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日本製造業の「真の再生」を懸けて

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

「d」に込めた変革の意志と、負の遺産を生まないデータ経営の確立

今、日本の製造業は歴史的な転換点にある。人手不足、サプライチェーンの再編、そしてGX(グリーントランスフォーメーション)への対応。こうした幾多の困難を乗り越え、次なる成長を描くための鍵として「デジタル」を語らない日はない。

2026年年頭にあたり、長年現場の泥にまみれ、共に汗をかいてきたJMACだからこそ、今あえて皆様に共有したい「変革の覚悟」をお伝えしたい。

1. なぜ「d」は小文字なのか「dX」に込めた思い

DXの取り組みが一巡し、すでに多くの企業の皆様も、実感を伴いつつお気づきのことと承知しているが、デジタル技術がどれほど進化し、生成AIが日常のツールとなっても、それを受け入れる組織のあり方、現場のオペレーション、そして価値創出のプロセスそのものが「変革(X)」されなければ、真の成果を得ることはできない。
2025年4月、JMACは新たに「dXコンサルティング事業本部」を立ち上げた。「d」を小文字に留めるのは、お客様の組織の中に深く根ざした「伝統」と「変革する人の意志」こそが主役であり、デジタルはその可能性を解き放つための「触媒」に過ぎないと考えているからである。(※1)
なぜ「d」は小文字なのか。それは「デジタル(Digital)以前に、トランスフォーメーション(Transformation=変革)にとことんこだわる」という信念の表明である。

2. データ利活用の功罪:AIレディの裏側に潜む「負の負債」

データ管理費用に関する統計からも、ここ20年で企業のデジタル化施策は確実に拡大している事、そして今後も拡大の一途であることが見て取れる。
その一つとして既にあるいは今後、DXの取り組みとして多くの企業が取り組む施策として、「ビッグデータとAIエージェントによるデータドリブン経営の実現。」があげられる。これは意思決定の迅速化という大きな「功」をもたらし、すべての企業が目指すべきムーンショットと呼べるべきものかもしれない。現在、製造業の多くはDXの取り組みの一つとして、「AIレディ(AI-Ready)」な状態を目指し、データ基盤の構築を模索している。
一方で、冷徹な視点で見れば、進め方を間違えると深刻な「罪」を生むリスクを孕んでいる事は容易に想像ができる。それが、出口戦略のないまま無秩序に蓄積され続ける、不要なデータのゴミ(私たちは「デジタル上の新たな産業廃棄物」と称している)の発生である。
こうした事態に陥らないために、一つの統計を見ながら賢いdX(≠DX)の推進について改めて皆様との議論を深めさせていただきたい。

3. データ管理コストの劇的な膨張と将来予測

過去20年の推移:10倍以上に膨れ上がった管理負担

IT市場のリサーチデータによれば、企業が管理するデータ量は過去20年間で指数関数的に増加した。2005年頃、企業のデータ管理コスト(ストレージ、バックアップ、セキュリティ、管理人件費の合算)は、IT予算の約10〜15%程度。 しかし、2020年代に入ると、クラウドシフトとIoTの普及により状況は一変した。2025年時点でのデータ管理コストは、2005年比で実質12倍以上に膨れ上がっていると推計される。

将来予測:2030年、IT予算の半分が「データの維持」に消える

現在のペースで無秩序なデータ蓄積が続けば、2030年にはデータ管理コストが現在のさらに2〜3倍に達するという予測がある。 Badシナリオでは、「IT予算の50%以上が、ただデータを維持・保管するためだけに費やされる」という事態が起こり得る。これは、新しい価値を生むための「攻めの投資」が、活用されないデータの維持という「守りのコスト」によって食いつぶされることを意味する。
「いつか何かに使えるはずだ」という安易な蓄積は、今この瞬間も、将来の投資余力を奪い続けていると言える。

4. 新たな産業廃棄物化を阻止する「選別」の経営学

維持コストの増大に加え、活用されないデータはカーボンニュートラル経営における「環境負債」にもなり得る。データセンターの電力消費は莫大であり、価値を生まないデータの保管は、企業のESG評価を毀損するリスクさえ孕んでいる。
これは決して他社ごとではなく、重軽あれど今後すべての企業が直面する課題である。これからの製造業に必要なのは、闇雲に集める「収集の技術」ではなく、「価値を見極め、捨てる力」ではないかと、われわれは考える。
例えば

  • 「死蔵データ」の特定: 1年以上アクセスがなく、かつ将来のAI学習にも寄与しないデータを定義し、計画的に破棄する
  • ライフサイクル管理の徹底: データの発生から廃棄までのルールを明確にし、ストレージを常に「筋肉質な状態」に保つ

そして何よりも

  • 目的逆算型の収集:「何を変革(X)したいか」から逆算し、必要なデータだけを高精度に取得する 等

こうした取り組みが、「負の遺産」を生み出さないためのdX戦略の一つの側面であると我々は考える。

5. 変革期における企業の心構え

このような取り組みを実践していく第一歩としてまずは3つの心構えを提唱したい。

  1. 「d」よりも「X」を語ること:会議の席で「どのツールを導入するか」という会話が出たら、それを「それによって誰のどの業務がどう変わるのか」という問いに置き換える
  2. データに「鮮度」を求めること:過去の膨大なゴミよりも、今この瞬間の現場の事実を捉える「活きたデータ」に投資する
  3. 失敗を許容し、学習を加速すること:デジタルの世界に100%の正解はない。プロトタイプを素早く回し、データから「何がダメだったか」を学ぶ文化を醸成する

6. 私たちの役割 JMACのアイデンティティ

私たちは、単なるITベンダーでも、綺麗なレポートを書くだけのコンサルタントでもない。
お客様の組織の中で化学反応を引き起こし、結果が出るまで現場と共に走る「変革の実行者」であることだと自負している。

経営と現場をつなげるマネジメントエクセレンスの構築:単独組織ではなく事業全体を通してのボトルネックを解消する。現場と経営が一貫化されたデータで連動する。
「現場起点」のトランスフォーメーション: 技術ありきではなく、職人技や現場の知恵をどうデジタルで増幅させるか、という視点を貫く。

「産業廃棄物」を出さないデータ基盤構築: 将来的なコスト負債を最小化し、AIが真に機能するための、高純度なデータ循環構造を設計する。
自走するための組織醸成: コンサルタントがいなくなった後も、お客様自身の力でデジタルを使いこなし、改善を回し続けられるよう、組織能力(ケイパビリティ)の強化に尽力する。

結びに代えて(筆者コンサルタント毛利より)

日本のものづくりには、世界を席巻した「カイゼン」のDNAがあります。そのDNAの本質は、無駄を削ぎ落とし、価値を最大化するストイックなまでの姿勢にありました。 その精神を今こそ、デジタルという新しい領域でも発揮すべき時であると考えます。

不要なデータを削ぎ落とし、真に価値ある変革(X)を導き出す。 そのプロセスは決して楽なものではありませんが、やり遂げた先には、世界に誇れる「デジタル武装した日本型製造業」の再興が待っていると疑いません。

「d」を手段とし、大きな「X」を共に創り上げる。 2026年、皆様にとって真の変革が実を結び、持続可能な未来へと踏み出す素晴らしい一年となりますよう、私たちdXコンサルティング事業本部は全力で邁進してまいります。

  

(※1)こうした信念に基づき、MEDI、NEDOからの委託を受けて弊社がその執筆を担当した、スマートマニュファクチャリング構築ガイドラインは、dX推進のためのバイブルとして多くの製造業の皆様にお届けしたものでございます。NEDOホームページからどなたでもダウンロードが可能です。

毛利 大

dXコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

生産戦略と呼応した生産システム再構築を領域とし、新工場建設、生産プロセス再設計領域で活躍。TP(Total Productivity)マネジメント手法や、IPS(理想目標コスト)手法によりものづくりの収益性向上を支援。JMACスマートファクトリー研究会でIoTをコアコンセプトとした今後のものづくりのあり方を研究。

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