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研究開発領域の挑戦!システムの正解に頼り切らない「不合理な妄想」が世界を変える

コラム

2026.01.05

JMAC EYES

2026年、日本の研究開発(R&D)は不思議な状況にある。政府の統計を見れば、研究開発費総額は過去最高を更新し続け、資金も人材も世界トップクラスだ。しかし、現場の閉塞感は拭えず、世界を驚かせるような破壊的な成果が生まれにくいという声が絶えない。その原因を「IT化の遅れ」だとする声も多いが、果たしてそうだろうか。

むしろ、システムが提示する「もっともらしい答え」に慣れすぎ、研究者本来の「深く考え、問いを立てる力」が弱まっていることこそが、今向き合うべき本質的な危機ではないだろうか。2026年という節目にあたり、効率至上主義の罠から脱却し、人間の意志と妄想を解き放つR&Dの進むべき道を、今一度問い直してみたい。

「正解」はシステムに任せ、人間は「妄想」に賭ける

今向き合うべき挑戦は、他部門が進める「ルールの整理」や「効率アップ」とは少し毛色が違う。システムが計算して出した「正解」さえあれば大丈夫、という手法の限界を認め、次なる次元へとアップデートしたい。経営が本当に投資すべきなのは、論理だけでは「非効率だ」と切り捨てられてしまうような、研究者の「とんでもない妄想」にある。

なぜ今、「妄想」なのか。最新のツールが導き出す答えは、結局のところ過去の膨大なデータの「平均値」に過ぎないからだ。そして、その同じ答えは、世界中のライバルも同時に手にしている。誰にでもわかる「正解」を追いかけるだけなら、それは研究開発ではなく、ある種の「確認作業」になってしまう。他社と同じデータを使い、同じアルゴリズムで導き出された「最適解」をなぞるだけでは、独創的な価値が生まれることはまずない。

ここで言う「妄想」とは、決してデタラメを信じることではない。データという客観的な事実を徹底的に見つめた上で、その裏側に潜む「まだ誰も言語化できていない可能性」を主観で捉え直すことだ。例えば、情報の処理速度が上がり、誰でも瞬時に「成功確率」を算出できるようになった現代において、あえて確率の低い選択肢の中に「自分にしか見えていない勝機」を見出す。この「主観的な確信」こそが、コモディティ化した世界をひっくり返す唯一の武器になる。

効率の悪いノイズの中にこそ、次の時代をひっくり返す爆発力が眠っている。2026年は、データを「信じる」ためではなく、データという平均値を「超えていく」ための材料として使い倒す姿勢が求められる。システムが「成功確率が低い」とはじき出した選択肢の中にこそ、世界を逆転させるシナリオが隠されているのだ。私たちは、美しく整えられた正解をあえて疑う勇気を持たなければならない。

自分の「ワクワク」を仕事の成果にする

JMACには、30年以上前から大切にしている「時間生産性 =(仕事成果 + 本人成果)÷ 時間」という考え方がある。ここで言う「本人成果」とは、単にプロジェクトを終わらせることではなく、仕事を通じて本人が得た能力、成長、自信、そして「充実感」のことだ。

最新のツールを使えば「仕事の成果」は早く出せるかもしれない。しかし、仕組みが肩代わりしてくれるのは「計算」や「検索」であって、研究者がそのプロセスで感じる「ワクワク感」や「成長」まで用意してくれるわけではない。むしろ、効率化を急ぐあまり、一番面白い「試行錯誤のプロセス」をシステムに丸投げしてはいないだろうか。かつて研究者は、実験が失敗するたびに「なぜだ?」と悩み、その格闘の中で新しい知見を得ていた。その「悩む時間」こそが、研究者としての血肉となり、牙を磨く研石となっていたはずだ。

システムが出す答えと、人間が抱く「妄想」の決定的な違いは、そこに「何が何でも形にする」という責任と執念があるかどうかだ。プログラムは、自分の出した答えを信じて夜中まで実験を繰り返すことはない。予想が外れて市場で拒絶されたときに、悔し涙を流して再起を誓うこともない。

2026年、研究者に求められるのは、道具を器用に使いこなして「ミスのない作業」を完結させることではない。膨大なデータを踏み台にしながらも、「それでも、自分はこれを実現したいんだ」と言い切れる、強い意志を持った「問い」を立てることだ。「なぜこの現象は起きるのか?」「この違和感の正体は何だ?」。そんな泥臭い「知恵の格闘」に時間を割くことこそが、本来のR&Dの魂だ。効率という名のショートカットを捨てて、あえて深く潜る。その格闘の結果として生まれる「本人成果」が、結局は組織を支える最強の資産になる。本人が面白がっていない研究から、人を感動させる製品が生まれるはずがない。

R&Dを「お荷物」から「最強のエンジン」へ

時として、経営層から「R&Dは何にお金を使っているか見えにくい」「投資回収の予測が立たないコストセンターだ」と厳しい目で見られることもある。しかし、あらゆる予測が自動化・標準化される時代だからこそ、人間の「こうしたい」という主観的な意志が詰まったR&Dこそが、企業にとって最も付加価値の高い「意思ある投資」の場になる。

今年、私たちが取り組むべきは、「効率がすべて」という考え方から一度離れてみることだ。具体的には、画面の中の解析結果を眺める時間を1割削り、その分をあえて「不純物」に触れる時間にあててみてはどうだろうか。

実験室にこもるのではなく、製造現場の油の匂いの中で感じる「小さな違和感」を拾い上げる。営業担当に同行し、顧客が口にする「理不尽な本音」を肌で感じる。こうしたアナログで非効率に見える体験が、デジタルには決してできない「独自の問い」を生み出す種になる。情報の突き合わせだけでは生まれない、人間特有の「飛躍」こそが、R&Dをコストセンターから価値創出の源泉へと変える鍵となる。

また、これからのR&Dは、単に「自分たちだけで作るか」「外から技術を買ってくるか」といった、二択の考え方からも卒業すべきだ。今、本当に求められているのは、自分たちの強烈な「やりたいこと(妄想)」を旗印として掲げ、世界中の多様な才能や知恵を引き寄せる「チームづくりのリーダー」としての姿である。

世界中に散らばる最新の知見や異分野の技術は、もはや単なる「借り物」ではない。それらは、自分たちのこだわりとぶつけ合わせ、新しい化学反応を起こすための「着火剤」である。自前主義という壁を壊す本当の目的は、単なる効率化ではない。自分たちだけでは到底たどり着けない高い目標を達成するために、外にある未知の知恵を自分たちの心臓部へ取り込み、混ざり合わせることで、想像もしなかった価値を生み出すことにある。

まとめ

未来は、過去のデータの延長線上には存在しない。むしろ、延長線から外れたところにこそ、私たちが目指すべき場所がある。研究者の「根拠はないけれど、どうしてもやってみたい」という情熱が、システムによる予測を軽々と超えていく瞬間を何よりも大切にしたい。

JMACは、現場の一人ひとりが抱く、一見「不合理」に見える熱い妄想に火をつけたいと思っている。それが確固たる技術となり、社会価値へと変わるまで、泥臭く隣で走り続けるパートナーでありたい。

山中 淳一

R&Dコンサルティング事業本部
チーフ・コンサルタント

本社企画部門、および研究開発部門を中心に、技術棚卸しと技術シーズの新用途開発、技術を核にした新事業開発、開発力強化、商品企画力強化等の領域に取組んでいる。
最近では、医薬品メーカー、化学メーカー、食品メーカーの研究開発部門を対象としたコンサルティングに力を入れている。

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