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第97回 たえまなき経営改革実現に向けて(6) ~経営改革人材づくりを事例で知る~

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

経営改革人材づくりについて、前回は、取り組みのポイントについて、ご説明しました。今回は、経営改革人材づくりの事例をご紹介します。サービス産業Nグループにおいて、経営力強化の一環として、経営者層を対象に取り組んだ事例を中心に、お話しします。

実践と研修の事例

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たえまなき経営改革の実現には、経営改革の実践面と人事面の2面から、経営改革人材づくりを進めなければならない、と前回お話ししました。上の表は、経営者層およびマネージャー層を対象とした事例です。

実践面におけるJ社の経営改革事例は、第12回でご紹介しました。同社は、グローバルに事業展開を推進する化学企業として、知られています。T社長は、事業の収益改革と共に、人材開発の同時実現を経営改革の目的としました。特に、事業展開をグローバルに進めるためには、ワンランク上の経営改革人材づくりが重要と考えました。

このようなことから、J社は、事業部長や関係会社トップに対しては、財務・事業・管理の3面から、統合的に経営改革を進める経営人材づくりを目標としました。また、部長や課長には、事業戦略を頭に入れて、技術・生産・営業などの機能戦略と具体化施策を発想できる人材を求めました。

このJ社では、モデル事業の経営改革実践を通じて、成果を確認したうえで全社展開を進める方法をとりました。全社展開にあたっては、中期経営計画システムや年度経営計画システムへの経営改革の反映を色濃く打ち出しましたが、経営会議や事業会議の場での真剣な討議がポイントとなりました。また、経営改革事務局とコンサルタントが、「経営改革実践ガイド」をまとめて、生きた教材として各事業の経営改革に役立てたことも有効でした。

サービス産業Nグループの事例

Nグループは、鉄道事業や小売事業に始まり、多くのサービス業を多角的に展開するグループ企業です。グループ企業各社の事業競争力強化と共に、経営人材開発が経営課題でした。グループ企業の各経営者は、財務・事業・管理の3面の統合経営改革能力が求められました。と同時に、現在の経営者だけでなく、次の経営者になる部長層の経営改革能力も、必要とされました。

1年目は20人、2年目は40人、3年目は60人、3年間で述べ120人の経営人材づくりを目標としました。また、グループ企業のサービス業は、多様な業種・業態を展開していましたが、サービス業の特性を織り込んだ、経営改革プログラムの開発と実践が、事前課題として想定されました。

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Nグループの経営改革人材づくりは、JMAグループが連携してご支援した研修事例です。上の図は、その進め方を示したものです。

経営改革研修は、事前研修と実践研修で構成されました。事前研修(3ヶ月)は、実践研修(6ヶ月)に入る前の学習段階と位置づけられました。その内容は、上図の通りです。グループトップの基調講演のキックオフ、2泊3日の集合研修(ケーススタディ研修と実践研修のオリエンテーション)、さらに経営改革に関する課題本の読破と通信教育の受講です。かなり密度の濃い内容ですが、経営者に要求される経営改革の意識醸成と知識確認が、ポイントとなりました。

実践研修は、グループ企業各社の経営改革に、文字通り実践的に取り組むものです。その内容は、上図のように、2泊3日の集合研修(経営改革マスタープラン策定)、さらに自社での経営改革マスタープランの具体化と実践です。必要に応じて、コンサルタントの個別相談を受けながら、グループ企業トップへの中間報告と最終発表に臨みます。

実践研修のポイントは、事業面の事業戦略の策定にあります。少子高齢化や情報化の進展、顧客満足の進化、雇用形態の多様化や定年延長など、経営環境変化に対応したビジネスモデル開発が求められていたからです。

忙しい経営者にとっては、頭では分かっていても、時間確保に対する抵抗感、葛藤がありました。また、成功体験をもった経営者にとっては、新しい知識や発想は刺激ではありましたが、意識改革が必要とされました。しかし、グループ企業トップの経営人材づくりに対する固い意志は揺るぐことなく、研修参加者に対する激励と称賛もあり、一人の脱落者もありませんでした。




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