第10回 プロジェクト推進時のよくある課題「Phase4 要件定義」
業務改革・システム化

今回は、以前掲載した「中小製造業A社の改革物語①、②」のその後についてお話しする。
当時A社が描いた
・現在の顧客の業績に左右されることなく、幅広い顧客と付き合いたい。
・製品の付加価値を高め、利益率を高めたい。
・自社の技術を生かしながら、従来の事業分野とは異なる領域に進出したい。
・自社ブランド製品を生み出したい。
・新しいことにチャレンジをし、常に変化に対応できる人材を作りたい。
・日本でモノづくりを行い続けるためにも、成長する海外市場での事業を行いたい。
というあるべき姿に対して、その後どうなったかをお伝えしたい。
2年後、A社の売り上げは、それまでに比べて20~25%増となり、黒字転換を図ることができた。売り上げ増、利益増の大きな要因は、新規事業が成功し、現在売り上げの約20%を占めるまでになったことである。
新エネルギーに関連した事業が世の中のブームにも乗り、順調に成長してきた。しかし、新エネルギー事業の立ち上げに留まらず、A社ではこの2年間、さまざまなことにチャレンジした。モノづくり(製品・事業)、人づくり(人材)、仕組みづくり(管理システム・情報システム)に対していままでとは違った考え方、やり方で改革を行っている。すべてのことが順風満帆とは言えませんが、以前に比べると新しいことに挑戦するという空気が濃くなった。それぞれの改革について、詳しく見ていこう。
新製品開発や新事業開発においては、先述した新エネルギー関連事業が会社業績に大きく貢献しているものの、そのほかにもいろいろな改革活動を行ってきた。
【グローバル事業】
アジア市場での拡販を目指して、現地販売パートナーと連携し海外工場を新設した。1年目は、工場は作ったものの、なかなか売り上げが伸びず苦労したが、現地社長自らが独自の販路を開拓し、2年目にして売り上げが増えてきた。その後、大きな環境変化もあり、現在での苦戦は続いている。
【産学連携による開発力アップ】
地元の大学や専門学校と連携して、学校で考えている新技術の製品化や、学生によるデザインコンテストを開催し、若者目線での機能・デザインの製品実現に取り組んだ。
【自社ブランド品開発】
新たにBtoC市場に向けた製品開発を行い、自社ブランド品として販売を開始した。
【モノづくりトレーナー育成】
現在は、取引先やコンサルタントの外部の力を借りて改善を推進しているが、自らの力による改善の推進だけではなく、改善ができる人を育成できるような人材を育てるべく活動を行っている。
【次期経営幹部育成】
現在の管理職と有望なリーダー層に対して、現在の仕事を首尾よくこなすだけではなく、会社の将来がどうあるべきか、それに向かって何をすべきかを考えることができるよう、合宿研修等を行いモチベーションアップと活性化を図っている。
【経営管理システム構築】
事業別の収支やKPIを毎月の経営会議でタイムリーに検討できるようシステムを構築した。以前は単純な業績数値を基に行っていたが、きめ細かいメッシュでの業績管理指標だけでなく、先々の見通しや活動計画まで合わせて管理できるようになり、データで経営を見るという視点では飛躍的な向上が図られた。
【情報システム構築】
営業と開発と製造をつなぐ仕組みを現在開発中である。(一部実施済み)これにより、データや情報の一元化が図られ、仕事の手戻りや、ベテラン社員のノウハウに頼った仕事が激減することが期待できる。また工場においてはQRコードを活用して、作業の効率化を図ってきている。
常に改革を行う体質になるべく、今もA社はいろいろな課題を抱えながら、失敗もしながら、少しずつではあるが着実に前進を続けている。
シニア・コンサルタント
調達、生産、物流、販売にわたるサプライチェーン全般を対象とし、長年数多くの企業を支援してきた。多様化するものづくり分野における豊富なコンサルティング経験をもとに、現在は「IoT活用イノベーションマップ」、「現場IoT7つ道具」などを開発、製造業のIoT推進を支援している。
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