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第93回 たえまなき経営改革実現に向けて(2) ~経営改革のPDCAをまわす仕組み~

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

企業がたえまなき経営改革を実現させるためには、条件があります。今回は、その必要条件である、経営改革のPDCAをまわす仕組みについて、お話しします。

体質づくりとマネジメント

第14回「経営改革の体質づくり」で、経営改革体質がある会社は、改革をやり抜く意識を持って成果実現までやり抜いている状態にある、と述べました。しかし、経営改革体質は、一朝一夕に出来上がるものではありません。経営改革体質づくりには、経営改革をたえまなく行うとの意識のもと、改革のPDCAをまわす仕組みづくりが必要だとお話ししました。

また、第9回「経営改革の3局面をまわす」では、経営改革はマスタープランの「策定」、「具体化」、「実行評価」の3局面をまわすことが肝要だと述べました。この経営改革の3局面をまわす仕掛けを会社の中に構築していくことが、経営体質づくりには求められるのです。

会社経営では、会社のミッション・長期ビジョンにもとづく、経営管理システムが運用されています。第71回「経営管理システム改革」でお話したように、経営管理システムは、経営計画システム(長中期経営計画と短期経営計画)と実行評価システムで構成されています。

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経営改革をたえまなき活動としてとらえる会社は、改革のPDCAを経営管理システムに反映(リンク)させています。これは、同システムを単なる数値管理ととらえず、経営改革の土台ととらえることを意味しています。この考え方を示したのが上の図です。

まず、経営改革マスタープラン策定は、「PLAN1」として、中長期経営計画に反映させます。次に、経営改革の具体化を、「PLAN2」として、年度経営計画に反映します。経営改革の実行評価は、「DO・CHECK・ACTION」として、実行評価システムにおいて行うようにします。

O社の経営改革PDCA

O社は、オフィス関連の機器やシステムを、グローバルに事業展開しています。その経営改革をやり抜く体質が、金融機関やマスコミで評価されています。昔は同社も、経営改革を一時的な活動としてとらえていました。しかし、グローバル展開もあり、経営環境変化に対応するために、経営改革を必要不可欠なたえまない活動としてとらえるようになりました。また、経営管理システムの数値面では、ITを活用して経営の見える化が進みました。その結果、経営数値を読み込み、戦略・施策に反映して、経営改革に活用することが求められるようになりました。

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そこで、経営改革を経営管理システムに反映する仕組みづくりに挑戦しました。上図は、O社の経営改革プロセスを、経営管理システムに反映させた仕組みの概要を示しています。

大きなポイントは、グローバルな経営環境変化に、経営力と現場力が一体となって素早く対応する経営改革に取り組むことが出来る仕組みにすることでした。

1.「プラン1:中長期経営計画システム」
・経営環境変化に柔軟に対応する戦略オプションを策定し、必要に応じて戦略を見直す
・事業ユニットごとの顧客・製品・エリアの利益シミュレーション・システムを導入する

2.「プラン2:年度経営計画システム」
・中長期の「選択戦略(大きな方向性)」を具体化し、年度経営計画に「戦略骨子」と「重点施策」をまとめる
・「年度の重点施策」の成果目標(経営成果と現場成果)を明示する

3.「実行評価システム」
・成果目標の実現度と戦略・施策の実行状況を把握し、計画への検証を迅速にできる、モニタリング・システムを導入する
・そのうえで、近い将来を見通し、戦略・施策にフィードバックする

経営改革をやり抜くには

経営改革のPDCAを素早くまわす仕組みは、たえまなき経営改革の必要条件です。仕組みの運用が伴わなければ、経営改革は空回りしかねません。たえまなき経営改革を実現する十分条件として、改革をやり抜く力を会社組織として身につけることが求められます。それには、「経営改革の場の活性化」と「経営改革の人づくり」の2つが特に必要だ、と前回お話ししました。この2つについては、次回以降お話を進めます。

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