お問い合わせ

JMAC品質経営研究所だより Vol.3
今こそ、ピンチをチャンスととらえよう!

  • 生産・ものづくり

宗 裕二

日本に最新鋭の工場を建てるチャンス?

COVID-19が世界的な猛威を振るう中、中国に進出している日本メーカーの中には、国内回帰や他のアジアの国へ拠点を移す等、検討を始めている企業もあるかもしれません。このような世界的なピンチをチャンスととらえ、品質保証の視点から、最小のコストで最大の価値を創出する工場づくりの推進について、今回お話ししたいと思います。

今、世界的にCOVID-19が猛威を振るい、日本経済をはじめ世界の経済活動が極端に鈍くなってきています。かねてからの懸案であった中国への依存リスクが現実のものとなり、中国へ進出した日本のメーカーは、日本へ回帰するか、中国以外のアジアへ拠点を移すか、検討することが求められているのです。
このような中、日本政府は一連の緊急事態対応の一環として、日本企業の工場が日本に回帰するための支援策として2,200億円を予算化し、さらに中国以外の国に工場を移す場合の支援として、235億円を予算化したと先日ニュースでも報道されました。 中には、日本に回帰することを具体的に考え、改めて国内に工場を建設する計画を検討する企業もあるかもしれません。

質保証の視点から、同じ基準で各国にある自社工場を点検することはとても重要な確認です。同じ製品は国が変わっても同じ品質保証をするべきだと誰もが考えるからです。私もそうした視点で日本の企業の海外事業所を点検させていただくことがよくありました。
多くの場合、日本国内の工場が最初に構築された工場であり、建設当時は最新の製造技術によって構築された工場ですが、その後、製造技術の発展によって、海外に進出した新しい工場の方がより最新鋭であることが多いと思います。
従って、同じ基準で品質保証の堅牢性を確認しようとしても、元々の製造システムが異なることから、その工場の製造技術のレベルを考慮した判断が必要となります。

般的な傾向として、海外の工場では最新鋭の設備を有し、自動製造のシステム運営の元、設備能力に頼った品質保証をしている場合が多いと思います。一方で日本国内の工場は老朽化が進んではいるものの、TPM活動などで、素晴らしいマネジメントシステムの元、品質保証をしている場合が多いようです。
私は日本のように、マネジメントシステムで品質保証を行い、実績を出すことはとてもレベルの高いマネジメントができていないと不可能な領域であると考えていますが、海外で現地採用された品質保証の担当者には理解しづらいようです。
こうした担当者が、日本の1号工場をマザー工場だと思って見学にくると、「日本の方が遅れていますね!?自分たちの工場の方が進んでいます!」と感想を口にし、一瞬がっかりしてしまう光景も目にしてきました。
長い歴史を持ち、日本国内にも世界的にも素晴らしい実績を持つ大きな企業ほど、こうした傾向があるかもしれません。そのような現状を見せていただきながら、「現時点の製造技術で、最もコンパクトで付加価値の高い工場を日本に作れないのだろうか。」と、考えていたところです。

前みそになりますが、私ども品質経営の基本的な考え方は右図の通りです。vol3.jpg
効率化を無視した品質保証はあり得ませんし、品質とコストは決してトレード・オフの関係でもないと思います。「価値ある加工(業務)だけで構成する工程を最小の面積に詰め込み、最小の工程を築くことで最小のリスクとし、最小のコストで最大の価値を創出する」ーーー今こそ、そのような視点に立った工場づくりの推進を考える絶好のチャンスかも知れません。


世界的な災害の最中、少々不謹慎に聞こえるかも知れませんが、ピンチをチャンスととらえて、じっくり時間をかけて考えて見るのもよいのではないでしょうか。
ポイントは、「自社にとって付加価値のある仕事は何だろうか?」と改めて考え、必要な仕事を厳選してみることだと思います。
私どもの経験では、しっかり突き詰めて考えれば、本当に必要な仕事は全体の30%程度しかないということがしばしばです。
価値とは何か、仕事の目的とアウトプットは何かを落ち着いて考えれば、随分と気づくことが多いはずです。
また、品質保証とは何をすることかも同様に考え、厳選した仕事の仲間に入れてみてください。身近な仕事からでよいと思います。自粛が明けた出社日には視点が変わっているかも知れません。皆さまのご検討をお祈りします。

オピニオンから探す

研究開発現場マネジメントの羅針盤 〜忘れがちな正論を語ってみる〜

  • 第30回 心理的安全性は待つものではなく、自ら獲得するもの

イノベーション人材開発のススメ

  • 第6回 イノベーション人材が育つ組織的条件とは
  • TCFDに基づく情報開示推進のポイント
  • オンラインサービスは新たなCXをもたらしたのか? オンラインサービス体験から見えた、メリットデメリット
  • 一人一人の「能率」を最大化させる、振り返りのマネジメント「YWT」のすすめ
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 第5回(最終回) 全社員をデジタル人材に!
  • 【業務マニュアル作成の手引き・後編】マニュアルが活用されるための環境づくり
  • 品質保証の「本質」を考える ~顧客がもつ、企業に対しての「当たり前」~

オピニオン一覧

コラムトップ