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食品専門商社D社の物語② ~中堅・中小企業の改革物語~

2018年7月10日

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食品専門商社D社の品質(Q面)の実態

第6回で述べたように、品質(Q)においては、クレーム対応・クレーム削減に向けた管理体制が追い付かず、クレームの増加傾向に歯止めがかかっていない状況でした。「クレームを減らす」ためには、食材を製造する工場から出されるクレーム品をなくしていくことが必要ですが、D社においては、お客様へのクレームの対応のまずさにより「二次クレーム」を誘発し、売上の低下を招く状況も見られました。従って、D社の売上拡大に貢献していくためには、「クレームを減らす取組み」だけでなく、「二次クレームを防ぐ(被害の拡大を防ぐ)取組み」も必要でした。

クレームを減らす取組み内容

D社においては、前記のとおり、様々な商品(約1000種)と海外が大半を占める仕入先(約150社)とうまく付き合っていかなければいけません。クレームを減らすためには、クレームを発生させない仕入先/工場を選び、入れ替えていくこと(入替)、もしくは、今取引している仕入先の品質管理レベルを向上させること(改善)、の2つのアプローチがあります。そこでまず、どの仕入先に対してどのようなアプローチで活動をしていくのかを決めることが重要でした。

そのためには、クレームの実態を正しく把握することが必要です。D社ではクレームの情報は記録していたものの、情報が層別されておらず、単なる件数の管理しかできていませんでした。そこで、仕入先別/製造工場別/商品別/発生事象別等、個々のクレーム情報に適切な層別情報を加えた「クレームデータベース」を作成し、傾向を見えるようにしました。これにより、どの仕入先/製造工場に対して、どのようなアプローチをとればよいのかを検討することができるようになったのです。

1つ目のアプローチである「入替」については、同じ商品群内でクレームの発生傾向が明らかに悪い仕入先を特定し、価格が同レベルの仕入先が見つかる場合は、製造工場の入替えを実施しました。但し、D社の圧倒的な価格競争力を備えた仕入先は数多く存在するわけではないため、既存の仕入先と継続して付き合っていくこと、つまり、仕入先と一緒に改善を進めていく2つ目のアプローチが活動の大きなウェイトを占めました。

2つ目のアプローチである「改善」についても、クレームデータベースを使い、クレーム発生傾向の極めて高い仕入先をランク付けし、密接なコミュニケーションをとりました。そのコミュニケーションとは、3つの要素から構成されます。それは、「Why?」、「What?」、「Check!」です。

Why?

まず、「なぜコミュニケーションが必要なのか」を丁寧に説明することから始めました。D社が直接取引している「仕入先」は商社機能を持つ仕入先が多くを占め、最終製造工場までに複数のステークホルダーが介在している構造にありました。従って、単に仕入先に伝達するだけではなく、その製造工場にまでD社の意図を伝え、行動を起こさせることが求められます。そこで、クレームという問題の重大さを仕入先の幹部と共有し、クレームを削減していくことが仕入先にとっても必要であることを認識してもらいました。幹部の意識を変えることで、仕入先内の活動が変わり、その活動によって最終製造工場の活動を変えることにつながるからです。その時は、単に「クレームの改善をお願いします」という定性的な依頼だけではなく、クレームデータベースを活用した定量的な情報も使いながら、繰り返し伝えていきました。

What?

次に、どのような対策を講じれば再発防止になるのか、その具体的対策を仕入先と協議して決めていきます。食品工場における基本的な品質向上策を体系的に整理・一覧化したものを仕入先と共有し、仕入先が最終製造工場に対して説明・提示しやすい状況を作ることで、「検査を強化します」「教育を実施します」というような抽象的な対策から実現可能で5W1Hを明確にした具体的な対策へとレベルアップしていきました。

Check!

そして最後は、検討・実行した対策によって、クレームの再発がないかを検証し、再発している場合は別の対策を検討していくことです。つまり、クレーム情報を基に改善サイクルをシンプルに回していく活動です。D社においては納入までのL/Tが約2ヶ月と長い商品が多いため、改善の効果が見えるのも2ヶ月以上後になり、効果を確認しにくい状況にありましたが、クレーム発生の工場/事象をデータベース化しているので、その確認も容易にすることができるようになりました。

上記のようなコミュニケーションを仕入先と粘り強く行うことで、クレーム数は活動前と比較し35%削減されました。特にクレーム発生傾向の高いランク付けされた仕入先においては、クレームに対する姿勢の変化も見られ、45%の削減が達成されました。今でもクレームの発生傾向に応じて、仕入先とのコミュニケーションは継続して行われています。

クレーム対応の実態

クレーム対応には、多くの部門が関わります。D社においては、得意先からのクレームを受け付けて対応する営業部門、営業からの情報をもとに発生要因を調査し報告を準備する、また、発生状況によっては回収や出荷止めを判断する品質管理部門、その代用品を手配・準備する購買部門と複数部門が関わって対応することになります。

D社においては、得意先のクレーム内容の正しい把握、迅速な謝罪、発生要因の説明(報告書の提出)の遅れ等、対応が不十分なケースが見られ、二次クレームにつながる案件も見られました。これらの問題の根本的な要因はクレーム対応業務が単なる「報告書の作成、提出業務」になっていたことでした。すなわち、お客様を意識した「迅速に納得いただける対応」になっていなかったのです。

クレームの拡大防止(対応レベルの向上)の取組み

「クレーム対応におけるお客様を意識した対応」とは、クレームに対するお客様の意見を正しく把握した上でアクションを決めること、そして、迅速に対応するための各作業に対する対応期間を守ること、の2点であり、「正確性」と「スピード」が重要です。

そこで、クレーム発生時のお客様の要望を傾聴し、お客様の製造・販売にご迷惑をかけないためのアクション(代用品の準備・手配、速やかな要因調査、調査結果や対策の丁寧な説明、謝罪等)のルールを作成しました。

そのとき、当該クレームにおいては興奮状態にないお客様であっても、クレームが再発しており、今後興奮状態が高まる可能性のあるお客様に対しても、事前に謝罪や状況説明等の対応を行うように決めました。これにより、お客様のクレームに対する要望については、1件1件品質管理部門と営業部門で共有され、アンテナが張られる状態になっていったのです。

次にクレーム対応の期間を設定しました。「クレームを受け付けてから品質管理に伝達するまで」、「調査報告書を作成するまで」、「報告書を使ってお客様に説明するまで」といった作業区分ごとに明確にしました。クレーム発生原因調査と報告書の作成については、時間がかかりますし、自社だけでなく発生元である仕入先の協力も必要になるため、時間短縮の改善も検討しました。原因調査と報告書作成を確実かつ迅速に行うために、異物混入、毛髪混入、サイズ/重量バラツキ等の発生事象別に調査項目を明確にして仕入先と共有することで、仕入先の報告書作成レベルのバラツキを抑え、時間短縮もできるようになりました。

上記のような2点のポイントを織り込み、クレームを受け付けてから、確実にお客様の納得をいただくまでの一連の流れをフロー化し、品質管理部門が司令塔となって実行状況を確認することにしました。結果、営業部門/購買部門との連携も活発になりました。たとえば、営業との連携について説明します。

この対応フローを動かすツールになるのが、営業が入力する「クレーム受付表」でした。一人が何十社を受け持ち、全国の営業先に出向いている営業でも、効率的かつ対策検討に必要な情報が入力できるように修正をしました。修正後間もない頃は、入力の不備もありましたが、不備については品質管理が厳しく是正を促していくことで、正しく入力ができるようになり、品質管理と営業の無駄なやり取りも削減されていきました。品質管理がどんな些細なことでもお客様への対応の遅れにつながる問題が見つかれば注意・是正を促す姿勢が、クレームに対する社内の問題意識を高め、営業の意識を変えることにもつながっていったのです。

このように新しいクレーム対応フローを構築し、運用を遵守することによって、二次クレームの発生もなくなっています。さらには、クレームの対応を通じて、関連部門でのコミュニケーションが増え、都度課題を見つけ解決していく動きが取れるようになるなど、好循環を生み出すことにも成功しているのです。

【執筆】

角田 賢司
生産コンサルティング事業本部 プロセス・デザイン革新センター長 チーフ・コンサルタント

製造業の収益向上目標を達成するための支援に取り組んでいる。おもに IE技術をベースとして人件費低減のための労働生産性向上、材料費低減、 リードタイム短縮など。総合生産性の向上、組立ラインの最適要員配置、同期化等生産システム改善、設備稼働率改善、材料歩留まり改善といった現場密着型のコンサルティングを得意とする。

※本稿はNECサイトに掲載したコラムからの転載です。