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サプライヤー戦略再構築のすすめ

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

生産活動に欠かせない部材調達に対するリスクや要求事項が多様化している。

こうした変化に対応したサプライヤー戦略が描けているだろうか?

サプライヤー戦略のあり方の見直しを提起していきたい。

調達リスク・要求の変化1:
種類も頻度も増えている供給リスク

調達における供給の安定性確保の必要性が高まっている。これまで自由貿易協定の拡大を含めグローバルビジネスの拡大やその促進を図るための仕組み整備が進む一方で、政治的な理由から原材料の禁輸措置が取られることや、コロナ禍(COVID-19)のような疫病のグローバルパンデミック、2022年からのロシアのウクライナ侵攻といった動向を経験して、経済安全保障という考え方が言われるようになってきた。

この他にも、天候不順・異常気象、市況・為替変動、市場逼迫、技術・情報漏洩等の問題も頻発するようになり、リスクの範囲も広がり、頻度も増えている。これらの影響により、生産停止や生産量抑制など生産活動に大きく影響を及ぼすケースも出ている。

従来から、安定供給の確保は調達の重要要件ではあったが、その脅威が増している状況である。供給リスク対策の基本は調達ルートの分散化であるが、市場逼迫のようなリスクでは分散化よりも、サプライヤーとの関係性強化が重要となる。

調達リスク・要求の変化2:
高まるサプライチェーンにおける社会的責任への要求

サプライチェーンにおける人権保護や環境負荷低減といった社会的責任への要求も高まっている。

とくに、環境面では、EUで世界初の国際貿易にかかるカーボンプライシング(炭素価格=CO2排出量に応じた費用)制度となる炭素国境調整メカニズム(CBAM=Carbon Border Adjustment Mechanism、シーバム)規則が、特定業種を対象に2026年から本格適用となる。

日本でもプライム市場上場企業を対象に財務諸表の補完として、気候変動・人的資本・多様性・ガバナンス・リスク管理など、企業の財務に影響を与えるサステナビリティ情報の開示が2027年から求められるようになり、2026年のデータから必要になる。

サプライチェーン全体の排出量の見える化や削減に向けた取組みが、とくに大手企業を中心に進んできている。これまでは、排出量算出や目標設定に重点があったが、これからは具体的な削減への取組みが求められ、調達においてはサプライヤーとの連携した取組みが重要になってくる。

調達リスク・要求の変化3:
中小受託取引適正化法(取適法)の施行

下請法(正式名称: 下請代金支払遅延等防止法)が改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称: 中小受託取引適正化法、通称: 取適法=とりてきほう)」として、2026年1月から施行となる。

この改正の目的は、近年の物価高騰環境の下で中小企業の価格転嫁を支援し、サプライチェーン全体での適正な取引環境を整備すること、さらには、事業者間の対等な関係を強化し、力関係による不公正な取引慣行を是正することである。

調達としては、物価上昇基調の市場環境において、取適法を遵守しつつ、調達品の価格競争力を確保していくには、コストの量的側面に焦点を当て、従来にも増してサプライヤーとのコミュニケーションを強化し、協働して改善に取り組んでいくことの重要性が増すことになる。

これからのサプライチェーンに求められること

調達を取巻く環境の2026年から変化があるポイントを振り返ったが、近年の調達環境の変化を踏まえたときに、これからのサプライチェーンに求められるものを要約すれば、以下である。

これからのサプライチェーンに求められること

  • 社会的責任を果たすことができ、 
  • QCD競争力が高く、
  • 不確実性が高まる中でも強靭な安定供給性

これまでも各企業では、競争購買の促進やサプライヤー再編のために、新規サプライヤー探索をしたり、サプライヤー集約を図ったりしてはいる。これに加えて、サプライヤーとの関係性強化と協働改善・協業の推進がより重要な取組みとなってくる。

サプライヤー戦略再構築のすすめ

従来、サプライヤー戦略は主にQCD強化の観点で策定されてきた。現在は、供給リスクについても一定の考慮はされているが、各種調査をみると対策が十分できていると考えている企業は少数派のようである。さらに、社会的責任の要素についてはQCDとは別建て検討であり、サプライヤー戦略に反映されていない企業が多い。本稿の前段で、これからはサプライヤーとの関係性強化が重要な取り組みになると述べたが、サプライヤー依存の関係となってしまっては結局、競争力強化にはつながらない。協業と競争のバランスを取ることが重要になる。

サプライヤー戦略策定の際には、サプライチェーンの現状の状態を見える化して認識できるようにし、目指す状態に近づけるためにどのような施策を取るのかを検討していくことが重要であり、そのような進め方をするための基準整備も必要である。

JMACでは、このような調達環境の変化に対応したサプライヤー戦略の策定や、その基となるサプライヤー評価の仕組み再構築のメソッドを整理している。2026年もこのメソッドを活用して、皆様の調達競争力と供給の安定性の両立をご支援していく所存である。

加賀美 行彦

生産革新コンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

開発・調達・生産管理・生産・生技/工務の領域において、直接材・設備・間接材のトータルコストリダクションやコストマネジメントの仕組み構築、また機能強化に向けた技術力向上、人材育成などの中長期的な体質強化に関するコンサルティングに従事。米国、欧州各国、ロシア、トルコ、中国、韓国、タイ、シンガポールなど、海外での経験も豊富。2007年度に立ち上がったJMA主催の購買・調達資格(CPP)の企画委員として参画。

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