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地方の強さが日本を支える ~地方中小企業のイノベーションをどう創出するか~

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

人口減少、産業の空洞化、若者の流出など、地方創生においては多くの課題が語られている。しかし、地方が抱える本質的な課題は何なのであろうか。地方に魅力がない、秀でたものがないという訳ではないはずである。地方が持つ強みが、新たな「価値」へと転換されていないことこそが、最大の課題なのではないだろうか。

地方中小企業の現場に焦点をあててみると、一定の仕事量はあるものの価格競争から抜け出せない企業、技術には自信があるものの次にどこへ向かえばよいのか分からない企業が数多く存在する。しかし、地方の中小企業であっても、高い技術力、長年の現場で培われた改善ノウハウ、そして大企業にはない迅速な意思決定力といった強みを持つ企業は少なくない。地方にはまだ十分に活かされていない強みが眠っているのである。

にもかかわらず、なぜ地方中小企業の技術やノウハウはイノベーションに結びつきにくいのだろうか。なぜ、地域で積み重ねられてきた努力は、実を結ぶ前に終わることが多いのだろうか。

技術はある、しかし次の飯のタネが見つけられない

地方中小企業には、「変革の体力がない」、「世の中の変化に対応できていない」といったイメージがつきまとう。しかし、特定分野で独創性の高い技術シーズを持ち、現場を深く理解し、柔軟な意思決定ができる企業も多い。それでも多くの企業が、自社の価値をうまく言語化できず、技術の新たな用途を見出せず、新市場の開拓に踏み出せないでいる。

背景には、特定顧客への依存、異分野市場に対する理解不足、後継者問題といった課題がある。経営層は危機感を抱いているものの、新たなことを起こすために、何から始めればよいのか悩んでいることが多い。重要なのは、企業の能力不足の問題だけではないという点である。

多くの場合、問題は「挑戦する意欲がないこと」ではなく「挑戦のやり方を知らないこと」にある。イノベーションの創出に対し、個々の企業が孤立して悩み続けているのが現状ではないだろうか。

良い出会いはある、しかし事業化には至らない

近年、国や自治体の取り組みにより、交流イベント、補助金制度、実証支援事業など、地方での新たな挑戦を後押しする仕組みは確実に増えている。企業同士、企業と大学、企業とスタートアップが出会う機会も以前より多くなった。

しかし、「名刺交換で終わる」「研究開発で終わる」「実証で終わり実装に至らない」といったケースが後を絶たない。国や自治体の取り組みが単年度施策であることや、事業化フェーズまで伴走しない施策になっていることなど、制度面の課題も存在する。

だが、より本質的な問題は、研究開発の成果や新たな出会いを「事業」に転換する体制が地方に整っていないことではないだろうか。研究成果をどの市場でどのような価値として提供するのかを描く事業計画の立案、様々な出会いのゴールを定める視点、実装に向けた課題整理など、イノベーションをプロデュースする役割が、地方には圧倒的に足りていないと感じる。

イノベーションの種はある、しかしその価値が見えていない

多くの地方中小企業は、すでに独自技術というイノベーションの種を持っていると思われる。足りないのは、社会課題との接続、他分野への用途転換の発想、そして技術の価値を第三者にも伝わる形で見える化することである。

イノベーションとは、必ずしもゼロから新しいモノを生み出すことだけではない。既存技術の使われ方や意味を変えることでも、新たな価値は生まれイノベーションにつながる。

しかし、既存技術が何の為の手段となり得るのかを顧客の視点から新たに発想することは、既存技術の現在の用途に詳しければ詳しいほど固定観念がある為に難しい。また、技術の魅力を社内外に伝えるために技術が実現する将来の顧客メリットを描くことは、受託が中心の地方中小企業においては従来とは異なる思考が必要となってくる。

その結果、社内で理解を得られなかったり、既存顧客への影響を懸念して踏み出せなかったりと挑戦を辞めてしまう企業も多い。だからこそ、個々の企業の努力だけにイノベーションを委ねるのではなく、技術と社会課題をつなぎ合わせ、技術を顧客価値に変換するプロデューサー的な役割が必要とされている。

まとめ

地方中小企業には、すでに技術があり、すでに強みがある。足りないのは、社会課題や顧客価値に転換できる第三者の存在である。

地方で挑戦することは決して不利なことではない。「小さく試せること」、「顔が見える関係性」、「まだ掘り起こされていない技術が数多く存在すること」は、むしろ大きな可能性を秘めていると考えている。

地方の未来は、外から持ち込まれるものではない。すでに地方に根づく中小企業の技術とノウハウの中にある。地方創生の鍵は、何かを「再生」することではなく、すでにある価値をどう「再編集」するかにあるのではなかろうか。

野田 真吾

R&Dコンサルティング事業本部
チーフ・コンサルタント

ソフトウェア開発企業を経て、日本能率協会コンサルティング入社。企業の研究開発部門を中心に、技術・商品戦略、開発設計プロセス、組織・人材のマネジメントなど幅広い領域においてコンサルティングに取り組んでいる。近年はオープンイノベーションによる地方創生の支援や成長産業であるエネルギーに特化した支援に注力している。

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