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第9回 経営改革の3局面をまわす~ 策定・具体化・実行評価 ~

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

経営改革の3局面とは

私は、経営改革活動全体をどのように進めるかにおいて、数多くのご支援をしてきました。この経験から、経営改革はマスタープランの「策定」、「具体化」、「実行評価」の3局面をまわすことが肝要だと考えています。

経営改革のマスタープラン「策定」は、トップマネジメントがリーダーシップを発揮して、経営改革の立ち上げから基本方向づけまでを行います。経営改革の「具体化」は、ミドルもリーダーシップを発揮し、マスタープランをかみ砕き実行計画書を策定する実行準備の段階です。そして、経営改革の「実行評価」は、この実行計画書に基づいて改革の推進と共にその検証を行い、改革の阻害要因を除去して経営改革をやり抜く局面です。これらの3局面をまわすことは、経営改革にもマネジメント・サイクルがあるとの発想から、経営改革の「計画(PLAN)」「実行(DO)」「検証(CHECK)」「是正(ACTION)」を意識することになります。

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マスタープラン策定の要諦

経営改革マスタープランの「策定」とは、トップマネジメントがリーダーシップを発揮し、経営改革の必要性と基本方向・基本ステップ等の骨子を明確にして、全員の共通認識を得ることです。経営改革の骨子は、「PLAN 1」と呼び、次の「5W+1H」を満たしていることが求められます。

1. WHY ... なぜ、経営改革に取り組むかの背景と目的・目標を明確にして共通認識を持つ。
2. WHAT ... WHYに続き、何を経営改革の対象とするのかを明確にして、共通認識を得る。
       現在の実態と今後の環境変化を把握し、経営改革課題・テーマを明らかにする。
3. WHEN ... 経営改革推進の基本ステップと期間を想定する。
4. WHO ... だれ(トップ・ミドル・第一線)が、どの経営改革テーマを担当するかを決める。
5. WHERE ... どのような「改革の場」で経営改革を推進するのかを決める。
6. HOW ... 経営改革の方法・手法を評価、選択する。

なお、経営改革マスタープランは、中期経営計画システムが有効に機能している企業では、中期経営計画に反映(リンク)され、その「具体化」と「実行評価」に繋げることがベストといえるでしょう。

具体化のポイント

経営改革の「具体化」とは、トップに加えミドルも改革リーダーシップを発揮して、経営改革の骨子をかみ砕き、担当テーマの実行計画を策定することです。経営改革マスタープランは、経営改革の骨子をまとめたものであり、そのまま「実行評価」の局面に取りこむ訳ではありません。経営改革の「具体化」は、経営改革マスタープラン(「PLAN1」)と「実行評価」を橋渡しする機能を持ち、「PLAN2」と呼んでいます。また、経営改革マスタープランが中期経営計画に反映(リンク)されている企業では、経営改革の「具体化」は、年度経営計画の「策定」において行われると考えられます。

経営改革の「具体化」のポイントは、担当ミドルが関連メンバーと共通認識 を持ち、その実行においてトップとコミットすることです。そのためには、実行計画「策定」において「戦略・施策と成果の関連づけ」を行うことが不可欠です。たとえば、事業戦略とその戦略を具体化する開発・生産・営業などの機能連携改革の諸施策を関連づけ、その経営成果(財務目標)を明確にしておくことです。この点については、少し先になりますが、「経営改革に必要な知識と技」で触れたいと思っています。

実行評価に求められるもの

経営改革の「実行評価」は、トップの支援を受けて、ミドル以下の推進組織メンバーが実行計画に基づき、経営改革を実行する局面です。同時に、改革の実行度や成果の実現度を検証しながら経営改革を最後までやり抜くことが必要です。具体的には、経営改革の「実行(DO)」と評価を意味する「検証(CHECK)」「是正(ACTION)」を行います。私は、改革の実行力は、そのまま会社の実力を表していると思います。どんなに良い経営改革マスタープランや実行計画を策定しても、実行するやる気(本気)がない、または改革意識が薄い企業や、改革スキルを身につけた人材が少ない企業では、実行が伴いません。また、経営改革の評価力である「検証(CHECK)」「是正(ACTION)」を行うCA力が弱い企業は、経営改革を完遂する体質がないと言ってもよいでしょう。

経営改革の「実行評価」のポイントは、トップマネジメントが改革を根気よく推進すること、経営改革を阻害する要因を除去することが挙げられます。 これらが、ミドル以下一人ひとりの改革意識・行動に影響を与え、組織の改革力向上にも繋がるのです。また、実行計画「策定」において行った「戦略・施策と成果の関連づけ」について、その実行マネジメントを徹底することも求められるでしょう。

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