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第60回 ビジネス・プロセスの見える化

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

今回は、ビジネス・プロセスの見える化について、お話しいたします。 ビジネス・プロセスの概念を理解すると共に、ビジネス・プロセスを俯瞰すること、さらに改革の重点対象プロセスを決めることがポイントです。

ビジネス・プロセスとは?

ビジネス・プロセスは、BPRが普及してからよく使われる言葉となりました。 ビジネス・プロセスは「事業全体のプロセス」を指しますが、「事業の要件を満足させる基本機能の連動」を意味しています。 ここで言う事業の要件(リクワイアメント)とは、商品・サービスを最終的に顧客に提供する上で、顧客満足・競争優位の要因となる品質、コスト、スピードといったビジネス・パフォーマンスの要求水準を指します。

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したがって、ビジネス・プロセスを厳密に定義するためには、次の3点を明らかにすることが必要だと認識してください。

1.商品・サービスの顧客(社内顧客含む)と顧客期待要件、およびライバルの明確化
2.ビジネス・プロセスのアウトプットである商品・サービスの顧客満足・競争優位の明確化
  (ビジネス・パフォーマンスの明確化)
3.ビジネス・プロセスを構成する基本機能の範囲

ビジネス・プロセスを俯瞰する

ビジネス・プロセスの概念を理解していただけたのではないかと思います。 では、ビジネス・プロセスの見える化は、どのようにしたらよいでしょうか?

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上の図は、照明器具メーカーT社の法人顧客市場事業システムのビジネス・プロセスを俯瞰したものです。 事業システムを構成しているビジネス・プロセス全体を俯瞰的に見えるようにする手法ですが、JMACでは、「ビジネス・プロセス・マップ」と呼んでいます。

「ビジネス・プロセス・マップ」は、ビジネス・プロセスの概念・定義を頭に入れつつ、(1)顧客の期待要件は何か、(2)商品・サービスの顧客満足は何か、を想定して、(3)基本機能(基本プロセスと呼ぶ)とその連動を図で表します。

T社では、法人顧客事業の関連メンバーが、各自の立場や経験を活かして、問題点や改革点を出しながら「ビジネス・プロセス・マップ」をまとめました。 関連メンバーは、自分が担当する機能領域については、細かい業務まで知っていますが、ビジネス・プロセス全体を俯瞰する機会がありませんでした。 T社のように、関連メンバーが意見出しをしながら「ビジネス・プロセス・マップ」を作成するやり方は、一つの方法と言えるでしょう。

ビジネス・プロセスのレイヤーを知る

ビジネス・プロセスは「事業全体のプロセス」を指しますが、見える化するために複数のレイヤー(階層)に分けることを知っておいてください。 JMACでは、次の3つのレイヤーに分けて、ビジネス・プロセスを体系化しています。(下図参照)

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レイヤー1:事業プロセス
事業全体(事業システム全体)のビジネス・プロセスを指し、複数の基本プロセスから構成されます。

レイヤー2:基本プロセス
「事業プロセス」を構成する基本となる機能プロセスを指し、複数の「サブプロセス」から構成されます。 「基本プロセス」は、「ビジネス・プロセス・マップ」に図示されるレイヤーとなります。

レイヤー3:サブプロセス
「基本プロセス」の具体的内容となる業務プロセスを指し、複数の業務から構成されます。 改革の重点対象プロセスを具体的に検討するには、「基本プロセス」は「サブプロセス」にブレークダウンされる必要があります。 「サブプロセス」がどのような業務で構成されているか、業務の流れはどうか、を見えるようにするために、業務分析の手法を活用します。 この業務分析については、別途ご紹介する予定です。

改革の対象プロセスを決める

顧客満足と競争優位の実現において、改革の重点対象プロセスを決めることが重要です。 品質、コスト、スピードなど、ビジネス・パフォーマンスの劇的改革には、どのプロセスをリデザインするのが有効か、を判断する必要があるのです。

「ビジネス・プロセス・マップ」に図示された「基本プロセス」の現状や課題に対する概要把握を必要としますが、改革の有効性と可能性の観点から、優先順位の判断をして、複数の改革対象の「基本プロセス」を決めます。

また、改革対象の「基本プロセス」を「サブプロセス」にブレークダウンして、どの「サブプロセス」を重点的に改革すればよいかを検討します。 「サブプロセス」の単位では、業務分析に基づく見える化によって明らかになった、改革余地の大きい「サブプロセス」を重点改革の対象とします。

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