課題が多いオンライン営業 対面営業でできたことができなくなる

2021年10月 4日

坂田 英之(チーフ・コンサルタント)

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2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの影響は2021年度になっても続いている。ワークスタイルもコロナ前後でだいぶ変わった。オフィス用品通販のアスクルの調査によると、テレワーク制度について「恒久的な制度になる予定」と答えた企業の割合が、2020年5月は10.9%だったが2021年4月では24.0%になっている。それだけテレワーク=リモートワークが常態化してきているわけだ。当然、営業分野でも緊急避難的に行われたオンライン営業がテレワーク同様に常態化している。

本稿では、私のコンサルティング経験を踏まえて、対面からオンラインが常態化しつつある営業がどう変化したか、定量面と定性面から述べてみる。

不成約商談ではクロージングワードが大幅減

定量面から見ていこう。ここではコグニティ株式会社の調査結果を紹介したい。同社は文脈解析技術(知識表現フレームワーク)を有していて、その技術を商談トーク解析に応用している(わかりやすく言えば、商談トークをAIで解析するサービスを提供している会社である)。その会社が対面営業とオンライン営業の商談トークを解析した結果、以下のことがわかった。

①商談時間と話量

・1回の商談時間は対面営業53分→オンライン営業47分に減少
・話量(文字量)は1万6000語→1万7500語に増加

皆さんも経験があると思うが、オンライン営業の場合、対面営業と比べると事務的になる傾向があり、雑談が減る。画面を見続ける(見ていなくとも聞くことに集中する)ためか、疲労度が増す。その結果として、どうしても商談時間は短くなる。

一方、(画面共有をしている場合はとくに)相手の反応が読みにくいので、話す量が多くなる。私も経験があるが、相手の反応が見えない焦りから、ついついしゃべり過ぎてしまうのである。

②質問量

・買い手から質問量は1つの商談においての対面営業21.7回→オンライン営業17.7回に減少
・売り手からの質問量は12.3回→21.0回に増加

オンライン会議に参加していると、ミュートを解除してまで発言することに抵抗を感じることはないだろうか。それと同様で、商談の場でも対面営業と比べるとどうしても買い手は質問に対して消極的になる。

では売り手はどうかというと、前述のとおり、オンライン営業では相手の反応が読みにくい。場合によっては、買い手がカメラをオフにしている場合もある。売り手が反応を確かめる確実な方法は、質問(投げ掛け)である。そのため、対面営業と比べると質問の量は増えるのである。

③商談におけるクロージングワードの出現数

・不成約商談では対面営業11.3回→オンライン営業7.0回に減少
・成約した商談では12.7回→14.3回とわずかに増加

受注した商談では、対面営業とオンライン営業ではそれほど変わらないが、不成約商談ではクロージングワードが大幅に減っている。

それはなぜか。受注確度が高い(=声で買い手の購買サインがわかる)場合は、積極的にクロージングがかけられるが、そうでない場合はテストクロージングさえかけにくく、クロージングワードを出せないのである。営業パーソンは対面営業で、思っている以上に相手の表情や態度から購買サインを読んでいたことがうかがえる。

「なるほど」「そうですよね」の一言が出なくなる

次は定性面である。

こちらは、JMACがこれまでのオンライン営業支援に基づく経験からの分析である。通常、JMACがオンライン営業支援を行う場合、その企業の実態を調べるために、商談内容を録画(または録音)してもらい、その内容を分析する。以下は、さまざまな企業のオンライン商談トークを分析し、共通に見られた傾向である。

①共感的態度が少なくなる

これはすべての人に共通した傾向である。共感的態度、すなわち相づち、うなずきが減る。具体的には「なるほど」「そうですよね」の一言が出なくなる。

オンライン営業では相手との間合いがつかみにくい。対面では相手の表情や動作がわかり、会話の間がつかめていたものが、オンライン営業ではそうもいかず、相づちが減る。

うなずきについては、アイコンタクトが影響している。相手に目を見られていると、聞き手は反応を返さなければと思うが、アイコンタクトがないと、(無意識に)反応を返すことを怠ってしまうのである。

ちなみに、NHKの番組「ためしてガッテン」でオンライン会議を活性化させる方法として、うなずき係を決めるという方法を紹介していた。これはオンライン会議では、参加者が無意識で反応を返すのを怠っていることを、意識的に防ごうという方法だと解釈できる。

②会話を深められる人とそうでない人の差が出る

インタビュースキルにおいては、対面営業ではそれほど目立たなかったスキルがオンライン営業でははっきりした差として出てくる。

深掘り質問ができないのである。買い手が話をする、または質問をする。それに対して対面営業であったら(会話の間合いがわかるかせいか)、「それはどのような理由ですか?」「それはどのくらいですか?」など質問をして、深掘りして商談を進める。

ところが、オンライン営業では、インタビュースキルがない人は、そうした質問が少なくなる。その結果、表層的な会話で終始してしまい、会話は成立するが売り手にとっては情報収集が浅くなり、買い手にとっては印象に残らない商談になる。

③個別顧客に応じて提案ができる人とできない人の差が出る

これは上記②とも関連する。結局、深掘り質問ができていないため、個々の顧客の個別事情に応じた提案ができる人とできない人に差が出る。対面営業では深掘り質問ができて顧客の個別事情がつかめている人でも、オンライン営業では個別事情に応じた提案ができなくなる。

要は情報収集と提案が分断される傾向が強くなるというわけだ。この理由は、オンライン営業だと商談を先に先に(短く短く)しようとする意識が働くためである。その結果として、よほど意識していないと、情報収集した内容で、的を絞った説明をする、個別事情に特化して提案をするという意識が弱くなる。

④最後のまとめが少なくなる

全般的に見られる傾向で、それまでの商談の振り返りや次回までの宿題の確認などが抜ける人が多くなる。これは理由が不明である。個人的には、オンライン営業だからこそ必要なスキルではないかと思っているが、多くの営業パーソンでまとめが抜ける傾向が高い。


ここでは対面営業からオンライン営業への変化についてお伝えしてきた。オンライン営業では、対面営業とは異なったスキルが求められることを理解していただけただろうか。「どうすればスキルアップができるのか」については、今後のシリーズの中でまたお伝えしていこう。


sakata.png坂田 英之
日本能率協会コンサルティング チーフ・コンサルタント

1991年 日本能率協会コンサルティング入社。製造業、サービス業、情報 ・通信産業などのマーケティングおよび営業競争力革新を専門領域とする。営業マネジメントシステム開発、セールススキル評価および強化、営業部門情報武装化(SFA)支援、ソリューション営業実践支援などのコンサルティングの経験を有する。