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「技術の事業化」を助ける生成AIサービスが始動

コラム

2025.12.26

JMAC EYES

近藤晋

技術の事業化を支援するコンサルティング・サービスを得意とするJMACは、その強みをさらに磨くべく、2026年1月から生成AIを組み込んだ新サービス「meadas+(ミーダス・プラス)」を提供する。ミッションは、技術と社会課題や市場ニーズを結びつけること。開発に携わったJMAC取締役・近藤晋に、その真価を聞いた。





技術と市場ニーズのマッチングを生成AIで強力に後押し

四半世紀前の〝思い〟が最新システムに昇華

 「技術」を起点とした新規事業創出の支援も、AI活用のコンサルティング・サービスも、実はJMACが早くから力を入れてきた領域だ。

 その胎動は、近藤がJMACに入社した、約四半世紀前にさかのぼる。

 「私はもともと他社で技術開発に携わっていましたが、開発した技術を事業化につなげられず、自身の仕事がなくなってしまった苦い経験があります。そんな経験から、JMACでは顧客の技術の事業化を支援したいと希望しました。幸いにも当社にはR&D部門の支援を行うコンサルタントが多かったこともあり、先輩方から全面的にサポートを受けながら、そのためのコンサルティングプログラムを数年かけて開発し、2004年より提供を始めました」

 当時、同じようなプログラムを提供するコンサルティングファームは他にほとんどなく、JMACにはR&Dを起点とした新事業創出の相談が多く舞い込むようになる。こうして、技術に社会課題や市場ニーズを結びつけるコンサルティングはJMACの得意領域となり、今に至る。それを担ってきたのが、近藤が統括する現R&Dコンサルティング事業本部だ。

 同部門が次なるステップに踏み出したのは、2017年のことだった。大量の文献を、計量書誌学(ビブリオメトリクス)を活用して分析する手法に注目し、研究を開始。その後いくつかのPoC(概念実証)を経た末、2021年に技術文献を読み込み、AIを活用しながら技術の応用に関する情報を提示するサービス「meadas(ミーダス)」をローンチする。ただ、AIへの高い注目度も手伝ってmeadasには多くの相談や受注が舞い込んだものの、いくつかの外的要因によってサービスは1年ほどで終了となった。

 そんな中で近藤が着目したのが、折しもやってきた生成AIブームだ。

 「生成AIを利用することで、より高精度かつ簡便に技術の用途開発サービスを提供できるのではと思い、新しいシステムの模索を始めました」

 新サービスの実現が大きく近づいたのが、生成AIの活用ノウハウを持つニーズエクスプローラと、システム開発を担うジェーエムエーシステムズ(JMAS)と提携したことだ。3社で生成AIに、JMACのコンサルティングの知見を落とし込んだ新システムを共同開発。こうして2026年1月から、生成AIを活用した、技術の事業化コンサルティングサービス「meadas+」を提供する運びとなった。

meadas+サービス

「meadas」は、JMACの技術系コンサルティングの知見に生成AIを組み合わせた、高付加価値の新サービス。2026年1月からサービスを提供。

meadas+について詳しく >

技術側と市場側の両方から注目要素をピックアップ

 旧meadasの機能を大幅に強化したmeadas+では、技術の用途開発サービスは、どう提供されるのか。そのプロセスを順に見ていこう。

 まずは、企業が保有する技術を俯瞰するために、論文や特許などの技術情報を、meadas+に読み込ませて「技術の棚卸し」を行う。

 「従来はコンサルタントが企業の研究者にインタビューし、聞き取った内容から技術の用途開発に有用な情報を解釈して一つひとつ展開する工程が必要でしたが、それがAIによって相当に効率化されます」

 続いては「技術評価」だ。棚卸しされた多くの技術からコア技術を見極める。従来はコンサルタントが顧客と議論を重ね評価してきたものを、meadas+が数十分で評価、それを参考にできるようになる。
 さらに、コア技術は「機能・性能」と「顧客価値」への展開プロセスにかけられる。たとえば「ウロコ由来コラーゲンの精製技術」というものが、「保湿性を◯%高める」という機能・性能を保有していれば、そこから「(化粧品の)使用感の向上」や「肌荒れ改善」といった顧客価値が導かれる。つまり、その技術にどのような機能があり、そこから提供し得る顧客価値を導くプロセスをmeadas+が実行する。

 これと並行して行うのが、市場側へのアプローチ「成長製品調査」だ。まずは市場レポートなどから、将来成長が見込まれる製品を洗い出す。そこから、事業可能性などを考慮し、注目すべき製品を絞り込んでいく。

 次に、その製品の社会実装上の問題点を見極める。

 たとえば成長製品に「紙おむつ」が抽出されたとすると、「石油由来の吸水材のため焼却処分するが、水分を含むため燃焼効率が悪く二酸化炭素排出を増加させる」といった問題点が示される。

 「技術だけを見るのではなく、市場からも、どこに事業機会があるのか深堀りします。これも従来はコンサルタントが情報収集を行い『どんなペイン(解決したい深刻な悩み)があるのか』『ペインを解決するための課題』や『その中で使われることが想定される技術』などを分析してきましたが、meadas+を利用することでこのプロセスを効果的にサポートします」

meadas+の概要

JMACの支援プロセスをシステム化

従来よりアイデアの幅が大幅に広がる可能性も

 こうして技術と市場の両サイドから注目要素を抽出したら、いよいよその要素を組み合わせ、具体的なビジネス案を生み出す。それが「新事業のアイデア発想」プロセスだ。技術から導かれた機能・性能・顧客価値と成長製品の情報をマッチングすることで、新規事業案を生み出していく形だ。前出の例を引き継げば、「ウロコ由来コラーゲンの精製技術×紙おむつ(→生分解性紙おむつ用保水膜)」といったものが挙がり、具体的な製品アイデアとしては「環境負荷低減のために埋め立てで肥料化できる紙おむつ用の保水膜」といったものが導かれる。

 その後、具体的なアイデアは「仮想カタログの作成」プロセスによってターゲット層、顧客価値、自社の優位性などが明確化されたことで、実現性を高めることができるという。

 「具体的な製品アイデアの発想までを行えるようになったことが、旧meadasからの大きなアップデートポイントです。もちろんビジネスアイデアを出すだけであればただ生成AIを使うだけでもできますが、meadas+はJMACのコンサルティングのプロセスが組み込まれているため、リアルな新事業企画検討で十分に耐えうるアイデアが出力されます。このように、JMACが採用するコンサルティングプロセスがシステム上でも再現される点が、meadas+の何よりもの特徴です」

 なお、発想量に関していえば、meadas+はマンパワーを遥かに凌ぐ。たとえば千個のアイデアを出すには、人であれば週1~2回のアイデア出しのワークショップを3週間繰り返すなどで可能になるのに対し、生成AIなら1時間程度で可能だ。また処理できる情報量が飛躍的に増え、そこに生成AIならではの発想の意外性が加わることで、アイデアの幅も従来よりも大幅に広がる可能性がある。

 「JMACのコンサルティングの知見に、生成AI技術を組み合わせることで、これまでにない付加価値をもつサービスとなりました。もちろん、文書化されていない技術の棚卸し、あるいはクライアント企業の風土やプロジェクトの文脈を理解した多面的な視点による新事業アイデアのブラッシュアップなど、最終的には人が生成AIによるアウトプットをさらに拡張することで最適解を見つけることが大切なので、そこは引き続きコンサルタントが担っていきます」

 そんなmeadas+は、当面はコンサルティングに組み合わせるオプションサービスとして提供される。

meadas+の機能

顧客が自社で使うためのSaaSモデルも展開

 一方meadas+では、他の機能や提供方法も予定している。そのひとつが、膨大な文献から未来を洞察して新事業アイデアを創出する機能「未来洞察アプローチ」だ。ここでは、まず将来変化の兆しを予見させるさまざまな事実情報の断片を大量に集める。そして、これらの情報を多角的な視点からつなぎ合わせて、将来変化のストーリーを構築する。この将来変化から新たに生まれる社会課題を予見し、それを解決する新事業アイデアへ落とし込む。こちらも、生成AIを活用したサービスとして開発を進める予定だ。

 「もしmeadas+を自社内で継続的に使いたいというニーズが一定以上出れば、SaaSモデルとしての展開も行う予定です。もともと同システムはJMASの知見のもと、入力された情報の外部漏洩を防ぐことや、生成AIに学習させないことなど、SaaSで求められる要件を満たせるよう設計されているため、状況を見ながら展開を図ります」

 また、企業が自社用のAIシステムを構築する際のサポートなど、meadas+を開発した知見を企業に提供することも計画している。

 果たしてmeadas+は、顧客に何をもたらすのか? 同部門がコンサルティングで常に目指すのが「技術を起点としたイノベーションを支援すること」で、まさにmeadas+もそれを体現するサービスといえる。

 「商品開発といえば、お客さまのニーズが先にあって、そこに合わせて技術やサービスを開発するのが一般的です。一方で研究の現場では、市場のニーズよりも技術が先に生まれることが少なくありません。そして歴史的に見ると、大きな社会インパクトをもたらした技術は、そんなふうに研究者の純粋で強い思いから生まれたものが多かったりします。

 だからこそ、技術と社会課題を結びつけ、活用されないまま眠る技術をできるだけ減らしたい。その先に、日本が技術立国としてまた飛躍する未来が訪れるのを、JMACが後押しできれば何よりです」

 元技術者であり、自身が開発した技術を事業化できなかった経験をもつ近藤にとって、技術を起点としたイノベーションの支援は、ライフワークでもある。その最新形であるmeadas+が今後どのような成長を遂げるのか、乞うご期待。




※本稿はJMAC発行の『Business Insights』80号(2026年1月)からの転載です。

近藤 晋

取締役

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