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第1回 製造業のサービス化とは何か?

2016年6月 1日

 本コラムでは、製造業が今後の成長機会を創出するために注目されている「サービス化」を取り上げます。概念的になりがちな「製造業のサービス化」について、その考え方はもちろん、実現へ向けた進め方・取組み方もお話しします。

製造業のサービス化の考え方 ―価値提供から価値共創へ―

 製造業のサービス化を本コラムでは次のように考えることとします。
 『製造業が従来のように「モノを製造・提供して、それを消費した顧客から対価を得る」という考え方から「価値は顧客が経験したときに生まれるものであり、そのためにモノに加え何かしらのサービス的要素を含めて提供し、顧客と共に価値創りを行う」という考え方にシフトすること』(下図
 これは、Vargo.S.L. and <span class="caps">R.F.Lush[1]のサービス・ドミナント・ロジックやC・K・プラハラード、ベンカト・ラマスワミの価値共創[2]の考え方を取り入れています。

価値共創ではモノ、サービス、経験を企業と顧客が一体となって価値を想像していく

製造業のサービス化の目指すところ ―競争力の強化と収益基盤づくり―

 しかし、このように書かれても、なかなかわかりにくい考え方だと思います。セオドア・レビットが「顧客が欲しているのはドリルではなく穴だ」といっているように、製造業はモノ売りになってはだめで、顧客の真のニーズに応えなければならないという考え方は従来からあります。プロダクトアウトからマーケットイン、あるいはカスタマーアウトといった考え方の変遷もありました。
 このように、マーケティング全体も製品志向・販売志向から顧客志向へと移り変わってきました。しかし、こういった考え方によってCSや顧客視点の重要性は強く意識されるようになったものの、製造業は依然としてモノづくり中心の考え方であったのではないでしょうか。
 本コラムで製造業のサービス化のひとつとして主張したいのは、そうした考え方からの脱却です。すなわち、企業は顧客ニーズを踏まえた製品を提供した後は顧客にゆだねるということではなく、顧客が製品を使用して体験するところ、つまり価値共創の場に関与すべきだということです。
 この「売りっぱなしにしない」という意味において、製造業がアフターサービスを強化することやSPA(製造小売)を展開していくことは、製造後のプロセスに関与することであり、製造業のサービス化のひとつだと考えます。モノだけでなくサービスをセットにして考えてみる、サービスをコストとしてだけでなく収益の源泉として考えてみる、売りっぱなしではなく顧客が製品使用する場面までの関与を考えてみる、こういったことで製造業のサービス化が見えてきます。目指すは、顧客との強く・ユニークな関係構築を通じて競争力の強化や新たな収益基盤づくりを行い、事業成長につなげるということです。

加速する「製造業のサービス化」 --その背景にあるもの―

 製造業のサービス化が求められるようになった背景とは、どのようなことなのでしょうか。

新たな競争力の獲得

 製品そのものの差別化が難しくなっている、いわゆるコモディティ化については多くを説明しなくても、みなさんの実感としてあるのではないでしょうか。すぐにライバルが類似品を出し、価格競争に陥るということは常態化しているといえます。製品そのもので経験価値を高めることやモノだけでなく、そこにサービス的な要素を加えていくことで差別化ポイントをつくり出し、新たな競争力としていくことが重要な課題となっています。

新たな収益源の確保

 コモディティ化の結果として、開発費を回収するだけの先行者利益も十分獲得できなかったり、価格競争に陥ることで利益率が悪化したりします。サービス的な要素による付加価値によって利益を生み出す、有料のサービスメニューを用意する、さらにはサービスの事業化を行う、などで新たな収益源の確保が期待されます。

新たな技術革新の追い風

 顧客の製品利用状況を把握することによって、顧客へのソリューション提案や新たな製品・サービス開発のヒントを得るといったことが可能になります。そのために、たとえばIoTの活用が考えられます。こうした技術革新によって、これまでよりも容易にサービス化を目指しやすい環境が整ってきているといえます。

 以上のような背景によって「製造業のサービス化」の動きが加速していると考えられます。

【参考文献】
[1]Vargo.S.L. and <span class="caps">R.F.Lush,Evolving to New Dominant Logic of Marketing,2004 Journal 01 Marketing,vo1.68
[2]C・K・プラハラード、ベンカト・ラマスワミ、コ・イノベーション経営 価値共創の未来に向けて、有賀裕子訳、東洋経済新報社

コンサルタントプロフィール

渡邉 聡

渡邉 聡

CS・マーケティング/セールス革新センター シニア・コンサルタント

1996年 JMAC入社。CS・マーケティング領域におけるコンサルティング活動に従事。主にCS経営推進、CRM、サービス競争力強化、サービス生産性向上、オペレーション・業務改善、顧客接点人材育成といったテーマで企業の変革を支援している。長年にわたるサービス業のコンサルティング経験を活かし、近年は製造業のサービス化について注力している。共著に『仮説検証型マーケティング(リックテレコム)』『サービス産業におけるサービス品質向上(日本科学技術連盟)』『お客様対応業務における品質管理(日本能率協会マネジメントセンター)』など。
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