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経営改革の知恵ぶくろ

第12回 J社の経営改革の場づくりに学ぶ

トップによるリーダーシップ発揮

今回は、経営改革の場づくりの例として、化学企業J社の経営改革活動をご紹介します。J社は、事業多角化展開とグローバル化を早くから推進してきた企業として知られています。しかし、一部、赤字事業も抱えていました。中でも、J社の1事業部と生産関係会社3社で展開しているこの事業は、ここ数年は収益低下による赤字が続いていました。このK事業は、自動車や情報機器の部品と物流システム資材の完成品などを開発・製造・販売する化製品加工事業です。J社のトップは、この事業の事業競争力改革をモデルに、低収益事業の経営改革を全社的に推進することを考えていました。また、事業部制の限界、事業競争力の改革、経営改革人材づくりの必要性も感じていたことから、トップは、K事業の事業部長・関係会社トップの主体性を基本にしながら、J社トップマネジメント(役員層)の支援を要請しました。同時に、今後の全社展開も考慮して、本社スタッフの支援や経営改革コンサルタントのノウハウ活用を、経営改革の事務局(経営企画室)に指示しました。

自己革新の限界を打破せよ

事業部制には、メリット、デメリットがあると思います。事業部制のメリットは、事業部メンバーが主体となって、事業戦略の策定から実行まで事業経営を統合的に行える点です。一方、トップマネジメントや本社スタッフが、事業経営を事業ラインだけの問題として事業部にまかせてしまい、事業転換期にあっても関与しようとしない点はデメリットと言えるでしょう。また、事業部だけで経営改革を遂行することにこだわりすぎて、他者のアドバイスや考えを受け付けない事業部長もいる点もデメリットです。J社のトップも、新しい事業部長を任命しながら、事業部単独の自己革新には限界を感じていたようです。そこで、「経営改革審議会」を組織化したのです。トップマネジメントが、事業部長や関係会社トップの経営改革案の説明を受けて、助言を行ったり他事業部の協力を要請したりする場としたのです。また、この「経営改革事務局」には経営企画室メンバーの他に、財務・人材開発・業務改革の専門スタッフを参加させました。

戦略・拡販・コストの連動

J社では、事業競争力を「事業戦略力×事業運営力」と捉えました。そこで、事業戦略を見直す場として「戦略競争力部会」、事業運営力を見直す場として「拡販競争力部会」と「コスト競争力部会」を設けました。「戦略競争部会」には、新任事業部長と生産関係会社トップ、技術・営業の部長を中心に、改革活動を支援する役員と事務局メンバーが参画し、事業戦略案を策定しました。この事業戦略案は、「経営改革審議会」で全社的視点から助言を受けて、最終決定に至ります。

一方、「拡販競争力部会」と「コスト競争力部会」は、事業部ラインの課長と若手メンバーを中心に構成されました。そこでは、事業戦略との関連づけをしながら、改革案を徹底的に検討しました。その後、改革案の骨子は「経営改革審議会」で報告され、事業戦略の具体的施策としてトップマネジメントの共通認識とされました。

黒字化と改革人材づくりの同時実現

J社K事業の経営改革の内容について詳細は割愛しますが、2年間にわたる経営改革の具体化と実行を経て、黒字化を達成しました。現在は、他社類似事業のM&Aにより、さらなる成長・発展をとげています。

同時に、経営改革を通じて改革人材づくりも進みました。事業の多角化をグローバルに展開していましたが、トップは、「事業経営力」を発揮できる事業部長や関係会社トップの人材が不足していると常々感じており、また、部長や課長にも、事業戦略を考慮しながら、技術・生産・営業などの機能戦略と具体化施策を柔軟に発想できる人材を求めていました。前回、真の経営改革には、現ポジションよりワンランク上をめざした改革人材づくりが必要だと述べました。今回のK事業の経営改革は、このワンランク上の人材開発が実現した成功例の一つだと言えるでしょう。改革活動の中で、それぞれの人材が以下のニーズに応えることで実現したのです。
  ・新任の事業部長や関係会社トップは、「経営改革審議会」や「戦略競争力部会」において
   全社的視点から事業戦略を練ることを求められる。
  ・技術・生産・営業の部長層は、「戦略競争力部会」で事業戦略の策定とともに
   機能戦略の策定が求められる。
  ・課長クラスと第一線の若手メンバーは、「拡販競争力部会」と「コスト競争力部会」において
   課・部門横断改革案を求められる。

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多くのお会社が、経営改革の真っ最中かと思います。このJ社の経営改革の場づくりを参考にしていただければ幸いです。

(シニア・コンサルタント 神奴 圭康)

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