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【生成AIで研修の設計・運営をどう変えるか・前編】「With AI」のマインドセットと研修準備

コラム

2026.08.27

「もっと受講者の心に届く研修を企画したいが、日々の運営事務に追われ、受講者と向き合う時間がない」ーーそう悩む人財育成の担い手にとって、生成AIの進化は強力な追い風である。「風向きを変えることはできないけれど、いつでも自分の進みたい方向に帆を調整することはできる」という言葉の通り、この大きな変化をどう活かし、最高の研修環境を創造するか。

本稿では、この数十年における研修現場の劇的な変遷を振り返りつつ、AIをパートナーとして迎えるマインドセット、そして研修の準備段階における具体的なAI活用プロセスについて、内容を余すことなく紐解いていく。

時代変化の捉え方とワークスタイルの変容体験

この数十年で、研修をめぐるワークスタイルは以下のように劇的に変遷してきた。

アナログ時代(1992年〜) 

 OHP(オーバーヘッドプロジェクター)を使用。ワープロで清書し、物理的に切り貼りしてOHPシートに焼く雑務が中心

PC・デジタル化時代 

PC、電子メール、PowerPoint、プロジェクター、PDF配布の普及により、直前の修正やペーパーレス化が実現

オンライン時代(2020年〜) 

 コロナ禍を契機としたウェビナーの普及

生成AI時代(現在)

生成AIを「新たな業務パートナー(With AI)」として活用し、企画構想・パーソナライズ・効果測定といった高付加価値業務へシフトする

この「With AI」という新たなステージにおいて、研修事務局が目指すべき姿やマインドセットは以下の3点に集約される。

  • 「強い追い風」としての生成AI : もっと良い研修をしたいと願う事務局にとって、AIは「やりたかったこと」を実現する最大のツールである。
  • 言葉の引用(アジャスト・マイ・セイル) : 「 風向きを変えることはできないけれど、いつでも自分の進みたい方向に帆を調整することはできる 」。AIの進化をどう活かし、最高の研修を作るかは、事務局側の腕次第である。
  • 「作業」から「人間力」へのシフト : 事務作業や定型業務はAIに任せ、事務局は受講生とのコミュニケーションや対人支援(人間力の勝負)にエネルギーを注ぐ。

受講者・講師・事務局がAIで得る「成長」

AIの導入は、単なる業務効率化にとどまらず、研修に関わるすべての人の能力を一段上へと引き上げる。受講者には一人ひとりの熟達度に合わせた高解像度の個別学習を可能にし、講師や事務局には定型業務からの解放とAI分析による客観的なフィードバックを通じて、プロフェッショナルとしての専門性を磨く環境をもたらす。

以下に、受講者・講師・事務局がそれぞれAIを活用して実現する「成長」の具体像を整理した。

 【受講者】個々人の成長を意識する(個別化)

AIを用いることで、受講者一人ひとりに最適化された学びを提供できる。

個別カリキュラム 

理解している受講者には応用ケーススタディを、つまずいている受講者には基礎の補足教材を提供するなど、柔軟に個別化する。

AI伴走型コーチ

24時間いつでも質問回答や1on1ロールプレイング、コーチングの相手を務めるチャットボットの構築。

パーソナライズ型演習

受講者の部署、職種、スキルレベルに応じた実践課題をAIが作成し、提出レポートに対して個別のアドバイスを自動提示する。

コンテンツの個分け・即時アップデート

「若手向け」「管理職向け」「技術職向け」など、対象に合わせた表現や事例へ即時に書き換える。

人的フォローの集中

事務局は、AIによる観察で「本当に個別フォローが必要な受講者」を見極め、対人コミュニケーションに注力する。

【講師・事務局】自身の成長を意識する

AIを客観的なフィードバックやシミュレーションのパートナーとして活用することで、講師自身の指導スキルを磨き、プロとしての専門性をさらに高めることができる。

指導スキルの向上(講師)

講義ログや録音データ(文字起こし)からAIが厳しくフィードバック(AIリフレクション)を行う。また、模擬講義における難易度の高いQ&Aトレーニングを事前に行う。

企画・コンサルティング力の引き上げ(事務局)

経営課題や現場の生々しいニーズからAIが研修企画のたたき台を生成する。

データ駆動型の効果測定

アンケートの定性コメントと受講後の行動変容データをかけ合わせ、「どの要素が行動変容に繋がったか」をクロス分析する。

属人化の排除と「組織知」の蓄積

トラブル対応や講師交渉、受講者相談の履歴を言語化して暗黙知を形式知化する。

定型業務の自動化

案内文作成、Q&A対応、リマインドなどの定型業務をAIで自動化し、高度業務へとシフトする。

研修の【準備段階】における生成AIの具体的な活用法

研修の「企画・設計」「事前準備」「当日運営」「事後・評価」の全フェーズにおいて、AIをフル活用してクオリティを高めることができる。ここではまず、研修当日を迎えるまでの「準備段階(Before)」における3つのフェーズでの具体的な活用方法を解説する。

① 企画・設計(質の高い設計)

  • ペルソナ構築 : ターゲット(例:「入社5〜7年目のリーダー候補が後輩指導で直面するリアルな悩みや心理的ハードル」)のプロファイルを詳細化し、解像度を上げる。
  • コンセプト・アジェンダ設計 : 時間配分や学習要素の骨組みをAIと壁打ちしながら設計する。
  • リアルな演習課題(ケーススタディ)の作成 : 設定の作成(例:「度重なる仕様変更による納期遅延。疲弊したメンバー。PMとして取るべき3つのアクション」)をAIが自動生成する。
  • ルーブリック(評価基準表)の作成 : 理解度を測るための具体的な行動レベル(レベル1〜4など)をテキストで記述させる。

② 参加者募集(訴求と自動化の両立)

  • 訴求ポイントの整理 : 「受講によって何が楽になるか」「どんなスキルが身につくか」といったベネフィットを言語化する。
  • マルチ展開 : メール用(初回・リマインドなど)や、社内ポータル・掲示板用(キャッチコピー重視)など、チャネル別に最適化された案内文を生成する。
  • 案内文のパーソナライズ : 受講者向け(業務効率化をアピール)と、上司向け(部下を参加させるメリットを訴求)で文面を作り分ける。
  • FAQ自動作成 : 事前の問い合わせ(「初心者でもついていけるか?」など)を想定した問答集を作成し、チャットボットに整備する。

③ 教材・テキスト作成(図解の自動化と人間独自の価値付加)

  • アウトラインから原稿のたたき台生成 : 本文やスクリプトのテキスト、専門用語の平易化、レコーディング音声の文字起こしからテキスト化を行う。
  • スライドデザイン・図解の自動化 : 生成テキストから図やイラストをAIで生成する。
  • 人間の注力ポイント(AIのアドバイス) : AIが作った一般的なテキストに対して、 「講師や事務局自身の独自エピソード(体験談)」を人間が書き加えること で、初めて価値ある生きたテキストへと昇華される。

  

※本コラムは、JMAC開催ウェビナー『続・研修事務局 of 心得(AI活用編)~生成AIで研修ライフサイクルのクオリティを高める方法~』の内容をもとに再構成したものです。

塚松 一也

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント

R&Dの現場で研究者・技術者集団を対象に、ナレッジマネジメントやプロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとして、魅力的なありたい姿を真摯に構想し、現場の組織能力を信じて働きかけ、じっくりと変革を促すコンサルティングスタイルがモットー。ていねいな説明、わかりやすい資料づくりをこころがけている。

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