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第52回 事業システム改革の目指す方向

  • 経営改革の知恵ぶくろ

神奴 圭康

今回から、事業戦略を具体化、実行し、顧客起点の事業プロセスを統合改革する「事業システム改革」について話を進めていきます。

事業競争力=事業戦略力×事業システム力

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「事業競争力」の強化は、経営改革において中心となるテーマです。「事業競争力」を、「事業戦略力」と「事業システム力」、二つの領域に分けて経営改革を推進します。 「事業戦略力」は、顧客満足・競争優位を実現するために事業の目指す方向を明確にする力です。一方、「事業システム力」は、事業戦略を具体化して事業の仕組みをつくり、その運用で顧客満足・競争優位を実現する力です。

事業戦略については、以下を明確にすることだとご説明しました。
1. 事業領域の設定
  ・どんな市場・顧客を対象にどのような商品・サービスを提供するかを設定すること
  ・事業ユニットの設定とKFSの把握がポイントとなる

2. 市場・顧客/商品・サービス戦略
  ・事業領域の設定に基づき、顧客満足・競争優位を実現する「市場・顧客戦略」と
   「商品・サービス戦略」を明確にすること
  ・市場・顧客にどのような価値を提供するかを明確にすることがポイントとなる

3. 事業モデル構想
  ・事業モデル構想は、収益が還元する事業の考え方と仕組みをグランドデザインすること
  ・市場・顧客/商品・サービス戦略を具体化して、事業システムの改革方向を示すことがポイントとなる

事業システム改革の特徴とは

「事業システム改革」は、事業戦略(事業モデル)を具体化し実行することが基本目的ですが、顧客起点のビジネス・プロセスを統合改革して利益を上げることが大きな特徴です。 BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)による部門機能や企業を横断する業務改革の技を活用していますが、その特徴は次の点にあることを改めて確認しておきましょう。

1. 目的は事業戦略(事業モデル)を具体化し実行すること
2. 顧客起点のビジネス・プロセスを改革対象とする
3. 組織・システム・人の3視点から統合改革する
4. システムは、業務システムと情報システムの両面から改革する
5. 現場成果と経営成果の関連づけをする
6. 人が主体となって事業システムを運営し、成果を生み出す

なお、「事業システム改革」は、プロジェクトとして一時的に改革するだけではありません。 事業システムは、日々の事業オペレーションの土台(プラットフォーム)として機能しなくてはいけません。 したがって、日々の事業オペレーションにおいては、生産性やQCDの目標水準とビジネス・プロセスをマネジメントするBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の発想・技術も重要であることを頭に入れておいてください。

事業競争力の実力を評価・分類すると

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「事業競争力」は、上図に示すようにその実力を評価・分類することが可能です。

「事業競争力」が「五里霧中型」の状態にある事業は、少ないと思いますが、思い当たることはあるかもしれません。 たとえば、事業戦略が明確でない、もしくは明確だが不適切なまま、事業システムの重要な領域である情報システムが構築されている例は、見受けられます。 IT投資に対して利益の還元しない事業システムになるケースがありますので、注意する必要があります。

一方、「事業競争力」が「戦略倒れ型」にある事業は、少なくありません。 「戦略倒れ型」は、明確かつ適確な事業戦略を策定したが、共通認識されていない、事業プロセス改革力が弱いなどの理由によって事業戦略が事業システムに具体化されていない状態です。 また、事業システムの構築はしたが、その運用力が弱くて成果の出せない状態にあることを指します。

では、我々の目指すべき「事業競争力」の強化とは、一体何でしょうか。 明確で適確な事業戦略を策定し、事業システムを構築・運用する「戦略・システム連動型」の状態を実現することです。 「事業システム改革」は、事業戦略を具体化することです。 その上で、事業システムの運用力があり、事業戦略が徹底実施される状態をつくりあげることだと言えます。 事業競争力の強化は、事業推進トップ、ミドル以下の現場メンバー、支援スタッフの実力が問われるということを認識してください。

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