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失敗しない組織改革のススメ―問題意識を起点に対策を立てる―

第1回 問題意識を見える化する

  • 人事制度・組織活性化

才木 利恵子

 本コラムでは、社員一人ひとりの問題意識が組織を変える力となることを再確認したいと思います。

 「ウチは問題意識の高い人が辞めていくんです」――コンサルティングの場面で、時折出会う発言です。問題だと思っていることがあるけど、自社は変わらないだろうという諦め感・流され感と、変わったらいいなという期待感が含まれていると感じます。もし、隣の同僚も上司も、他部門の人も、そしてトップも問題だと思っていることをお互いにわかっていれば話は早いです。みんなで変えようよ!という組織的な力につながります。

 そこで、みんなの問題意識を見える化する手法と、それがどんな解決方向につながるかを紹介していきます。

改革のために社内インタビューは大事

 私たちマネジメント・コンサルタントが改革をお手伝いする際、どんなテーマであろうと必ず診断時に実施することがあります。それは社内のみなさんへのインタビューです(この診断とは、現状把握し、課題を整理し、今後の改革推進・定着計画を立案することです)。

 インタビューは、トップ層・管理職層はもちろん、一般社員、必要に応じてパートさんなどの非正規雇用社員も対象とします。たいがいは全員ではなく、数人を選んで実施します。原則として1人ずつ、事務局など会社の人は同席せず、コンサルタントとご本人のみ。その人が認識している、現状やありたい姿、問題意識を聴き出します。

 社員インタビューの効用は、以下の3つに整理できます。

①客観的なデータの裏づけがとれる

 診断時は、並行して社内外のさまざまな仕組み・制度の資料やデータを収集・分析したり、現場の観察・測定を行ったり、客観的データの収集・分析を行います。しかし、なぜそのデータになったのか、そこに隠された問題点を、現場のみなさんが教えてくれます。

②問題意識を持つ人を発見できる

 問題意識を持っている人は、その後の改革推進・定着の際に重要な役割を果たしてくれます。率先して改革に取り組んだり、厳しい眼で進捗を検証し、「全然変わっていないじゃない」「もっと、これをやらないとダメ......」などと、私たちや事務局サイドを叱咤激励してくれたりします。インタビューは、そのような心強い味方に出会う機会でもあります。

③人による「現状」「ありたい姿」「問題意識」の違いが見える

 その人の置かれた状況により、会社の現状や改革方向の受止め方は違います。

 たとえば、

  • 「私が以前いた会社では、この改革の方向は当たり前だ。現状がおかしい」
  • 「別に今のままでも問題ないでしょ、みながんばっているし大丈夫」
  • 「今の人員や人材では、それはムリだよ」

などです。

 受止め方の違いがある状態では、改革は進みません。社内にどのような認識の違いがあるのか、それを埋めるためにどのような施策や進め方を追加すべきかが、見えてきます。

 ところが、インタビューは全員には行うことは少ないため、たいがい「問題意識」の高い、会社側から見て優秀な人が選ばれます。上記①や②のためには必要なことですが、選び方によっては人による「現状」「ありたい姿」「問題意識」の違いが十分に見えてこない場合も、ままあります。

改革を阻むのも、改革の力となるのも、社員の意識

 実は、組織が改革を実施しようとするとき、もっともネックとなるものは社員の意識である一方、改革の力となるのも社員の意識だと思っています。

 組織としてマネジメントすべき対象は、①成果、②プロセス、③人の意識の3つに分けられます。この3つが連動して、改革は成功します。目指す成果とそのためのプロセス改革に共感・腹落ちして、自分のためにもなるとわかって、みんなが成果に向かって知恵出し・工夫を協力して行っている状態です。

 ただし、「③人の意識」が伴わないまま改革を進めると、一時的に言われたとおりのことをやる、上手くいっていない現状を隠すということになったり、ちょっと上手くいかなければ改善もしないままに「ほら、この改革は良くなかったんだよ」ということになったりします。

マネジメントの3つの対象

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改革の力となる社員の問題意識

 では、改革の力となる社員の意識とは何でしょうか?

 それは、「今のままではまずい」という問題意識です。ところが、問題意識とは「ありたい姿」と「現状」のギャップ認識ですので、人によって異なる場合も多々あります。最近お茶の間の話題となっている相撲協会の改革が進まないのも、人によって、「ありたい姿」と「現状」の認識がバラバラで、「問題意識」の共通認識ができていないのかもしれません。

問題意識のバラつき図解

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社員の問題意識を見える化しませんか

 全員にインタビューすればよいのでしょうが、それは現実的ではありません。そんなときは、社員の問題意識を見える化する「従業員意識調査」をお勧めしています。組織マネジメントとして当たり前の状態の項目に対して、自分の会社や職場は、自信を持って「はい」と回答できる状態なのか、「いいえ」と問題意識を持って回答したい状態なのかを問い掛けるものです。なお、この「従業員意識調査」は、各社で実施しているさまざまなアンケート(コミットメント調査、働きがい調査、従業員満足度調査など)とは性格が異なります。

 次回以降、この調査によって、どのような問題意識(ギャップ認識)が見えてくるのか、そして見える化することでどのような対策につながったのかを紹介していきます。

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