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変化の時代に問う組織の力 ~生成AI時代に求められる組織変革の原点~

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

生成AI時代の只中に新しい一年を迎え、変わる社会における組織の在り方を改めて問い直してみたい。

変化は、私たちに何を問いかけているのか

映画『Pay It Forward』の中で、社会科の教師は生徒にこう問いかける。

“Think of an idea to change our world — and put it into action.”

そして対話の中で、繰り返し投げかけられるのが、

“What does that mean to us?”

という問いである。

世界を変えるとは何か。それは「私にとって」「私たちにとって」どんな意味をもつのか。四半世紀前に投げかけられたこの問いは、今の時代の私たちにも、そのまま十分にあてはまるだろう。変化が加速する今の時代において、むしろ切実さを増しているように思う。

社会課題は大きく、一般解は見えにくい。だからこそ問われているのは、万能な答えではなく、この変化を、自分ごととしてどう意味づけるかという姿勢ではないだろうか。

変化の時代において、組織変革とは、新しい仕組みや技術を導入すること以上に、人が「問い直す状態」をどうつくるかにかかっている。生成AIをはじめとする技術の進化は、仕事のあり方を大きく前に進めている。その一方で、そのスピードに適応する過程で、私たちは何を見て、何を見なくなっているのだろうか。

この問いは、やがて職場の現実の見え方や、生産性の捉え方へとつながっていく。

職場で起きている現実を、どう見るか

では、職場の現実はどう見えているのか。現代の職場には、すでに一つの「現実」が横たわっている。業界構造の変化、AI導入による自動化、競争の加速、成果主義の浸透、働き方の多様化等、これらはもはや前提条件として受け止めざるを得ない環境である。

こうした現実を直視することは、生き残りのために不可欠だ。しかし同時に、過度な適応は、個々人の分断や孤立を生みやすい側面も持っている。成果を求め続ける構造の中で、人は満たされにくくなり、組織としても持続性を失うリスクを内包していく。

筆者も、こうした違和感を感じることがあるが、実際、多くの職場で次のような感覚が語られる。

  • 業務成果は出しているはずなのに、疲弊している
  • 技術は進歩しているはずなのに、創造性や達成感が枯れていく
  • 組織は前進しているのに、その意味や意義が見えにくくなる

この違和感を読み解くためには、現実を片方の視点だけでなく、二つの視点から捉える必要があるだろう。ひとつは、競争や変化が加速する社会をそのまま捉えるフローの現実直視。もうひとつは、人が本来持っている感情や能力、変わらない価値に目を向けるストックの現実直視である。

両眼で見てみると、いま起きている問題は、急激に加速するフローが、ストックを踏み越えてしまっている状態とも言える。慌ただしさの中で埋もれてしまった「変わらないもの」を、あらためて直視する力が、いま職場に求められているのではないだろうか。

人類が積み重ねてきた、変わらない力

人間社会は、環境や技術の変化に応じて、競争や争いを繰り返してきた。一方で、人間本来の幸せや行動の原理は、競争ではなく、他者との共感や関係性に基づき形成されてきた。

こうした能力は、人類の誕生以来受け継がれてきた、 人類にとって不変の「ストック」といえるだろう。人間らしくあるための力、互いに感情を共有する能力、仲間の中で協働する力、非言語的な理解や場の空気を読む力、これらが日々の組織活動の土台となっている。

たとえば、

  • チームで意見が食い違っても、感情や関係性を踏まえて調整し、前に進める
  • メンバーの気づかいによって、誰も言葉にしなかった課題に気づき、改善につなげる
  • プロジェクトの途中で壁にぶつかっても、非言語的なコミュニケーションにより協力体制が自然に生まれる

こうした行動も、私たちの中にある不変の力、つまりストックの現れである。

技術の進化がフローを加速させる現代においても、このストックの力を呼び覚まさなければ、人は疲弊し、組織は意味や意義を感じにくくなる。

これからの生産性は、どこで測るのか

これからの時代、生産性の意味も変わりつつある。
単に業務を効率的に進めるだけではなく、仕事を通じて本人にどんな価値が生まれるのか。

1992年、30年以上前に、日本能率協会は「時間生産性」という概念を提言した。

時間生産性 =(仕事成果 + 本人成果)÷ 時間

ここでいう「本人成果」とは、仕事を通じて本人が得た能力や充実感、成長や自信なども含めて捉える考え方であり、今の時代にも通じる視点を備えているといえるだろう。

現代では、生成AIやさまざまな技術によって、仕事のフローはこれまで以上に加速している。しかし、スピードや効率だけに意識が向かうと、本人にとっての価値や学びが埋もれてしまう。真の生産性は、技術や仕組みの効率だけではなく、人が「考え、学び、感じる」時間にこそ生まれる。

本人の中に生まれる価値【面白さ、充実感、自信、成長】を組織としてどう支えるか。
こうした本人成果に焦点をあてた時間生産性の向上こそ、現代の組織が意識して高めていくべき重要なテーマとなるだろう。

これからの組織に求められるもの

ここで、これからの組織変革を考えるうえで、意識しておきたい本質的な視点を提示したい。

1. 「意味を問い直す」力を組織に備える

答えはAIが出してくれる時代。だからこそ、組織の力は「答え」ではなく「問い」にある。人が自ら考えたくなる状態をどうつくるかが、知的エネルギーを解放し、行動を生み出す原動力となるはずだ。

2. 人の不変的な現実を直視する

環境も産業構造も変わり続けるが、人間の知的・感情的特性、根源的欲求は変わらない。これを組織の前提として意識することで、同じ時間・同じ仕事でも生産性の質は変わってくるだろう。ここでいう生産性とは、業務成果だけでなく、本人価値を含む時間生産性である。

3. 利己と利他の循環を回す

働く意味や価値を個人が定め、表明する時代。個人の利己は、仲間との対話や衝突を経て昇華され、結果として利他につながる。この循環を回すことが、組織の魂や倫理観を次の行動や判断へとつなげるはずだ。

まずは一人ひとりが自らに問いかけること

“What does that mean to us?”

この問いこそ、これからの組織変革を確実に動かす原動力になるだろう。

  

引用:社団法人日本能率協会『時間生産性向上に関する提言』(1992年)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jma.or.jp/img/pdf-teigen/teigen_1992.pdf

   

参考:山極壽一 ほかの研究(人類進化史・霊長類研究に基づく共感行動の研究)
直接引用はしていないが、共感や協働行動の形成に関する示唆として参考にした。

星野 誠

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

技術者や事業スタッフの知的生産性向上と職場活性化を専門としている。知的生産性を妨げるさまざまな問題が絡み合う職場に飛び込み、日常業務の仕事のやり方を具体的に変えていくコンサルティングを実践。500チーム以上の職場変革支援の経験から、やらされ感でなく自分たちで自立して変革を進めるための考え方と実践手法を日々実践・研究している。特に、製造業の開発設計/技術部門、事業スタッフ部門における変革活動の支援経験多数。

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