サービス産業における品質保証(QA)の本質と、4つのタイプ別マネジメント
生産・ものづくり・品質


サービス産業の売上は過去最高の410兆円規模(2024年時点)に達し、次々と新たなビジネスモデルが生まれている。
しかし、画期的なサービスを生み出し、華々しいデビューを飾っても、その成長を持続させることは決して容易ではない。明暗を分ける決定的な要素こそ、目には見えない「品質」である。サービス産業における「品質」の捉え方と、それを確実なものにする仕組みづくりについて考えてみたい。
いくら顧客ニーズを捉えた素晴らしいサービスでも、一歩間違えれば品質が致命傷になり得る。例えば、設備の不具合やスタッフの対応の悪さなど、一度のミスがSNS等で瞬時に拡散され、急激な顧客離れを引き起こす時代である。
事後対応に追われて経費が膨らみ、会社の信用は失墜し、最悪の場合は経営破綻にまで追い込まれる。このような落とし穴に陥らないためには、事業の拡大スピードに合わせた「品質保証体制」の確立が不可欠である。販売を先行させることに躍起となり、品質保証は後から作り上げれば良いという考えは、大きなリスクを背負っているのである。
実効性のある品質保証体制を築くためには、まず「管理すべき対象」であるサービスの特性を正しく理解しなければならない。なぜなら、サービスの品質は製造業における「モノ」の品質保証とは全く異なる難しさを含んでいるからだ。製造業の「モノ」と違い、サービスの品質は目に見えず、手で触れることもできない。
サービスの品質の特徴としては、次のようなものが挙げられる。
無形であるため、物理的な測定や合否判定が難しい。
合致すべき「正解(要求)」が相手や状況によって常に変動する。
価値を生む人の活動そのものが評価対象となり、スタッフのスキルや振る舞いに依存する。
生産と消費が同時に起こるためやり直しがきかず、失敗が即座に顧客の不満に直結する。
このような特徴を持つサービスの品質を、お客様の満足が得られるように提供するには、お客様より注文を受けてからサービス提供を完了させるまでの一連の活動を、誰が、どのように、どのような環境や条件の下で提供し、「このような方法でサービスをご提供するからご安心ください」と言えることが必要である。
つまり、品質保証の本質は、自社の正当性を論理的に示す「説明責任」を果たすことにある。この論理に穴があれば、お客様の安心は生まれない。そのため、品質保証は一部の部署に任せるものではなく、バリューチェーン全域をカバーする「全社的な活動」として取り組むことで品質を守ることが可能になる。
これらの仕事のやり方や管理の基準を組織としてしくみ化したものを「品質マネジメントシステム(品質保証の仕組み)」という。仕事のやり方=サービスの品質とも言えるサービス産業こそ、品質マネジメントシステムが必要不可欠であると我々は考えている。
サービス品質の本質は「要求への合致」であり、その保証には「全社的な活動」が不可欠であると述べた。しかし、一口にサービスと言っても、その内容は多岐にわたる。自社にとって最適な品質保証の仕組み(QMS)を構築するためには、まず自社のサービスがどんな特性を持っており、どこに「付加価値の源泉」と「品質保証のポイント(管理の重点)」があるかを見極める必要がある。
JMACでは、提供するサービスの性質を大きく「人」「情報」「空間・体験」「モノ」の4つに分類し、それぞれの品質保証のポイントを整理している。
| 分類 | 医療、介護、教育、コンサルティングなど、人の活動そのものが価値となるタイプ |
|---|---|
| 付加価値の源泉 | サービス提供者の専門知識、技術、接遇スキル |
| 見出し | 属人化を排除するための「サービス内容とレベルの統一(標準化)」と、提供者の「スキルレベルの管理」が鍵となる |
| 分類 | ITシステム利用、システム保守、メディア配信など、情報やITツールを介して価値を生むタイプ |
|---|---|
| 付加価値の源泉 | データの正確性、システムの安定性、コンテンツの企画力 |
| 品質保証のポイント | ITインフラとシステムの安定管理に加え、提供する「コンテンツの企画と評価」のプロセスが重要である |
| 分類 | スポーツジム、ホテル、レジャー施設など、空間や付帯設備、体験を提供するタイプ |
|---|---|
| 付加価値の源泉 | 設備の充実度、空間の清潔さ、その場での体験価値 |
| 品質保証のポイント | 「施設・設備の企画設計と維持管理」の徹底、およびサービス提供者の「スキルレベルの確保」が求められる |
| 分類 | 飲食、小売、卸、レンタル業など、顧客が受け取る「モノ」が存在するタイプ |
|---|---|
| 付加価値の源泉 | 提供される物品の品質と、提供の仕方の質 |
| 品質保証のポイント | 顧客に引き渡す「モノの品質」はもちろん、提供プロセスそのものの品質管理が欠かせない |
このように、サービスの種類によって品質保証の「管理の範囲や重点」は全く異なる。自社のサービス特性を正しく把握し、顧客への約束を果たすための要点を特定することこそが、実効性ある品質保証体制を築くための第一歩である。
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生産革新コンサルティング事業本部
コンサルタント
品質向上をはじめとしたコンサルティング支援を行っている。
工程管理の改善やQMS構築による品質向上、工場建設など全社的な業務プロセスの改革などの支援実績もある。
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