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第69回 「業績向上策としてのセールス・フォース革新策」

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

セールス・フォースの余力測定は、行なわれているか

国内企業を取り巻く市場環境は厳しさを増し、近年は、ゼロ成長という減速成長下で、激しい企業間競争の避けられない状況が続いています。 たとえば、総需要を一定とした企業間競争になると、負け犬的発想では勝ち目がありません。 余程この点を心して対応策を打っていかないと、市場からの撤退を余儀なくされる時代になっているのです。

まず、発想の転換を図ることが重要です。 「当社に限って...」と安閑視するのは通用しません。 たとえば、営業マンの活動とその生産性に注目してみましょう。 営業マンの動きについて、以下のような声をよく耳にします。
「営業マンは、内にいたのでは駄目だ。とにかく、外へ出ろ。」
「営業マンは、経費ばかり使って、外で何をしているのかよくわからない。」
...と。

いずれにしろ、「とにかく、外へ出ろ」も困るし、「いったい外で何をしているのか」でも困ります。 確かに、ムードやハッパも大切ですが、ムードやハッパだけで売れる時代は去ったのです。 「どこに、いつ、どのくらいの時間と経費をかけて、どのくらいの頻度で訪問するのか」営業活動にとって最も基本となる指針が、会社の方針につながる形で組織的に明確にされていないことには、お話にならないです。

このような営業マネジメント上肝心なことは、いったい、誰が、どんな方法で決めているのでしょうか。 まさか、営業マン一任でよいと、笑ってすまされないのです。 このような観点から、営業マンの活動採算的効率や販売チャネルの再開発を考えてみると、「セールス・フォースの再開発」の余地は、非常に大きいのです。

ある営業所長の悩み

C所長、32歳。10年の第一線営業経験をもった新任所長です。 進出が出遅れただけに業績低迷地区で、営業所長の間では、「努力のわりに報われない地区」として敬遠されています。

彼は、就任早々、営業力強化を旗印に、その第1弾として3つの方針を打ち出しました。 その1つは、「目標管理」の徹底です。 営業マン個々人に売上目標を提出させ、その自主管理を強調しました。 第2に、「営業日報」の正確な記載と提出の厳守。 第3が、「訪問計画表(週間)」の作成と提出です。 これらの遂行度合については、月次営業会議で厳しく追及するというのです。

それから3ヵ月。 所長と営業マンの根くらべのような日々が続きました。 その甲斐あってか、目標売上へのチャレンジ姿勢、営業日報や訪問計画表提出の慣習化は、明るい方向に向かってきました。

半期決算を終えたC所長の感想は、以下の通りです。
「対策が売上成果に結実するには、まだまだ時間がかかる。 しかし、急がねばならない。 そのため、少なくとも、次の点は早急に解決しなければならない。
 ・営業マンは、営業活動以外の所内業務に多くの時間を割きすぎている
 ・競合他社に比べて商談スキルが弱い
 ・得意先によい(大きい)店が少ない
 ・新規開拓への時間不足
以上の4点だ。」

そこで、営業効率化第2弾として、次の方針を打ち出したのです。

1.所内業務を集中化して、営業商談時間を増加する
2.毎土曜日、営業マンのスキル・アップ教育を行なう
3.大型店新規開拓に総力を結集する
4.営業マン要員の増加を本社に要請する

それから6ヵ月、所内業務集中化の切換指導、営業マン教育、自らの大型店アタック等々、C所長には多忙な毎日でした。 しかし、月次の売上成果への反映は、努力のわりには実り少ないものに終わったのです。 本社の評価は、「売上目標は達成した。しかし、1人当り販売生産性が低い。来期も、現状人員でがんばってほしい。」です。

C所長は、考えました。
「1人当り販売生産性向上策としては、事務時間の削減、訪問計画表作成の徹底、売上目標チャレンジへの叱責、大型店開拓へのアタック等々、打つべき手は打ってきた。なのに、成果があがっていない。なぜか。このまま時を待てば、成果があがるのか。それとも、何か打つべき施策を間違えたのだろうか。」

早速、管理係長にデータによる原因分析を依頼しました。 その分析結果では、1日当り訪問件数は、他営業所に比べて少なくはありません。 しかし、1店当りの売上高が少なく、しかも、前年より減少している店が増えているのです。 では、営業効率化を実現するには、どうしたら良いのでしょうか。

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