経営改革の知恵ぶくろ

第56回 事業システム改革の技

BPRによる業務改革の技を活用

事業システム改革は、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)による部門機能や企業を横断した業務改革の技を活用しています。 BPRは業務改革の代名詞として使用され、今や世の中に普及したビジネス用語となっています。

BPRは「抜本的な業務改革」と言われますが、JMACはBPRを次のように考えています。

顧客満足と競争優位の獲得という観点から、
ビジネス・プロセス全体の最適化をねらった
組織・システム・人の3視点から行う業務改革である。

このようなBPRの考え方は、事業戦略を具体化・実行する事業システム改革に適合する技と言えます。 「顧客満足の変化と事業競争の激化」「グローバル化の進展」「情報技術の進展」の3つの大きな経営環境変化により、事業システムは進化しています。 BPRも事業システム改革と共に進化していくことが必要であることに留意してください。

業務改革のタイプは

BPRによる業務改革への理解を深めるために、業務改革のタイプを整理しておきましょう。 業務改革コンサルティングにおけるJMACの豊富な経験と長い歴史を振り返ると、改革範囲の広がりという観点から、大きく2つのタイプに分けられます。 「部門業務改革」と「横断業務改革」です。

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1980年代までは、「部門業務改革」が中心でした。 この「部門業務改革」は、開発・生産・営業、人事・財務・経理・総務など、機能部門の業務生産性の向上を目的に業務改革をするものです。 「部門業務改革」のアプローチは、部門単位の改革目標をトップダウンで一律的に設定して、短期スパンで部門長以下が推進する点が特徴でした。 どちらかと言えば、企業内・部門内の業務効率化という視点が中心でした。

一方、部門や企業を横断する業務改革は、1980年代に日本の優良先進企業が既に取り組んでいました。 しかし、バブル崩壊後の1990年代以降は、より抜本的な業務改革が求められ、「横断業務改革」のケースが増えたのです。 日本の優良先進企業の研究結果を反映したとされる米国のBPRの成功も影響を与えました。 BPRは、高コスト、過剰な機能分担に悩む米国企業が、1980年代に経営改革実現に向けて取り組んだ業務改革のアプローチを体系化したもので、日本でも1993年頃に大きなブームになりました。

JMAグループでも「BPR推進協議会」を組織して、日本的BPRの普及推進を行いました。 JMACは、自社のコンサルティング経験と日本のBPR先進企業研究によって、「横断業務改革」としてのBPRを上記の考え方にまとめ、実践してきました。

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また、業務改革は、対象が直接部門か間接部門かという視点から、「直接業務改革」と「間接業務改革」があります。 「直接業務改革」は、付加価値を直接あげる直接部門(開発・生産・営業などの事業ライン)の業務改革です。 「間接業務改革」は、事業ラインの付加価値向上を支援する間接部門(開発部門、工場、事業部のスタッフや本社スタッフなど)の業務改革です。 「直接業務改革」と「間接業務改革」において、従来は「部門業務改革」のアプローチが中心でしたが、現在は業務プロセス志向であり、「横断業務改革」のアプローチが採り入れられています。

今後の業務改革とは

日本の業務改革と言えば、製造業のトヨタ自動車、流通業のイトーヨーカドーが有名ですが、その根底にあるのは「改善・KAIZEN」です。 「改善・KAIZEN」は、現場力の根幹となる現場部門の日常的改善能力であり、日本企業の強みと言えるでしょう。 今後も、業務改革の基本能力として一人ひとりが身につけて、人主体の業務改革の柱としたいものです。

一方、部門間や顧客・取引先間との業務連携改革であるBPRによる業務改革も、日本企業の強みにする必要があります。 日本企業は、「顧客満足の変化と事業競争の激化」「グローバル化の進展」「情報技術の進展」という3つの大きな経営環境変化により、事業システムが進化していること、そして、BPRも事業システム改革と共に進化することが必要であることを述べました。

最近の業務改革の流れを見ながら、今後の課題として次のような点を認識しています。

1.事業戦略を実現する業務改革の推進
  ・グローバル市場での事業展開に対応した業務改革の推進
  ・事業モデル変革を伴った業務改革の推進
  ・M&Aに伴う業務改革の推進

2.顧客起点のビジネス・プロセス改革の推進
  ・顧客の業務プロセスと自社の業務プロセスの統合改革
  ・ビジネス・パフォーマンスの可視化と業務改革の推進
  ・事業タイプに応じたキーとなるビジネス・プロセス改革

3.組織面からの業務改革の推進
  ・機能・業務の集約と分散の視点からの業務改革
  ・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の取組みと評価
  ・在宅勤務制度の積極的取組みによる業務改革

4.ITの有効活用による業務改革の取組みと評価
  ・ユーザー部門が主体となったITの有効活用
  ・クラウド・コンピューティング活用による業務改革
  ・意思決定の迅速化に役立てるデータ・情報・知識の活用

5.マインドイノベーションを伴った業務改革
  ・業務改革に結びつく業務可視化の推進
  ・業務改革と組織風土改革の同時実現
  ・横断業務改革を推進できる人材の育成

(シニア・コンサルタント 神奴 圭康)