経営改革の知恵ぶくろ

第35回 J社マーケティング志向の事業戦略研修

今回は、J社のマーケティング志向に基づく事業戦略策定の実践研修例を紹介します。
J社のマーケティング志向と事業戦略策定ストーリー、トップのリーダーシップ、事務局メンバーの経営改革活動にについてお話しします。

経営幹部の事業戦略策定力を強化する

J社は、トップのリーダーシップとプロジェクトメンバーの連携により、化成品加工事業部の事業競争力強化による経営改革を成功へと導きました。(第12回参照)トップとプロジェクトリーダーは、この成功事例の他事業部への展開と,グローバル企業として成長していくためには、経営幹部のマーケティング力や事業戦略力が不可欠であるとの思いから、事業戦略研修の企画をスタートしました。1回目は各事業部で問題意識の高い技術者や、営業メンバーを対象に事業戦略研修にトライをし、その後本格的にスタートすることとしました。

J社のマーケティング志向

事業戦略研修のトライに当っては、J社のマーケティング志向とは何かということがポイントとなりました。
J社は、技術力がある企業として評価されており、合わせて足腰の強い営業力を持つと評価されてる企業です。しかし、トップや事務局メンバーは、「市場第一・顧客原点で事業経営機能を統合する」というマーケティングの考え方は、社内に浸透していないとの認識があり、技術と営業の連携も十分ではないと考えていました。

1回目の事業戦略研修に参加したメンバーの討議を経て、J社にとってのマーケティング志向とは「市場・顧客志向で技術と営業が連携すること」と位置づけ本格的なスタートを切りました。

事業戦略研修のアウトライン

マーケティング志向の事業戦略研修は、技術と営業の部長クラスを対象に1回(3ヶ月で集合研修4回×職場検討3回の研修)で15人前後(1事業2~3人)を目安に行われ、その内容は、実際の事業戦略テーマを採りあげ、生データを活用して実践に結びつける実践研修方式を採用し、次の3点を狙いとしました。

① 事業戦略策定のストーリー力と発想力を身につける
② 技術と営業の連携により事業競争力を高める
③ 事業戦略の実践促進により事業経営改革を推進する

J社の事業戦略策定のストーリー

J社の事業戦略研修は、前回に紹介した事業戦略ストーリー(事業ユニット設定~事業評価~事業構想)を具体的に設計した下図に示す手順によって行われました。

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実践研修は次の点をポイントに行われました。
・4回の集合研修では、事業戦略の考え・手法の理解とまとめ事項(アウトプット)の検討と発表をする。
・トップマネジメントや事業部長が集合研修に参画して有効かつ建設的なコメントをする。
・3回の職場検討では、市場や内部のデータ分析、営業・技術の検討メンバーによる戦略検討と共通認識を行う。
・12枚のワークシートを有効に活用して7つの事業戦略発想を身につける
・集合研修や職場検討の場面、ワークシート作成例、事業戦略の実践例などは、社内の情報ネットによってPRする

3年160人の事業戦略人材づくり

J社の事業戦略研修は、3年間で延べ約160人の経営幹部が参加する、かってない実践型の事業戦略研修となりましたが、主な成果を要約すると次の5点があげられます。

① マーケティングや事業戦略の共通の見方と手法が身についた。
② 事業戦略課題が技術と営業に共有化された。
③ 研修テーマを中期事業計画に織り込み具体化・実行に結びつけた。
④ 事業部内メンバーのマーケティング志向醸成に役立てた。
⑤ 事業部連携の全社マーケティングテーマの推進に発展した。

組織間の葛藤などマイナスのエネルギーが発生して事務局メンバーも苦労する場面もありましたが、トップと事務局メンバーの経営改革に取り組む強いメッセージが社内に伝わり、事業戦略研修を成功に導くことができました。その成功には、1回目の事業戦略研修に参画したメンバーの積極的な協力があったことは、言うまでもありません。
その後、J社はコンサルタントと協力してマーケティング志向の事業戦略のストーリーや発想をガイドブックにまとめて全社的に普及を推進し、さらに英語版のハンドブックを作成して、海外の関係会社にも普及を行っています。

(シニア・コンサルタント 神奴 圭康)