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JMAC品質経営研究所だより Vol.10
歴史を感じさせるうれしい出来事
新郷重夫氏:著「Study of 'TOYOTA' Production System」

  • 生産・ものづくり

宗 裕二

長い歳月を経て一冊の本が私の手元に届けられた!

史を感じさせてくれるうれしい出来事があった。と、同時に私どもJMACの大先輩に感謝しなければならないと、改めて思った。アメリカのある企業をご訪問していた時のこと、現場で測定などの技術を担当しているエンジニアのボブさんが、私に一冊の本を持って会いにこられた。普段のミーティングなどでも、ある分野の代表者としてお会いしていた方なのだが、改めて私を訪ねてこられたのである。

話を聞くと、同じくエンジニアだった彼のお父様が、最近亡くなられたとのこと。10-1.jpgそのお父様の遺品を整理していて、彼が若い時に父親から譲り受けた本があることを思い出したという。その本は、自動車業界の改善について書かれた本で、お父様が若かりしエンジニアだったころに、著者である本人の講演を聞きに行き、サインまでもらって来た本だという。そして、私がアメリカのその会社を訪問するのが最終日であるとの話を聞いて、その本は、自分が持っているよりも私が持っていた方が良いであろうから贈呈しにきたのだという。

のタイトルは「Study of 'TOYOTA' Production System」であり、著者は「新郷重夫」とある。新郷重夫は1909年佐賀県生まれ。1945年(昭和20年)に私共日本能率協会に入職し、製造業へのコンサルタント業務に従事した大先輩である。内段取り、外段取りという基本コンセプトを生み出し、1954年にトヨタ自動織機の生産技術のトレーニングなどを行っている。その後、ポカヨケの基本的な考え方も構築している。アメリカで大いに認められ、アメリカでの著書が多く、アメリカユタ州大学を中心に設立された「新郷賞(The Singo Prize)」は、「製造業のノーベル賞」とも称される。日本能率協会が岸信介によって設立されたのが昭和17年であるから、その3年後にはコンサルタントとして活躍を始めたことになる。勿論私も名前だけは知っているし、その著書も読んでいるが、流石に本人にお会いしたことはない。その大先輩の講演を直接聞き、本には本人のサインまでもらって来たというのがボブのお父さまである。生前、お父様は、新郷重夫の改善の考え方の素晴らしさを良く語っていたのだそうだ。

そんなお父さまの息子であるボブが、エンジニアの道を選び、日系の企業のエンジニアとして働いているのである。本には、お父さまが息子へ贈呈したサインが入っており、貴重なものである。最初は簡単なメモをポストイットに書いて渡してくれたのだが、「しっかり、本にメッセージを書いて貰いたい」とお願いをして受け取らせて頂いた。大先輩の業績に感謝すると共に、この本を次の世代にどのように引き継ぐかを考えている最中である。

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