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第2回 未来からのバックキャスト「ミニマム人員設計」による生産性向上

コラム

2026.07.27

人手不足を突破する『人が活きる』工場づくり

前回のコラムでは、人手不足がもたらす「負のサイクル」の恐ろしさと、それを断ち切るための「工場マネジメント」の全体像について解説した。今回はその続編として、生産性向上の視点から、とりわけ「人員適正化」へのアプローチに迫りたい。 

地域の製造現場を取り巻く環境を見ても、例えば北陸三県においては、全国と比較して離職率が低い傾向にある一方で、労働人口の減少予測は厳しく、一人当たり付加価値が高まらないことに課題を残している。つまり、定着率の良さに甘んじることなく、今いる人材でいかに付加価値を高め、将来を見据えた体制を構築していくことが急務なのだ。体制を考える際は直接作業者のみならず間接作業者(スタッフ)や外注先などを含めた全体像を考えることが求められる。

本コラムでは、生産システムを対象とした生産性を向上させる4つの視点と、デジタル技術を活用した実践的な手法を紐解いていく。 

「機能維持」か「機能増強」か。人手不足が突きつける「2つの壁」

人手不足が製造現場に及ぼす影響は、大きく2種類あると考えている。どちらも企業経営を揺るがす深刻な問題であるが、それぞれで直面する「悩み」や「損失」、そして「取るべき打ち手」は全く異なるのである。 

1つ目が、従来の生産量や生産品目を維持できなくなる「機能の維持困難(事業継続リスク)」である。属人化や標準化の遅れにより「生産キャパシティの維持」自体が現場の切実な悩みとなり、放置すれば売上低下や最悪の場合は製品の製造中止(撤退)という致命的な損失を招いてしまう。このフェーズを脱するには、作業の標準化や作業効率化、小額投資で実施できるDX推進といった「足元の現場力の強化」が主な処方箋となる。 

そして2つ目が、市場の需要がありながらも増産に対応できない「機能増強の困難(成長制約)」である。ここでは「生産キャパシティの伸び悩み」が壁となり、絶好の成長機会を逃す機会損失や自社の競争力低下を引き起こす。このフェーズでは従来の延長線上ではなく、抜本的な工程設計の見直しや設備の自動化といった、より構造的・抜本的な改革が必要不可欠となる。 

人手不足の克服に向けては、自社の現場が現在どちらのフェーズで伸び悩んでいるのかを冷静に見極める必要がある。場当たり的な対処療法から脱却し、将来の事業構想を見据えた「あるべき姿」からバックキャストしたうえで、段階に応じた適切な打ち手を講じていくことが不可欠なのだ。

全体最適を見据えた「4つの視点」での生産システム評価

ミニマム人員設計を進める際、部分最適に陥らないためには生産システム全体を俯瞰する視点が不可欠である。具体的には、「工程設計(モノの流し方や標準化)」「生産管理(計画と制御の仕組み)」「実施効率(現場の遂行力)」「マネジメント・情報基盤(実績把握と是正の仕組み)」という4つの視点から網羅的に評価することが重要だ。

 これらの視点から現状を評価し、将来のあるべき姿とのギャップを定量化することで、初めて有効な打ち手が見えてくる。標準時間の未整備が課題なのか、あるいは計画変更が現場の属人的な調整に依存していることが問題なのか。自社の弱点を特定し、工程間の同期化やデジタル化による情報基盤の整備へと繋げていくのである。 

生産システムを網羅的に評価する4つの視点

生産システムを網羅的に評価する4つの視点

デジタル技術を活用した「現在地の把握」と「実態の見える化」 

前述した情報基盤の整備を進めるうえで、強力な武器となるのがAIやIoTをはじめとするデジタル技術である。例えば、複数アイテムが流れる混流ラインにおいて、従来の「勘と経験」に頼った人員配置や工数把握では、現場の実態を掴みきれていないケースが少なくない。 

最近の事例では、AIカメラによる画像分析を導入し、どのラインに何人が配置され、どの作業にどれだけの工数が投入されているかをリアルタイムかつ高精度に取得・分析する取り組みが進んでいる。これにより、従来は収集が困難だった実績データが精度高く可視化され、実態に則したボトルネックの特定や、製品別・作業者別の実績工数の正確な把握が可能となる。 

どれほど大きな目標を掲げても、足元の実態が曖昧であっては実効性のある改革は望めない。「あるべき姿」からバックキャストして将来の「適正人員(ミニマム人員)」を描き出し、その体制を確実に実現していくためにも、この正確な「現在地」の把握こそが揺るぎない土台となるのだ。

おわりに

生産性向上は、単なるコスト削減や作業のスピードアップではない。将来の労働力減少を見据え、人がやるべき付加価値の高い業務にリソースを集中させるための戦略的な投資である。前回のコラムで触れた「エンゲージメントの向上」や「魅力度の醸成」と、この「生産性向上」を両輪で回し続けることではじめて、持続的な成長を実現する正のサイクルが回り始める。

数十年先も市場で勝ち残る工場であるために、改めて自社の生産システムを4つの視点から点検し、次なる一手へ踏み出していただきたい。

小早川 怜志

生産革新コンサルティング事業本部
コンサルタント

大手自動車部品メーカーおよび自動車メーカーにて生産技術業務に従事した後に、JMACに入社。生産技術業務の経験を活かしながら、工場における生産性向上を目指したQCD改善を主な支援テーマとし、製造業を中心にコンサルティング活動を行っている。その他にも新工場建設支援や品質向上、自動化検討、スマートファクトリー企画構想、デジタルツイン基盤構築支援等のPJTにも参画している。

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