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第22回 マーケティングの個別戦略を考える(3)~4P価格戦略の課題と対処策(1)~

  • 営業・マーケティングの知恵ぶくろ

笠井 和弥

前回は、マーケティングの4P製品戦略についてお話ししました。
今回は、Price:価格戦略について考えてみましょう。

価格はどうやって決まるのか?

4P戦略の基本的考え方(第20回参照で、価格戦略は、「プライスバリュー」「プライスゾーン」「流通マージン・リベート」から成り立つことを説明しました。(下図参照)

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一般的に製品やサービスの価格は、需要と供給のバランスにより決まります。供給企業が、需要を予測した上で、競合製品がある場合はその情報を加味しながら、原価に利益を加えて設定するのが一般的です。世の中にない新しい製品やサービスは、供給企業が価格を自由に決めることができます。ただし、その価格が需要側に受け入れられるかどうかは、市場に導入してみないと分からないのが実態のようです。

■ 価格×認知度/信頼度
製品(サービス)の認知度や信頼度が高いほど、競合製品(サービス)よりも高価格なのが一般的です。
例えば、アメリカの消費者がテレビを購入する際、「SONY」製品は、最も認知度・信頼度の高い製品であり、それが製品価格にも反映され、他社製品よりも高価格設定になっています。一方、近年急激にシェアを伸ばしている「SAMSUNG(サムソン)」ブランドは、品質も良く購入しやすい価格帯の製品として広く認知されています。

■ 価格×時間
また、製品(サービス)の価格は、時間の経過とともに下降していきます。新製品が発売され販売量が増え、競合製品との競争激化やモデルチェンジ時期が近づくと加速度的にその傾向は顕著になります。

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しかし、異なるパターンの製品(サービス)も存在します。
例えば、 クラシックカーや骨董品など数十年という時間の経過とともに価格が上がるものもあります。製品そのものの品質にプラスして「希少性=他に無いこと」が価値となり価格に反映されるのです。
また、高級自動車の代名詞になっているフェラーリは、新車よりも(新車登録後間もない)中古車のほうが高い値段で取引されています。通常フェラーリは、注文を受けてから納車されるまで、数カ月から場合によっては1年程度かかるといわれています。ユーザーは、早く現物(車)を手元に欲しいため、新車価格より割高であっても質の良い車があれば購入するのだそうです。このケースでは、「時間=注文してから手元に届くまでの時間」が価格に反映されているのです。


■ 価格×独自性
典型的な大量販売型製品である飲料で考えてみましょう。
500mlペットボトル茶飲料の価格帯は、CVSであれば\128くらいで販売されています。自販機であれば、\100で売られている製品(ノーブランド製品が多いですが)もあり、ディスカウントショップだとケースで販売されて、単価にすると\50を切る製品も多くみかけます。ペット飲料のようにどの製品もほぼ同じような味でその違いが実感しにくい製品でも上記のように価格帯が異なるのはなぜでしょうか?

一つは、広告宣伝媒体による認知度の高さやメーカーに対する信頼度の違いにより差がついています。
最近は、もう一つの理由として、競合製品が多く需要と供給バランスが崩れだぶついた製品在庫を消化するため価格ダウンをしている製品が多くなっています。この流れは、しばらく止まりそうにありません。
このような市場環境において、サントリーが発売しているウーロン茶のように中性脂肪の上昇を抑える効能があるという価値により、容量が少なく多少高くても売れている製品もあります。

今度は、家具を例にとって考えてみましょう。ベッドを購入される時、一般的に重視されるのは、機能、デザイン、価格と言われています。
ベッド価格も様々です。高級家具を扱う大塚家具は人にとって眠りは最も大事なものであるので、高くてもよいものを買いたいという顧客層をターゲットに数十万円する高額製品を中心に顧客訴求しています。一方、 IKEA は、「家具は長く使うものではなく、気軽に買い換えるもの」というコンセプトで、買い換えることで違ったデザインを楽しむ事、さらに自分で組立てることの楽しさ、北欧デザインに対する新鮮さや価値観(落ち着いているけれどセンスが良い)を前面に打ち出し、比較的手ごろな価格帯に設定した製品を中心に訴求しています。

大塚家具は、徹底した眠り(機能)にこだわり、IKEAは、機能よりも価値観(北欧風デザインの生活シーン)にこだわり、両方とも比較的好調な売れ行き状況にあるようです。このようなケースでは、「独自性=他製品とは違う価値」が価格の違いに反映しているのです。ちなみに、トップブランドメーカーのフランスベッドは、信頼性と安心感を軸に、中高額帯の価格の製品が多いようです。

次回テーマは、「4Pの価格戦略について」の続きをお話しします。

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