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AI活用と、人と組織の変革で新事業開発を実現しよう ~AI活用だけでは事業化は進まない~

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

企業の様々な場面でAIの活用が加速している。経営の重要課題の一つである新事業開発においてもその活用が始まってきた。ではAI活用により新事業開発プロセスはどのように変わっていくのだろうか? AI活用により新規事業テーマを事業化につなげていくポイントはどのように変わっていくだろうか?

新事業開発へのAI活用が始まった

事業環境の変化が激しい中、どの企業でも新たな事業の柱になる期待を込めて新事業開発に熱心に取り組まれている。そのアプローチはM&AやCVC、オープンイノベーション、アクセラレータプログラム導入、社内アイデア公募など、特に大手企業では様々な角度から複数の取り組みが実施されている。

しかし、経営層の期待通りに進んでいる企業は多くない。新事業なので当然成功確率は下がるし、それなりの規模になるまで時間もかかるのは当然ではあるが、経営層は気が短い方が多いので、「いつ成果が出るんだ!」ということになっている。
JMAグループでは各社幹部の方々と議論しているが、そこでは以下のようなさまざまな原因が挙げられている。

  1. 研究開発部門と事業部門や、新事業開発部門と事業部門の壁
  2. ボトムアップ型だと小粒なままで終わってしまい、大きな事業に育たない
  3. 新事業が重要だと言いながら、いざとなると既存事業へのリソース優先
  4. 顧客価値や事業モデルの練り上げが進まず、次のステージへ進められない
  5. 仕組みは様々工夫されているが、実態が伴っていないため活用しきれない
  6. 新事業を推進する人材の不足や、チームを牽引する人材の不足

これらの問題は今に始まったことではなく昔からある問題であるが、まだまだ解決されていない企業が多く見られるのが実情である。

しかし最近、この局面を打破する新たな武器として期待されているのがAI活用であり、先進的な企業ではその活用が始まっている。

AIは新事業開発どう変えるか?

AI活用はご存じの通り、これまでは効率化の側面でまず効果を出してきた。しかし生成AIの進化により、戦略立案支援や新事業立案支援のような“価値を高める”側面での活用が始まっている。

社内からの新事業開発のプロセスにおいては、特に新事業テーマ(アイデア)立案の場面で活用が有効である。これまでのよくあるアプローチでは、

① 社会や市場のトレンド把握
② 自社の強みの棚卸しと評価
③ ①と②を組み合わせて、新たな事業機会の探索
④ ③における新事業アイデアの立案

という検討が初期段階で行われ、ここにかなりの労力と時間が割かれていた。検討体制にもよるが、ここに数か月の期間をかけていることもあった。生成AIはこのプロセスを大幅に改善することが可能である。上記の①や②の必要な情報を読み込ませれば、あっという間に③④を実行してくれる。今までは担当者の限られた時間と経験と処理能力で行われてきたものが、より幅広く、圧倒的に短時間で実施できる。これは非常に有効なことなので活用しない手はない。

しかし、そこから導かれた新事業テーマ(アイデア)がそのまま事業化に繋がるかというと、そういうテーマもゼロではないが、まだまだそこまでいっていないのも実状である。しかし可能性のあるアイデアの候補をたくさん、短時間で出すことが可能なことは間違いないので、これからも新事業開発におけるAI活用は広がっていくだろう。

合わせてPoCプロセスの改革を

このように新事業開発にAIを活用することは間違いなく有効であるのでぜひ活用していくべきである。一方で、企業でなぜ新事業開発で思ったような成果を出せていないかを思い出して欲しい。その問題の多くは、新事業テーマ(アイデア)立案プロセスではないのである。もちろん抜群に筋の良いアイデアならば前述のような問題は跳ね返してくれるのかもしれないが、企業の内部実態がわかっている人ならそれは難しいこともわかるだろう。

AIを前半で積極的に活用しながらも、まず解決すべきはアイデアの練り上げプロセスである。ここで顧客にとって本当に価値のあるテーマに練り上げられるかが重要なことはみんなわかっている。そこで、多くの企業ではPoC(Proof of Concept:概念実証)に積極的に取り組んでいる。しかしPoCに取り組む以前のアイデアの練り上げや、PoCの結果を踏まえた顧客ニーズの深堀りや再構築などがうまくできない中で何度もPoCを繰り返し、PoC疲れになっている場面もよく見かける。

このPoCプロセスを変えていくには、顧客との対話力を高めることと、意思決定を先延ばしにしない工夫が必要である。本当の顧客ニーズ(困りごと)はインターネット上には出てこないので、AI活用でそこまで解決するのはまだ困難である。まだまだ人の側面と組織の側面を高めていかなければならない。

新事業テーマを事業化まで展開するには前述のような様々な問題があり、アイデア練り上げやPoCのプロセスの改革だけで事業化ができる訳ではない。しかし、まず顧客にとって価値があるテーマにならなければその先のプロセスはない。

まとめ

新事業開発において、AI活用はテーマ(アイデア)立案プロセスにたいへん有効であり、積極的に活用していくべきである。経験が少ない人や少ないリソースかつ短期間で、多くの可能性のあるアイデアを出すことにおいては革新的である。しかし、新事業が思ったように成果が出ない原因の多くはその後工程である。

とくに、PoCプロセスの改革は重要である。人の側面や組織の側面からの改革を合わせて行っていかなければ事業化にはたどり着けない。継続的に新事業を創出し、事業のポートフォリオをタイムリーに変革していく為には人と組織を強くしていくことが欠かせない。AIだけに頼らず、ぜひその点も合わせて取り組んで頂きたい。

鬼束 智昭

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

製品革新を軸に、商品戦略立案、製品コストダウン、開発力強化、新事業化展開の支援を中心に行っている。最近は新商品・新技術を継続的に創出できる組織作りや人材育成にも注力して支援を行っている。得意分野は商品戦略立案、新事業企画、開発プロセス革新など。著書に『独創重視のプロダクト革新』(2004年日本能率協会マネジメントセンター 共著)、『技術系のMBA「MOT経営」入門』(2004年PHPビジネス選書 共著)、『研究開発のGo/Stop判断』(2011年技術情報協会 共著)など多数。

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