々にSMDGを読んでもらった。そして、まずはJMACのコンサルタントも入り「マニュファクチャリング変革課題マップ」からそれぞれの課題を3つに絞り込んだ。この変革課題マップは、各製造事業者のスマート化実践事例において重点となった課題を抽出し、共通性の高いものを整理したものだ。エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、プロダクションチェーン、サービスチェーンの4つに分類し、57の変革課題から自社に必要なものを選ぶというもの。アネスト岩田では、経営課題に対して何を実践するか、達成するために各チェーンが何をするべきかを洗い出していった。

変革課題の実現レベル

変革課題のレベルを5段階に分け、定性的な課題認識を定量的にすることで、より明確に課題をとらえる

変革課題の実現レベル

 「非常に有用性を感じたのは、57の変革課題マップから課題を選ぶ際のレベル分けができていること。今までは感覚的にしか理解していなかったことが、明確に言語化されているので、自部署の状況も他部署の状況も意識合わせができました。また、ステップの進め方も明確になり、57項目で4つのチェーンの課題が網羅されているので『このチェーンにはこういう課題があるよね』と、他部署を巻き込みやすかったというメリットも感じました」(小宮山さん)

 矢内さんも「部署間のつながりがなかったわけではありませんが、SMDGの活用により課題変革のためのヌケやモレが明確になったことが大きかったです。行動計画がはっきりしたことで会話の内容に齟齬がないかもチェックでき、非常にバランスよく議論ができるようになりました」と手応えを語った。

 この課題整理を経て、福島工場、秋田工場は営業や本社の情報部門も巻き込んで実践のフレームに入る。
 「まだ、製造計画が属人化していたり、さまざまなデータが紙であったりと効率化やデータ活用もできていない状態だったので『Visualize DX Team(見える化)』『Quality Control Team(品質)』の2つのチームからなるDXプロジェクトを立ち上げました」(小宮山さん)
 佐藤さんと関根さんは、福島工場の製造工程のチェック項目をすべて整理する担当で、まさに「見える化」の要となっている。

 「実際に図に起こしてみると、理解している部分としていない部分が明確になりました。また、属人化していた計画表も考え方を統一して共有化、一本化したことで改善が進んできました」(佐藤さん)

 「たとえば部材の手配なども、個々の経験値に任せていたところがありましたが、それぞれのロジックを一律にしていくと注文と在庫のバランスや、対応すべきことが明確になりました」(関根さん)

 自前のスマート化にSMDGの考え方がプラスされ、2027年の「生産スケジュールの自動立案」リリースが最初のゴールだという。

 「必要な部材を必要なタイミングで手配するスケジュール機能を準備中です。そして、作業者の分単位の製造指示管理までを目指します。工場はサービスチェーンにもなる機能を備えていく。そういう未来をつくっていきたいですね」(小宮山さん)

  

※社名、役職名などは、取材時(2025年9月)のものです。

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