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製造業C社の物語 ~中堅・中小企業の改革物語~

2018年7月 3日

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1. 製造業C社の戦略

前回は、成功している 企業の、 3 つのパタ ーンとして、以下の 3 つがあり、中小企業が成功する道として 3 番目の事例をご紹介しました 。

  1. いつも先進的な商品(製品やサービス)を提供する
  2. いつも安い商品を素早く大 量に提供する
  3. いつも気が利いた商品を提供してくれる 。

今回も、 3 番目のいつも気が利いた商品を 提供することで成長して いる中小企業を 、今度は、製造業でご紹介します。

C 社は、1 970 年に創業 、従業員40 名で電動工 具を製造販売して います。
製品は、工場内などで使用する 移動式のミニクレーンで 、設備の移動や修理・改造時に生産技術部門が使用するもので す。 C 社は、工場を北関東にお いて、営業所を 東京・大阪に置き、もっぱら 代理店販売をしていました 。

C 社は、リ ーマンショック前までは、比較的堅 調に事業が推移して いたので すが、リーマンショックにより、売上が半減しました 。受注低迷の打開策として 、社長が考え たのが、顧客毎の要望を丹念にとらえて、 「特注品の営業力を強化し、売上・利益を伸ばす」ということでした。社長は 、社内にプロジェク トチームを作り、戦略実行の案と課題を様々に考えました。

社長としては 、顧客である製造企業は 、全般に景気低迷で設備改善を図りながら工場を維持しようという企業が多く、顧客の要望にきちっと 応える商品を提供できれば 売上は、必ず伸びると考えていました 。そのことには、社員は同意しました 。しかし 、社員は 、受注できるスペックの商品 はてんでバラバラで 、顧客の様々な要求を受け入れること になる特注品で、それは大変問題だとしました 。

特注品は 、その受注・設計・製造プロセスがベテランに依存しており、忙しくなれば、ベテランからの不満が出てきます。また 、特注品の部品や 製造工程は原価がよくわから ず、儲かると は限らな い、という声もあります。また 、特注品の注文が 入ると 、工場や出 荷部門が混乱するので 、現場が嫌がると いう声もありました 。

2. 改革に乗り出したC 社社長

そこで、社長は仕事のやり方を皆で分解し、見えるようにして、皆で仕事ができる体制を作らなくてはうまくいかないと考え、仕事のやり方の改革を決断しました。

社長をリーダーに、仕事のやり方を分析してみたところ、

  • 少数の設計者に特注品設計が集中するため、こなしきれない
  • 顧客からの要求を、営業マンが正しくとらえておらず、設計者との間の手戻りが多い
  • 営業マンは、代理店や価格設定などで相談があっても、なかなか管理者に相談できず間違った判断をしていることが多い
  • 特に新人営業マンは、商売上や業務上のルールがわからず、右往左往している

など、様々な問題が浮かび上がってきました。

そこで、仕事の見える化の中に、顧客からの注文をしつかり定義して、設計者とのやり取りをスムーズに行う工夫を組み込むことにしました。

具体的には、クラウドサービス上に営業案件管理システムを構築し、特注品案件をすべて登録することにしました。
その際に、特に重視したのは 、以下の 3 点です。

(1) 営業マンは特注品仕様を 、確実に登録する 。

案件管理システム上では、特注品仕様は、全て、アンケートのような質問方式に展開し、 回答を記入することとしました。その際、もし顧客に聞けないこと、確認できなかったことがあったら、それも回答結果として記述するようにしました。その結果、特注品仕様の情報精度が大幅に向上しました。また、営業マン自身は、自分の実力の範囲で回答できるようになり、記入率が急増しました。さらに、不明な項目は、ベテランが営業マンに引き出し方を指導することで、急速に減少したのです。

(2)特注品 仕様を基に設計方針を 決める

従来は、ベテラン設計者が自分で設計業務を行っていました。しかし、特注品仕様を営業マンがわかりやすい言葉で確実に把握するようになると、ベテラン設計者は、既存品での対応、流用設計、イージーオーダー、特殊設計、などの設計方針を決め、若手にも設計業務をどんどん任せるようになりました。これでベテラン設計者の負荷が減るようになり、 原価見積りに時間を使い、原価設定の適切性も向上しました。

(3)WEB上に、報連相の 仕組みを作った。

案件管理システムには、営業の各段階で、何を把握し何を決めるべきかを明確にし、そこでの検討で、営業マンが不安・相談が起きたときに、タイムリーに相談する仕組みを作りました。たとえば新規取引先の取引開設の手続きや、代理店の選択、仕様が明らかにな らないときの顧客アプローチなどです。これにより新人営業マンの育成スピードも上がったようです。また、このような報連相内容はすべて記録されるので、あとで記録を基にマニュアルの改訂も図れるようになりました。

上記をポイントにした新しい仕事の仕組みづくりには約半年かかりました。しかし、クラ ウドサービスによるシステム化を行ったため、システム 構築は、 2 か月程度で済みまし た。

3. 改革の成果

C 社社長によると 、この案件管理システムの 構築により、初期課題が解決され、

  • 特注品受注プロセスがベテラン依存から脱却できた
  • 特注品の収益性が明確になり、安心して営業強化できるようになった
  • 設計担当者の負荷が減って、新人の育成も可能になったとのことです。

さらには、売り上げが前年比 1. 5倍に伸び 、一方で要 員数は1. 2倍程度で済んでおり業績が好調とのこと。さらに、若手とベテランのコミュニケーションが活発化し、若手の育成に も効果があったとのことです。
C 社社長は、リーマンショックを機に、自社のビジネスを 、顧客の要望を聞いて実現する、というスタイルで徹底することとし、そのための仕事のやり方を、案件管理システム という方法で仕組みにし、業績を実現したのです。

【執筆】

横川 省三
一般社団法人 日本ビジネスプロセス・マネジメント協会 理事
テクニカル・アドバイザー 経営コンサルタント

シンクタンクを経て、日本能率協会コンサルティングにて事業戦略、業務改革、情報システム再構築などのテーマで企業改革を支援。2006年に業務プロセスを改革するアプローチの普及団体である一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会を設立し、理事に就任。現在、政府、民間企業およびITベンダーへのビジネスプロセス・マネジメント(BPM)の普及を図っている。

※本稿はNECサイトに掲載したコラムからの転載です。