業務改革を同時実現する『基幹システム再構築』推進
第10回 プロジェクト推進時のよくある課題「Phase4 要件定義」
- 業務改革・システム化
新藤 直人
前回(第9回)のコラムでは、基幹システム再構築プロジェクトの『Phase3 システム選定』推進時のよくある課題を紹介した。今回は、『Phase4 要件定義』推進時のよくある課題を紹介する。特に、『Step5-1 Fit&Gap分析、要件定義』の工程に焦点を当てる。
『Phase4 要件定義』における『Step5-1 Fit&Gap分析、要件定義』とは、選定・契約したシステムベンダーとともに、新システムの標準機能と自社の業務との適合性を判別し、アドオン開発(追加機能開発)の必要性を判断するStepである。
このPhaseでは、システムの標準機能と自社の業務要件・機能要求事項とを比較して、どの標準機能が適合(=Fit)するのか、見極めを行うことが求められる。また、標準機能が適合しない(=Gapとなる)機能要求に対して、アドオン開発の要否を判断し、開発対象の機能要件を定義することが必要となる。アドオン開発しない場合は、別のITツールの併用や人手による運用等で対応することを決める必要がある。これにより、新システムの使い方が決定し、新しい業務の流れが確定する。
推進上の課題①:標準機能の適合性の見極めができない
システムベンダーからシステムの標準機能・画面の説明を受けるものの、自社の業務との適合性を見極められないことが、少なからず発生する。選定されたシステムベンダーは、自社の事業特性や目指すプロセス、業務改革課題に対する理解は一定程度あるものの、自社の目指す業務プロセスの隅々まで理解しているわけではない。よって、標準機能の適合性の見極めを行うために、自社として次のような対策を講じることが必要となる。
まず、自社の目指す業務プロセスを理解してもらうための説明会・質問会の機会を、プロジェクト立ち上げの段階で再度設けることを推奨する。対面形式で、ベンダー側の担当エンジニアが、業務内容を理解・質問をすることができる場を設けることで、導入製品を自社の業務に合わせて使うとどうなるか、ベンダー側の導入イメージ具体化につながり、自社とベンダーとで足並みを揃えることができる。
次に、システムベンダーに対しては、導入製品の機能・画面紹介の際に、自社の目指す業務に合わせた使い方と、適合しない部分の運用回避策とを併せて提案するように要求することを推奨する。これにより、導入製品に合わせた自社の目指す業務プロセスの調整余地が明確化され、標準機能の適合性の見極めが行いやすくなる。
推進上の課題②:Gapに対するアドオン開発箇所が肥大化する
標準機能の適合性見極めの結果、適合しないGap箇所に対してアドオン開発の方針が採択され、導入期間が長期化し、導入費用も肥大化してしまうという課題である。また、開発範囲が増えることで、法令変更などの外部環境変化変更等に伴う運用・改修コストも肥大化してしまう。そのような状態にならないために、Fit性の高い製品を選定すべきことは言わずもがなであるが、Gap箇所に対する対応方針を事前に定めておくことが重要である。
また、追加開発要否を判定するための基準や開発承認ゲートを設定することも、開発箇所の肥大化防止には有効となる。自社の事業特性・事業環境から、自社の競争力の源泉となる箇所にのみ、追加開発を行う方針を明文化することで、追加開発のハードルを上げ、「システム標準に合わせた」業務の見直しにつなげることができる。
p style="text-align: center;">次回は、『Phase5 開発』におけるプロジェクト推進時のよくある課題についての発信を予定している。
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