第2回 「あいさつ」ができる職場、できない職場~職場の相互理解と尊重の第一歩をどう踏み出すか~
人事制度・組織活性化

年々深刻化する人員不足。企業の従業員意識調査でも、「職場の人員数は過不足なく適正か」という設問に対し「Yes」が低下し「No」が増加しています。しかし、「人員不足感」が増加している背景には、時間管理や時間生産性に関して部門・職場別に認識の偏りがあったり、階層別で認識のギャップがあったりするのがほとんどです。
A社では組織マネジメントの一環として、毎年従業員意識調査を行なっています。今年の調査では、もともと良くなかった「職場の人員数は過不足なく適正か」の問いに対する答えがさらに悪化しました。意識調査を行う前に改革プロジェクトの事務局メンバーが言った「ウチは時間生産性を高める働き方改革に取り組んでいますが、あまりうまくいっていないのです」という答えが数値に現れてしまったようです。
「残業時間管理が厳しい」「一部の人に負担がかかっている」「仕事が残っているのに帰れない」など、働き方改革の一環である‟残業時間管理"に対し、現場では否定的な声が上がっているようです。A社の今年の意識調査結でも、以下のような結果が出ました。
図1 『働き方改革』に関わる設問のYes率結果
「職場では時間管理・残業時間を意識している」という問いに対して、Yes回答率は前回より高くなっているものの、「職場では時間生産性が向上している」のYes回答率は前回から変化がなく低いままです。つまり現場での働き方改革は、残業時間(勤務時間)管理だけになっていて、仕事の仕方自体はこれまでと変わっておらず、生産性向上にはつながっていないといえるでしょう。
つぎに部門別に見てみましょう。
・「職場では時間管理・残業時間を意識している」という設問に対して、管理部門・生産部門ではYes回答率が高いものの、営業部門・研究部門では低い
・「職場では時間生産性が向上している」という設問に対してどの部門もYes回答率が低い
上記のことから、管理部門主導のもと残業時間管理は厳しく実施されているが、内情は時間生産性を高める働き方改革とはなっていないといえるでしょう(時間管理についてYes回答率が高い管理部門・生産部門でも時間生産性向上につながっていない)。
図2 『働き方改革』に関わる設問の部門別Yes率(今回)
同じ設問の結果を職位階層別に見てみましょう。
つまり、残業時間管理という業務は、課長・主任といった中間層に大きな負荷がかかっているようです。
図3 『働き方改革』に関わる設問の階層別Yes率(今回)
以上の結果をみると、A社では「働き方改革」≒「残業時間管理」に陥ってしまっているようです。
A社ではさきほどの意識調査結果データを使い、「時間生産性が向上」と相関が高い設問を整理しました。相関が高い設問とは、
①「時間生産性が向上」認識を高めるために重要な要素(プロセス)である
②「時間生産性が向上」認識が高まれば高くなる設問(結果)
ですが、ここでは①と推察される設問を整理しました。
図4 設問『職場の時間生産性向上』と相関が高い設問
「時間生産性向上」のためには、「職場では時間管理・残業時間を意識」も重要な要素であるという結果が出て、事務局メンバーは、ほっと一安心です。しかし、業務改善、分担改善、スキル・ノウハウ共有(教育)、他部門・他社連携の重要性については、わかってはいるけど、なかなか進んでいない課題でした。
また、「会議は結論が明確で目的が達成」も重要な要素と出ました。実際は「ウチは会議が多いし、長いんだよね。結論も出たのか出なかったのかアイマイなことも多い......」という面もありましたので、会議に着目しました。
「会議は結論が明確で目的が達成されている」と「会議は準備をしてから参加している」の結果を、職位階層別に示したのが以下の図です。
つまりこのことから、会議自体にムダが多いせいか、課長・主任は会議のための資料づくりに忙殺されている可能性があるといえるでしょう。
図5 会議に関する階層別結果(Yes率)
上記の結果を踏まえて、A社では全社施策として残業時間管理に加え、以下のような会議改革をスタートしました。
会議改革を行なった結果、A社は1年後「会議は結論が明確で目的が達成されている」という設問に対するYes回答率は向上しました。また、「職場の時間生産性は向上」「人員数は適正」も少しだけ向上しました。
次のステップは、各部門での業務改善、分担改善、スキル・ノウハウ共有(教育)、他部門・他社連携への着手です。重点改善部門・職場を絞り込んで、A社の改善は続きます。
チーフ・コンサルタント
1988年JMAC入社。人材・組織マネジメント領域におけるコンサルティング活動に従事。人材マネジメント領域では、小売業・サービス業を中心に、人事制度改革、人材育成体系づくり、現場・非正規社員の活躍化などを支援。また、JMAC組織文化診断(OPECS)を活用し、多くの製造業・サービス業に対して、組織風土診断・風土改革・マネジャー教育などを支援。
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