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第3回 「人が集まる・辞めない会社」は何が違うのか。見栄えに頼らない「組織の魅力」のつくり方

コラム

2026.09.04

人手不足を突破する『人が活きる』工場づくり

工場の魅力

「人が集まらない」「せっかく採用してもすぐに辞めてしまう」——。人手不足が深刻化する昨今、このような悩みを抱える企業は後を絶たない。労働力人口の減少が避けられない中、「自社の魅力とは一体何なのか」「どうすれば人が定着し、人が集まる会社にできるのか」と頭を抱える企業は多いはずだ。 本コラムでは、企業が陥りがちな採用・定着の落とし穴を紐解き、従業員にとって真に魅力的な組織をつくるための6つの基本的な要素について解説する。

「人が集まらない・辞めていく」負のスパイラルを断ち切る

地方の製造業を中心に、求人倍率が極めて高い過酷な採用市場に直面している現場は多い。「なんとか人を集めなければ」と、求人媒体への出稿を増やし、合同企業説明会や高校訪問に奔走するなど、懸命な努力を重ねている企業がほとんどだろう。 しかし、どれほど採用活動に力を注いでも、なかなか応募には繋がらない。それどころか、「新しい人材が入ってこないのに、現場を支えてきたベテラン作業員や、将来を嘱望していた数少ない若手が辞めていく」という、さらに深刻な事態に直面している企業も少なくない。

必死の努力が報われず、残された従業員に負荷が集中し、組織全体が疲弊する。こうした負のサイクルは、その場しのぎの対策では断ち切ることはできない。まず何よりも、新しく入る人や今いる人が「ここで働きたい」「長く働いていきたい」と感じるような「企業の魅力」を上げることが、組織を持続させる有効な手段である。

自社に潜む不満を直視する。企業魅力を形づくる「6つの要素」

企業が人手不足を根本的に克服し、今いる貴重な人材に長く活躍してもらうためには、外部へのアピール以上に、他でもない「今働いている従業員自身」が自社を魅力的に感じている状態を作らなければならない。 
では、従業員にとって魅力度が高い状態とはどのような状態か。それは、以下の「6つの要素」がそれぞれ満たされている状態と定義できる。

  1. 経営・組織運営:経営陣が従業員に信頼され、理念が共感されている。
  2. 組織風土:従業員が仕事へのやりがいや自身の成長を感じられる。
  3. 従業員環境・労働環境:ワークライフバランスなどの制度が整備され、働きやすい。
  4. 企業倫理(モラル):法令順守の意識が雇用形態を問わず全員に浸透している。
  5. 企業知名度・評判:社会から認知され、ここで働きたいと思われている。
  6. 成長性:業界の傾向を含め将来の見通しが明るく、安心して働ける。

なぜ、この6要素に分類して考える必要があるのか。それは、組織の魅力が単一の要因で決まるものではないからだ。 例えば、給与や休日などの「労働環境」が優れていても、現場の「組織風土」がギスギスしていれば人は離れていく。また、従業員本人が仕事に「やりがい」を感じていても、自社の「経営・組織運営」や「企業倫理」に疑問を持てば、将来を案じて退職を選んでしまうだろう。
さらに、上記の1~4が満たされていても、それを自社の魅力として社外に発信しきれておらず、「企業知名度・評判」が低い状態であったり、会社の業績や、業界自体の「成長性」が悪化していると、求職者の視界に入らない・入っても足切りをされてしまうことになる。

ひとくちに従業員の魅力度と言っても、それを網羅的に捉えなければ、組織のどこに穴が空いているのか、真の課題は見えてこないのだ。

6つの要素と魅力度および採用率・退職率の関係

6つの要素と魅力度および採用率・退職率の関係

「自社に欠けているピース」を特定し、正しく投資する

しかし、これら6つの要素がすべて満たされていると胸を張って言える企業はごく僅かだろう。目に見えにくい自社の弱点を特定するためには、経営陣の思い込みを捨て、従業員へのヒアリングやアンケート調査、あるいは退職者の傾向分析などを通じて、自社がこれら「6つの要素」のどこでつまずいているのかをフラットに評価することが不可欠だ。

その際、アンケート等で従業員の主観を知ることに加え、実際の労働時間や休暇制度の有無が他社と比べてどうかといった、客観的・定量的な比較も合わせて実施したい。 この主観と客観をセットで見ることで、例えば「制度は整っているのに、従業員の満足度が低い」というギャップがあれば、問題は制度自体ではなく「現場で利用しづらい空気がある」等の運用面にあると特定できる。このように「二面性」の視点を持つことで、打つべき手立ての解像度は一層高まるはずだ。 

課題の所在が明確になれば、あとは自社の事業特性や現状に合わせたアプローチを実行していく段階となる。大切なのは、他社の成功事例や流行りの人事施策をむやみに導入していくことではない。「自社に欠けている魅力要素」をピンポイントで補い、強化することだ。働きやすさが課題であれば環境整備に投資し、やりがいが課題であれば評価基準や風土づくりを見直す。限られたリソースを正しい課題に投下してはじめて、施策は意味を持つ。

おわりに

「人が辞めてしまう」「人が採用できない」という負のサイクルを未対策のまま放置すれば、人員不足により事業継続そのものが困難になるリスクが待ち受けている。 企業の魅力向上は、一朝一夕に成し遂げられるものではない。しかし、自社の実態を6つの要素から客観的に見つめ直し、地道な改善施策を講じていくことで、従業員の満足度が醸成されていく。結果としてそれが外部への発信に繋がり、「人が定着し、人を採用できる企業」の実現へと結びつくのである。今こそ、組織の根幹にある「魅力」と向き合うタイミングではないだろうか。

山川 みちる

生産革新コンサルティング事業本部
コンサルタント

「財務(カネ目)」と「製造現場(モノ目)」を繋ぐ改善を志向し、財務・管理双方の会計領域改善と、IE手法を基本とした製造現場の改善に従事している。経営面を重視しつつ、机上の空論ではない、現場で実現可能な施策を提唱・実践する。

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