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DX教育の次へ !「変化対応力」を磨く人材戦略とは

コラム

2025.12.02

現在、R&D部門には「社会価値の創造」が強く求められています。その実現には、人と組織の変革が不可欠です。また、これまでにない価値を生み出すためには、「社員の新たな能力」を引き出す戦略的リスキリングが鍵となります。

しかし、多くの企業ではリスキリングは単なるDX教育と捉えられ、業務効率化や売上向上といった短期的な視点にとどまり、社会価値創造という挑戦的な目的が共有に至らないケースが多く、結果、組織の可能性を狭めてしまっています。

本稿では、「R&Dの力を最大限に引き出すリスキリング」をテーマに、その本質的な設計と実行に必要な考え方を解説します。この取り組みは、昨今、注目されているHRBP(戦略人事)の活躍の舞台としても、大きな可能性を秘めています。

R&Dの限界を超えるリスキリングとは

現代のR&Dには、単なる技術開発や売上拡大を超えた「社会課題の解決を通じた価値創出」が求められています。しかし、多くの企業では技術ロードマップに注力する一方、それを実現する人材・組織能力の開発は後回しにされがちです。その結果、新規テーマの推進が遅れ、構想倒れに終わるケースも少なくありません。

ここで必要となるのが、「経営課題と直結した能力開発=リスキリング」です。これは、単なるスキルアップや個人の学習意欲とは異なり、新たな戦略課題を遂行する能力を組織的に育成・配置するサイクルを意味します。

たとえば、単に実験計画の知識習得や腕前向上に留まるのではなく、AIやロボティクスを導入して業務を効率化し、その浮いたリソースで技術情報発信といった新たな役割を担えるようにすること。さらに、この取り組みでは、既存職務の延長線上にない能力獲得を、事前に計画的に行うことが重要となります。

DXやGXなど、企業が未保有のスキルを必要とする場面では、熾烈な採用競争になる外部人材獲得だけに頼るのではなく、内部人材の再開発への投資をすることが持続的成長の鍵となります。

現場を動かすリスキリング設計 ~3つの壁と突破策

R&Dは専門性が高く、不確実性の高い領域に挑戦するため、そもそもリスキリング導入に対して慎重な姿勢を取る傾向があります。そのため、推進側が想定する以上に導入には丁寧な設計と対話が不可欠です。

とくに、以下の3つの壁に注意が必要です。

① 納得感の不足

「なぜ今リスキリングが必要なのか」が明確に伝わらなければ、社員の主体性は引き出せません。「抽象的なDXの必要性」ではなく、経営課題や新規事業との具体的接点を示す必要があります。納得感を醸成するには、上位戦略と現場の橋渡し、双方向の対話の場づくりが重要です。R&D組織は、ひとたび腹落ちすれば抜群の集中力を発揮できる特長を持っているため、丁寧な対話こそがこの壁を破る鍵となります。

② 時間とリソースの制約

「忙しくて学ぶ時間がない」という点はどの企業でも共通の課題です。「効率化した後に・・」「余裕のある時に‥」ではなく、リスキリングを“業務の一部”として捉え、経営側が時間・コストを戦略的に、つまり先行的に、計画的に、確保する必要があります。特にものづくりや実験の現場などでは、一時的な余剰人員を投入してリスキリングのための時間確保を検討すべきです。できない理由をぶつけあうのではなく、経営から覚悟と本気を示すことが肝要です。

③ 心理的な不安

リスキリングをリストラと混同したり、専門性の喪失への不安を持ったりする社員もいます。とくにベテラン層では「今さら新しいことを覚えるのは難しい」という声もあります。これに対しては、上位者の対話・理解・環境整備による心理的安全性の確保が不可欠です。人手不足問題の解消に即効性の観点からみても、元来、自社への忠誠心が高く、ノウハウ豊富なベテランへの動機付けは、新人育成と同等に重視すべきです。
以上のような事柄への対処は、結果として、組織エンゲージメントや、上位戦略に対する信頼感を大いに高めることにつながります。部下一人ひとりのキャリアを考えること、近い将来どんな布陣が必要になるかを考えることは、管理職の必要な能力・スキルとして益々重視されるでしょう。

戦略を動かす組織へ「変化対応力」としてのリスキリング

戦略を実行に移す段階では、明確な設計・実行計画と継続的なフォローが成功のカギを握ります。特に、「振り返りを重ねること」が、上位戦略の実装・準備の迅速性や柔軟性を高める肝となります。

推進体制とロードマップの明確化

短期・中長期のマイルストンを見える化し、社内に今後の展開計画を示すこと、また、コミュニケーション力の高い推進者を設定することは、初期の混乱を回避しやすくなります。ロードマップ策定時に、予め振り返り時期を明記しておくことが運営の鍵です。

必要能力の定義と学習優先順位の明確化

既存の育成体系や研修の転用ではなく、どんな社会価値創造を担いたいか、これからのR&Dに必要な人材像とスキルセットを定義しましょう。取り組みの狙いを明確にしなければ、振り返りをする動機は生まれません。意図どおりの進展になっているのか、外部環境のギャップはないか、など外部専門家の知見を活用するのも効果的です。

実務での即時活用と評価制度の連動

スキル習得後は、速やかに実務へ活かす機会を意図的に用意することが肝です。配置転換の仕組みや、貢献を評価する制度設計も、社員のモチベーション維持に直結します。何よりリスキリングの成果は、新たな業務について新たな価値を生むことですので、その点から振り返りと評価をしましょう。

継続的なレビューと改善

リスキリングは一度きりでは終わりません。初年度・2年目・・の進捗と課題を検証し、戦略と連動させて柔軟に更新する運用が必要です。

リスキリングは成長戦略そのもの「R&Dが変われば、企業が変わる」

リスキリングは単なる教育施策ではなく、戦略実現のための“組織能力の構築”です。人材不足が常態化する中、外部依存では限界があり、内部人材の可能性にこそ活路があります。R&Dにおけるリスキリングは、単に技術力を高めるのではなく、「社会価値を創出する組織」へと変革する起点です。

 現場、マネジメント、人事、経営が連携し、未来に備えた人材・組織戦略を共創することが、競争力の源泉となるでしょう。今こそ、R&Dの力を最大限に発揮できる組織づくりを、一歩踏み出してみませんか。

庄司 実穂

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

入社以来一貫して、組織能力革新を通して経営課題解決を支援している。
目に見える成果創出支援だけではなく、メンバーやリーダーの力を最大発揮できる環境づくり、職位や組織を超えた信頼関係づくりなど、一人ひとりの潜在的能力を引き出すマネジメントの実現を目指している。

主なコンサルティングテーマ
・組織成長戦略の策定
・社会インパクトに挑戦するマネジャー養成
・社会課題・顧客価値を実現する組織づくり/企画提案力強化
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