1. トップ
  2. コラム
  3. なぜ設計DXは失敗するのか?「目的」を失った企業が陥る罠

なぜ設計DXは失敗するのか?「目的」を失った企業が陥る罠

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

本年の幕開けにあたり、これからの産業界、とりわけ製造業における「開発・設計」という領域が直面するであろう潮流と、私たちJMACが考える「競争優位」の本質について、皆様と共に考えていきたいと思います。

はじめに:エンジニアリングチェーンへの視点移動

昨今のデジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流を振り返りますと、製造現場を中心とした「ものづくり」のデジタル化は、一定の進展を見せたと捉えることができます。特に先進的な取り組みを進めてこられた企業においては、製造領域での第一巡目の取り組みは一段落し、次なる競争力獲得のフェーズへとシフトしているのが現状ではないでしょうか。

こうした背景の中、次なる主戦場としてエンジニアリングチェーン、すなわち開発、設計、生産技術開発、そして量産立上げといった生産関連プロセスへのDXに関心が集まっています。しかし、私たちはここで一度立ち止まり、皆様へ問いかけたいのです。「製造現場の次は設計だ」という単純なテーマの拡張だけで、真の競争力は生まれるかということです。

直面する課題:部分最適の罠と「正しくない」アプローチ

多くの企業が直面するであろう課題の一つに、アプローチの間違いがあります。製造現場でのDXを「投資」として捉え、システム導入を果たした企業が、その成功体験をそのまま前工程であるエンジニアリングチェーンやサプライチェーンへ展開しようとする動きがあります。これは典型的なステップに見えますが、必ずしも正しいアプローチにならないことが多いと、私たちは危惧しています。

なぜなら、職場ごとの機能が明確に分けられた組織構造の中で、それぞれの部門が個別に「最適」を目指してシステムを導入しても、それが「ものづくり全体」としての競争優位につながらないケースが散見されるからです。開発・設計部門が効率化されたとしても、それが後工程の製造現場や、最終的な顧客価値にどう結びついているのか。日本企業において、この全体戦略を明確に打ち出しながらDXを推進できている例は、稀であると言わざるを得ません。

さらに足元を見つめ直すと、より根源的な課題も浮き彫りになります。全社的なものづくりDXを展開するためには、開発・設計段階でのデータの整備が不可欠です。しかし、多くの企業ではシステム導入が先行し、その前提となる「製品情報の整理」や「品目・品番の整理」といった、地道かつ本質的な構造改革に手が回っていないのが実情ではないでしょうか。データの活用というもとで、実は活用すべきデータそのものが整っていない――この現実に向き合うことから、本当の変革は始まると考えられます。

JMACの視点:システムではなく「競争優位」を設計する

では、これからの開発・設計DXにおいて、私たちは何を指針とすべきなのでしょうか。 JMACが考えるもっとも重要なポイントは、ITシステムの導入を拙速に目指すのではなく、「自社にとっての競争優位ポイントは何なのか」、「そのために何を変革するのか」を明確に描くことです。
例えば、市場における卓越性の追求です。個別仕様に対して設計~納入リードタイムを圧倒的に短縮することで市場を制するのか、あるいは自主企画製品において市場要求に即座に応えるスピードを手にするのか。または、「製品・生産構造の変革(モジュラーデザインなど)」によって複雑な仕様に短納期で応える体制を築くのか。これらは単なる業務効率化ではなく、企業の勝ち筋そのものです。

また、先行した製造現場のDX資産であるデータを、開発・設計へ還流させる視点も重要です。設計段階で「最適」だと判断された仕様が、実際の市場や製造現場で本当に最適解として機能しているのか。意外なことに、この「設計」と「実績」の突き合わせができていない企業は多いものです。製造現場からのフィードバックをデータとして受け取り、製品品目や設計仕様をチューニングしていく。このPDCAサイクルの中にこそ、組織を越えた真の強みが宿ると私たちは考えます。

結びにかえて:手段と目的の順序を問う

システムを導入することで頭がいっぱいになり、手段が目的化してしまう――これはDXにおいて最も陥りやすい罠です。重要なのは、あくまで自社で設定した競争優位ポイントを実現するためにシステムを活用するという「順序」です。 「どのようなシステムを入れるか」を問う前に、「自社はどこで勝負するのか」という戦略的な問いに、明確な答えをお持ちでしょうか。
開発・設計におけるDXは、単なるツールの導入ではなく、上流の技術開発や製品ラインナップの改廃までをも視野に入れた、経営そのものの変革です。 走りながらでも構いません。皆様の会社にとって「最適な競争優位」とは何か。本年は、その課題設定という原点に立ち返り、システムの実装よりも前に、まずはその「勝ち筋」のシナリオを描いてみませんか。

正解のない時代だからこそ、悩み、考え、新たな価値を創造していく一年となることを願っております。

柏木 茂吉

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

入社以来一貫して技術部門に対する支援を継続している。コンサルティングテーマは製造業の業務再構築・システム導入、開発・設計プロセス改革、設計品質向上など。
支援企業は、自動車製造、Tier1自動車部品、精密機械、化学メーカーなど日本を代表するエクセレントカンパニーに対する支援を多数有している。

まずはお気軽にご相談ください。

自立・自走できる組織へ

信頼と実績のJMACが、貴社の現状と課題をヒアリングし、解決策をご提案します。

関連するコンサルティング・サービス

Consulting Service

関連する事例

Case

コラムトップへ