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IEなくして飛躍的な生産性向上は実現しない

2017年8月 4日

〜生産性向上の原理原則はIE(インダストリアル・エンジニアリング)である!〜

小田 哲
IE推進室 室長 チーフ・コンサルタント

飛躍的な生産性向上が豊かな暮らしを実現させる

jmaceyes_oda_01p.png 「働き方改革」という名のもとで日本は今、人が人間らしく暮らせる新しい働き方や制度を模索しています。「ワーク・ライフ・バランス」「クオリティー・オブ・ライフ」「プレミアム・フライデー」などは、個人の自由な時間を増やしてより豊かに暮らしたいという価値観の表れではないでしょうか。また「裁量労働制」もまさに「時間の使い方」を自由にさせたいとする企業と個人の契約のような制度と言えます。

 いずれにしろ、これらの根底にあるのは「精神的にも物質的にも人間らしく豊に暮らしたい」という強い願望からきています。したがって、「働き方改革」という取組みには誰もが大いに期待しています。しかし、「働き方改革」を成功させ、真に豊かになるためには"あること"の達成が必要不可欠となります。

それは「生産性の飛躍的な向上」です。

アメリカの豊かさは高い生産性によるもの

 話しは少し変わりますが、実はアメリカという国はおよそ100年以上も前に国をあげてこの問題に正面から取り組んでいます。第26代アメリカ大統領のルーズベルトは「国民の効率という大きな問題」、これに取り組むことが「物質的な豊かさ」をもたらすと述べています。そして日常的な振る舞いにおけるほぼすべてが非効率であるせいで、国全体が大いなる損失を被っているとまで言っています。アメリカという国は貧富の格差が大きいとも言われていますが、誰もが認める豊かな国であることは事実です。その理由はすでに100年以上も前から国民の生産性向上という意識が社会に深く浸透していたからにほかなりません。

 私は仕事で何度かアメリカの工場に行ったことがあります。工場で働く人はスタッフからワーカーまで含め、基本的にはいっさい残業はしません。またほぼ絶対に休日出勤もしません。その代わり仕事ではムダなことや過剰なことは極力しないという良い意味での手抜きのような行動習慣が根づいています。その根底にあるのは「時間意識」です。定時になったら仕事を終え、家族と大切な時間を過ごす。そのためにとにかく時間内に仕事を終わらせる、という強いこだわりがあります。日本人はちょっとくらいのオーバーワークやサービス残業は仕方ないという考えの人が多いようですが、私が付き合ったことがあるアメリカ人にはそういう発想の人は皆無でした。

日本の生産性向上は大きな課題

 話を日本に戻しましょう。日本人は豊かになりたいと願う一方で、社会的にはきわめて深刻な状況に直面しています。それは「少子高齢化社会」という現実です。しかし残念ながら「少子高齢化」という言葉だけがひとり歩きして、この問題を解決するために「生産性の向上」という切り口での政策立案や研究活動への取組みは少なかったように感じます。ここにきて最近やっと「国の生産性向上」という言葉が政府から発せられるようになりました。しかし、国の生産性を抜本的に向上させる政策立案は今のところまだ確立できていないように思えます。

 この先平均寿命が伸びていくため、生産人口一人当たりが負担する社会保障コストは増加する一方です。つまり、一人当たりの生産高や付加価値創出量を飛躍的に高めない限り、今の日本が求めている時間的にも物質的にも豊かな暮らしというものは実現できないことになります。豊かな暮らしを実現させるためには、生産性を飛躍的に高めることが必要です。生産性を飛躍的に高めるためには、従来の考えやシステムを大きく変えなければなりません。

従来の考え方やシステムでは大きな生産性向上は期待できない

 少し極端な例で話をします。たとえば国際的な取引があった場合、円をドルに買えて支払ったり、ドルを受け取って円と交換したりするなど、そこには「交換」という価値を生まない工程(仕事)が発生ます。であれば、日本の法定通貨を「円」から「ドル」に変えてしまえば、これらの交換という工程はなくてすみます。つまり仕事が半分に減り、時間も半分に減るということです。浮いた時間は別の価値を生み出すことに使えます。さらには紙幣や硬貨という「お金」を電子化したり、近年著しく普及している「暗号通貨」に変えたりすることで、送金や決済といった仕事の手間はかなり減ることが期待できます。さらに、紙幣や貨幣を製造するという仕事もなくなるので、その分の時間やコストは新たな価値の創造に向けることができるし、環境負荷も大きく低減します。

 このように考え方やシステムを根本的に見直すことによって、飛躍的に生産性を伸ばすことが可能になります。それを可能にするのがIEです。IEは生産現場の動作改善や工程改善のみならず、人の活動に関わるすべての分野に導入することができます。

IEは20世紀最大の知的産物

jmaceyes_oda_02p.png では、ここからIEについて少し説明を加えたいと思います。

 IEは1900年頃にアメリカでフレデリック・F・テーラーという実務家によって生み出されたマネジメント手法です。世界的に著名な経済学者であるP・F・ドラッガーは、

「フレデリック・F・テーラーこそ、仕事が体系的な観察と研究に値するものとした最初の人だった。そして何よりも、20世紀において、先進国における一般人の生活をかつての富者よりも高い水準にまで引き上げることになった豊かさの増大は、このテーラーのサイエンティフィック・マネジメント(科学的管理法)のおかげだった」

と自身の著『マネジメント(上)』(ダイヤモンド社刊)で述べています。

 この科学的管理法と呼ばれたIEをいち早く導入して高い生産性を実現させたのが自動車メーカーのフォード社です。同社はフォードシステムという初めての「ライン生産方式」を実現させました。フォード社は自動車の製造という作業の観察と研究、工程の細分化と序列化を行い、「ライン作業方式」というものをつくり上げました。これにより自動車の生産コストを大幅に削減し、それまで富裕層しか所有できなかった自動車を大衆が買える自動車へと変えることに成功しました。

 日本ではアメリカより少し遅れること1911年(明治44年)、池田藤四郎氏の『無益の手数を除く秘策』と題する書籍により、テーラーシステムが日本に紹介されました。テーラーシステムは呉海軍工廠、鉄道省で導入され、その後「科学的管理手法」として国家的能率運動へと発展しました。ここに重要な視点があります。それは「無益の手数を除く」ということです。つまり価値に直結しないあらゆる人間の思考、行動、動作は徹底して取り除くということです。

IEの視点から企業経営を見る

 この「無益の手数を除く」という点について一般的な企業に当てはめて考えてみたいと思います。

 下図を見てください。企業は何かしらの理念や目的を達成するために存在しています。この理念および目的を達成する手段として製品やサービスを提供しています。そしてその製品やサービスを提供するために組織化された人や仕事が存在しています。これを自動車メーカーA社の例で説明すると次のようになります。

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 A社は「快適で安全な輸送手段を提供しつづけ社会の発展に貢献する」ことを会社の理念・目的として掲げています。この理念・目的を達成する手段として乗用車、輸送用車両などを提供しています。IE的にはこのレベルにおいて、乗用車、輸送用車両の提供が会社の理念と目的の達成手段として「妥当であるか」「有効であるか」という見方をします。

 次に乗用車、輸送用車両などの提供に必要となる機能を発揮させるために人が組織化されます。このレベルではIE的には必要な機能が有効かつ効率的に発揮できる組織となっているかという見方をします。

 次のレベルでは組織が有効かつ効果的に機能を果たすための仕事や業務、作業が行われているかという見方をします。つまり企業理念および目的は、マネジメント・レベルが下がるにつれ、人の行動、動作へと細分化されてつながっていきます。

私たちの行動はムダだらけ

 人間のもっとも小さな行動単位は動作です。たとえば製品を組み立てるには、まず部品を取ります。このとき人は材料が置いてある場所まで歩いて移動し、手を伸ばし、つかみ、取り上げ、移動して、そしてその部品を組み付ける場所に位置決めします。人間が目で見て観測できる最小の単位がこのような人の「動作」です。ですからこの動作は会社の理念および目的を達成させることに直結したものでなければなりません。

 しかし実際はどうでしょうか。普段私たちが取っている行動や動作は、すべてがムダなく会社の理念や目的を達成するための仕事、製品やサービスに直結していると言えるでしょうか?

 このような見方をすると、普段の行動や動作はムダだらけと言っても過言ではありません。製品やサービスの付加価値に直結しない行動や動作はすべてムダであるという考えに基づき、こうしたムダを排除していく必要があります。それを実現できるのがIEなのです。

IEはあらゆる分野で必要とされている

 IEの活用は社員が企業においてどのマネジメント・レベルにあるかによって変わってきます。

 経営幹部は企業の理念や目的が社会に貢献しているかという見方が必要です。これによって会社が提供すべき製品やサービスが決まります。

 次に組織マネジメントを司る管理者層には、組織が良い製品やサービスを提供できるようコントロールすることが求められます。実務面のマネジメントを司る管理者には、実務担当者の行動や動作のムダを排除して、業務が有効的かつ効率的に製品やサービスの付加価値に直結するようコントロールする機能が求められます。そして末端の実務担当者は決められた業務や作業のみを、決められたとおりに実行する行動や動作が求められます。

 このように、IEはまさに企業の理念や目的を最終的な人の動作レベルにまで展開し、ムダな手数を除き有効かつ効率的に実現させるマネジメント手法なのです。IEは一般的には「生産工学」などと訳されて使われることもありますが、製造業のみが対象ではなく、人が行っているあらゆる事業活動に適用することができます。

 話を冒頭の「働き方改革」に戻します。

 豊かさを実現させるには飛躍的な生産性向上を実現させることが不可欠です。今こそIE的な視点からすべてを見直す時期に来ていると私は考えます。また同時にIEのあらゆる産業分野への普及なくしては、日本社会の生産性を抜本的に向上させることはできないし、真の「働き方改革」も実現できないと考えます。

 JMACはこのIEを日本に導入し、現在も普及・発展に継続的に取り組んでいる唯一のコンサルティング・ファームです。ぜひ、お声がけいただければと思います。

コンサルタントプロフィール

小田 哲

IE推進室 室長 チーフ・コンサルタント

1990年 日本能率協会コンサルティング(JMAC)に入社。以降、IE(インダストリアル・エンジニアリング)を専門に企業や団体の生産性向上、コスト・ダウン活動などに取り組んでいる。また日本の労働人口減少、職場の高齢化に危機感を覚え、2000年頃より人間工学(エルゴノミクス)の導入と普及活動にも取り組む。インダストリアル・エンジニアリング、エルゴノミクスを中心に、日本人間工学会の認定人間工学専門家、MOSTインストラクター(標準時間設定)としても活躍している。

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