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第2回 見える仕事と見えない仕事

2016年7月11日

 本コラムでは、技術部門の職場の現実を直視しながら「技術者の知的生産性向上と職場活性化」を考えていきます。「慢性的に忙しく元気がない」職場を真に活性化するためのヒントを提案していきたいと思います。第2回目は、創造的な仕事のやり方に変えていくための、見える化の対象について考えたいと思います。

「想定していたこと」と「想定していなかったこと」

 みなさんの仕事の直近1ヵ月間はどんな1ヵ月間でしたでしょうか?

 想定していなかった仕事の中身を振り返ると何が起きていたでしょうか?

 お客様からの突発クレームや、生産開始後に発覚した重大な品質不良といった大問題から、日常の報告資料づくりのささいな手戻りまで、さまざまな仕事が発生しているかと思います。日々忙しい技術部門においては、ただでさえやることが多く仕事があふれているのに加えて、さらなる問題発生で仕事量が増えてしまい、残業の減らない職場も多いようです。

 では、実際にやった仕事が事前にすべて計画されていたでしょうか?

 後々のトラブルの元となる問題の芽が見つけられていたでしょうか?

 そもそも見つけようとしていたでしょうか?

見える仕事の線引き計画では潜在的な問題は見えない

 みなさんの職場に伺い、日常業務で使っている計画を見せていただくと、プロジェクト計画、週間計画、週報、スケジューラー、......など、その多くは細かくタスクが並んだ線の引かれた"スケジュール"が出てきます。また、問題・課題を一覧化し、進捗管理している管理表を一元的に用いているところも多いようです。これらは、開発日程が厳しい中で、確実に納期に間に合わせなくてはいけないという意識づけや、たくさんあるテーマの状況をマネジャーが管理する道具にはなり得るのですが、これが本来の計画といえるものなのでしょうか?

 日常を困らせている要因の方に目を向けると、見えるようにした"タスク"そのものよりも、むしろ計画に載っていない計画上で見えていない"潜在的な問題"の発生が計画的な業務遂行を狂わせています。それなのに、見えない仕事の方が計画上で十分扱えていない、意識としても十分見えるようにしようとしていないのです。細かくタスクをばらし、日程の線を引いただけではまだ計画をつくったとはいえません。見えない仕事に目を向けていない計画は、あくまでも"納期を示した日程感"でしかなく、"タスク一覧表"の役割しか果たせないのです。

ITマジックの罠 〜見た目はきれいでも中身がないのはなぜ?〜

 もちろん、ルーチン的な仕事であれば、To Doリストレベルの計画で十分です。ただし、技術部門における試行錯誤性の高い、技術業務、思考業務においては、タスクそのものの見える化だけでは本質的な量と質の見える化になっていません。

 たとえば、項目に「△△試験」と書いてあり、期間は1週間で線が引かれていたとしても、その担当者にとって初めての業務であれば、個人でモンモンと取り組んでもヌケやモレがあり、手戻りが起きることもあります。やり方の悪さによっては、工数が2倍、3倍に、成果が出ずにやり直しがあれば、すぐに5倍、10倍に膨れ上がってしまいます。

 ITツールの進化により、簡単にきれいな業務計画を書くことはできるようになりました。もちろん、ITツールのメリットも多大です。ただし計画行為における使い方・意識の向け方には注意が必要なのです。本当はモヤモヤや不安があるのにも関わらず、その気づきを顕在化させないまま、「エイヤッ」で線だけが引かれ、見た目上は確立した線表計画ができあがります。ITツールではマウスをクリックするだけできれいな線を引けますが、それはあくまでもパソコンの画面上の話です。実際に仕事をするのは技術者一人ひとりであり、本来一つひとつの仕事には技術的・調整的な解決が求められ、組織的な知恵集めや相談が必要となるはずですが、ITを使うとあたかもうまく進むような計画ができあがってしまうのです。これは問題の気づきを埋もれさせ、問題を個人に閉じ込めてしまい、自らリスクをつくり込んでいるといっても過言ではありません。

 計画づくりだけの話ではありませんが、近年「きれいなパワポ資料だが深堀りがなく中身がない」という幹部のなげきを聞くこともあります。資料をつくることが報告の準備になってしまい、プレゼンでごまかそうとしても中身をつつかれても対応できず、手戻りが起きてしまうのです。実は中身が十分議論できていない、事前に問題発見や解決ができていないということです。ITツールによる見た目のきれいさの魔法はすぐに切れてしまうのです。

 技術部門の職場の日常の中で、実はこのような生産性の低い業務が繰り返されています。

見えない問題を発見し、見えない仕事を防止するのが計画の役割

 「計画」とは、大辞林の解説によると「事を行うにあたり、その方法や手順などをあらかじめ考えること。また、その案。もくろみ」とあります。

 本来は、事前段階のもくろみや企てが計画の主役といえます。タスク(見える仕事)を見えるようにすることで、見えない問題を見つけやすくし、潜んでいる見えない問題を見つけ、もくろみや企てを盛り込み、中身を見える仕事にすることが、見える計画づくりです。それをチームや有識者を交えて行うことで、組織の力を最大限に引き出して活用することができます。

 タスクを並べただけでは、単なる「作業フロー」ですが、事前に量と質を見える化し、潜んでいる問題を発掘し、知恵を集めてもくろみと企てが盛り込めていれば、仕事をうまく進める「作戦ストーリー」になります。見た目は似ていても実行性には大きな違いがあります。タスクを並べた計画の見える化だけでは、試行錯誤性の高い技術部門の知的生産性向上の解はありません。見える化の対象として、潜在的な問題・課題の方に意識が向いているかどうか、それを計画行為として実現できるかどうかが知的生産性向上の分かれ目なのです(下図)。

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 次回は、チームでそれらの見える化を具体的に進めるうえでの「押さえドコロ」を考えていきます。

コンサルタントプロフィール

星野 誠

星野 誠

KIセンター チーフ・コンサルタント

技術者や事業スタッフの知的生産性向上と職場活性化を専門としている。知的生産性を妨げるさまざまな問題が絡み合う職場に飛び込み、日常業務の仕事のやり方を具体的に変えていくコンサルティングを実践。300チーム以上の職場変革支援の経験から、やらされ感でなく自分たちで自立して変革を進めるための考え方と実践手法を日々研究している。とくに輸送機器業界や精密機器業界など製造業の開発設計/技術部門における変革活動の支援経験多数。
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