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業務改革を同時実現する『基幹システム再構築』推進

第4回 基幹システム再構築の成功には業務改革が不可欠

  • 業務改革・システム化

福井紘彦

前回までは、基幹システム再構築プロジェクトを成功に導く為の目的設定、体制構築の重要性を述べてきた。
今回は、同じくプロジェクト成功の要件の一つである業務改革の必要性について述べる。

基幹システム再構築の成功に業務改革あり

皆さんは、「基幹システム再構築プロジェクトの成功」と聞いて何をイメージするだろうか。新たなシステムの開発が完了し、大きな混乱なく実運用が開始(カットオーバー)することをイメージされる方も多いだろう。しかし、果たして基幹システム再構築はそれで成功と言えるだろうか。

コラム「第3回 プロジェクト結果の満足度と失敗要因」で述べた通り、「現行の業務手順・流れをそのまま踏襲したシステムの単なる置き換え」は、一般的にも基幹システム再構築の失敗としてとらえられている。基幹システム再構築は、業務改革とセットで考えることがポイントなのである。

その理由として大きく以下の2点が挙げられる。

  1. 事業競争力強化につながらない(経営課題の解決にならない)
  2. システム調達コストが増加する

以下の例で考えてみよう。
基幹システム再構築にあたり、

  • ほとんど使われない社内報告資料の出力や、目的もわからず前例踏襲的に処理を行っている業務のシステム化を図るA社
  • 自社の顧客提供価値の増加を目指し、各業務の目的を再設定し、より高品質かつ高スピードで業務遂行できるよう設計した上でシステム化を図るB社

この場合、B社の方が、より事業競争力強化につながり、基幹システム再構築に成功したと言えるのではないだろうか。
経済産業省が2024年9月に改訂した「デジタルガバナンス・コード3.0※」においても、「デジタルの力を、効率化・省力化を目指したITによる既存ビジネスの改善にとどまらず、新たな収益につながる既存ビジネスの付加価値向上や新規デジタルビジネスの創出に振り向けること」が重要と改めて指摘しており、業務改革と基幹システム等のIT技術をセットで考えることが、企業のDX推進上もキーになる。

先ほどのA社のケースで考えると、「社内報告資料」や「前例踏襲的業務」は、その会社固有の業務・固有の処理方法である場合が多い。それらをシステムに実装する場合、パッケージのカスタマイズが必要となり、システム調達費用が増加する可能性が考えられる。

現に、JMACへの基幹システム再構築支援のご相談の背景として、「現在の基幹システム導入時は部門業務の見直しや標準化をしなかったため、カスタマイズが増え、オーバースペックとなってしまった。今回は業務見直し・標準化も含め検討したい。」といった内容も増加傾向にある。

※引用:
経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DXによる企業価値向上に向けて~」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc3.0.pdf

着目すべき2つのレベル

JMACが基幹システム再構築プロジェクトを支援する上では、以下の図に示す2つのレベルを適正化させることを基本方針としている。

縦軸は、業務の標準化状態・管理水準をレベル分けした「業務成熟度レベル」、
横軸は、導入・活用している情報システムの水準をレベル分けした「情報システム装備レベル」である。

例えば、赤枠(縦レベル2、横レベル1)の状態にある業務を見直しせず、システム化したことを想定してみよう。
見てお分かりの通り、どんなに情報システム装備レベルを上げたとしても、

  • システム外での対応が必要な例外処理が多く残存してしまう(所謂「運用でカバー」)
  • 実績データの精度や管理指標の信頼性が高まらない

といった状態に陥ってしまう。
この様に、情報システムの再構築だけでは、システム活用範囲が限定的となってしまい、思うような成果につながらないのである。

基幹システム再構築は業務を抜本的に見直す最適なタイミングである。業務改革の位置付けで基幹システム再構築プロジェクトを推進し、業務改革と基幹システム再構築を同時実現することが基幹システム再構築の成功には不可欠である。

次回は、基幹システム再構築方式のトレンドに関して発信する。

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