• TOP
  • JMAC EYES
  • コロナ危機をテコに会社を根本から変革する3つの処方箋

コロナ危機をテコに会社を根本から変革する3つの処方箋

2020年9月 4日

栗栖 智宏
経営コンサルティング事業本部 経営戦略センター センター長 チーフ・コンサルタント

コロナ危機をテコに会社を根本から変革する3つの処方箋

新型コロナウィルスの影響は甚大である。2020年4月~6月期決算では、東証1部上場企業全体の売上高は前年同期比2割減。純利益は6割減となった。およそ3分の1の企業が純損失を計上している。Beforeコロナ時代は「攻めの経営」だったが、Withコロナ時代は終わりが見えない危機と同居しつつ「耐える経営」へと大きく180度転換した。

一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)というワードの氾濫に象徴されるように、企業活動の変革の機運は大きく高まっている。テレワークの浸透もその1つだろう。社員がオフィスに一堂に会して仕事をする。その前提から問われている。これは象徴的な事象の1つに過ぎないが、企業活動のあらゆる前提を根本から問い直す機会になっている。

このコロナ危機に耐えるとともに、再成長の機会とするための「3つの処方箋」を示したい。

処方箋1:コスト構造の総点検と聖域なき意思決定

今こそパンドラの箱を開けるときである。事業別のコスト構造を総点検し、改革を先送りにしていた不採算事業や、当初のミッションを果たせないまま放置された不良資産など、負の遺産を一掃すべきである。

多くの企業ではすでに緊急策として、不要不急の費用の抑制策を取っていると推測される。しかし、それは急場を凌ぐ一時策に過ぎない。経営を短期的に維持しつつ、将来に向けた体質転換に踏み込むべきである。そのためには事業別・製品別の採算評価を行い、各事業が属する事業環境の成り行き評価を踏まえ、収益構造改革を図る事業を特定し、撤退や事業譲渡などあらゆる選択肢を排除せず、検討すべきである。

また、採算が取れている事業でも売上高減少により収益力は大きく低下している。今後、いつ終わるとも予測できないWithコロナを生き抜くためのコスト構造を根本から構築すべきである。

売上面では製品別採算性評価を踏まえ、より収益力の高い製品への営業リソース投入を図るべきである。同時に受注時の利益率管理を徹底し、好況期に許された「政策的判断」という免罪符に基づく値引き受注を早期に見直すタイミングにある。

コスト面では損益分岐点を下げるために、購入品の転注や外注費の取り込み、自動化・省人化による労務費抑制など、費用特性を踏まえつつ、好況期には取れなかった手法まで踏み込んだ施策立案が求められる。

処方箋2:前提を捨てる。ゼロリセットでビジネスを組み立てる

営業方針やコストダウン施策を立案するうえでとくに重要な点は、過去の常識、不文律、しがらみとの決別である。改革施策の検討では、現状から改善アイデアを発想するリサーチアプローチ型ではなく、ニューノーマルの時代に沿ったビジネスをゼロからつくり上げるデザインアプローチ型で志向すべきである。

つまり、新しい生活様式に即した、新しいビジネスをゼロリセットで組み立てる発想である。テレワークによる在宅勤務の定着は、駅前一等地の全国営業拠点の集約、大規模な開発拠点の必要性を根本から見直す機会となる。たとえば、営業活動を直行直帰型の訪問営業とインサイドセールスを組み合わせたハイブリッド型に切り替えることが考えられる。これにより、従来の客先への訪問移動時間が圧縮され、営業の生産性向上が期待される。

また、現社員の働き方に限らず、採用活動においても、完全テレワークを推進することで、地理的制約がなく、日本全国を採用対象エリアにすることが可能となる。全国の地元で働きたい優秀な人材を採用できるチャンスとなる。とくに間接部門業務やソフトウェア業界のエンジニア採用などでは、完全テレワーク型と親和性が高いと考えられる。

間接業務においても改革余地は大きい。大企業においてもいまだにFAX受注や紙資料と印鑑による承認フローなど、アナログ業務が残っており、間接業務の生産性向上を妨げている。これまで各職場の個別事情で進まなかった業務をゼロベースで見直すべきである。事業別の業務の特殊性や担当者別の個別業務を標準業務フローにまとめ、システム化を通じて生産性向上を図ってもらいたい。

処方箋3:現場リーダーを抜擢し、次世代経営人材を育てる

ここまで述べてきた改革活動は、社長および経営陣がリーダーシップを発揮し、牽引していくべきである。これまで意思決定を先送りしてきた事項、曖昧にしてきた事項に白黒の判断を付けることができるのは、経営の最終責任を担う社長しかいないからである。また、改革の推進には経営から随時会社の目指すべき方向性を、社員に丁寧に説明する機会を設けることが望ましい。

とくに業績が悪化した企業では、社員は企業の先行きが見えないことに不安を感じる。そしてトップがその先行きを示さないことに疑心暗鬼になる。最悪、社内で業績悪化の"犯人捜し"が始まり、人心が会社から離れていく。そうなる前に、経営陣は会社が継続する必然性を説明するとともに、将来の成長に向けた改革方針を示す必要がある。

収益改革・再生シナリオ

改革の推進には部門の壁を越えて、意志ある現場リーダーを抜擢すべきである。会社や事業の将来を本気で考えるメンバーを結集し、3か月~半年ほどかけて会社の抜本的な改革マスタープランを作成する。これら活動を通じて抜擢された改革メンバーは、会社を経営の視点から俯瞰し、事業環境の将来動向について深く考察する。改革マスタープランを作成した後は、各職場で働く現場メンバーを巻き込み、改革を推進するリーダーとなる。もちろん、これら改革メンバーが活動しやすいように多方面の支援やメッセージを発信することが経営陣の役割となる。

筆者もリーマンショック時には多くの収益改革プロジェクトを支援した。これらの企業では、困難な改革を遂行し修羅場をくぐった改革メンバーは、今では多くが経営の中枢を担い、企業活動を牽引する立場で活躍されている。

この3つの処方箋は、今回のコロナ危機をより強い会社に変える機会とするための必須条件と考える。コロナ危機で不確実性が高まる事業環境を、会社を根本から変革する好機と捉えてみてはいかがだろうか。

コンサルタントプロフィール

栗栖 智宏

経営コンサルティング事業本部 経営戦略センター センター長 チーフ・コンサルタント

JMAC入社以来戦略コンサルタントとして10数年の経験を持ち、100社以上の企業への支援実績を有している。専門テーマは、中長期経営計画策定・事業戦略、新規事業企画、業務改革(BPR)など。コンサルティングの現場で培った経験とメソッドを活かし、若手~経営幹部まで幅広い階層での研修実績経験がある。

関連情報

JMAC EYESトップ

最新記事