ビジネスインサイツ79号

- ページ: 1
- Vol.
79
永続する強さと
進化する柔軟性
TOP INTERVIEW
「伝統と革新の融合」が導く
未来の価値創造
株式会社島津製作所 代表取締役会長 上田 輝久 氏
CONSULTING CASE
株式会社オカムラ/DM三井製糖株式会社/有楽製菓株式会社/第一三共バイオテック株式会社/日綜産業株式会社
JMAC TOPIC
SMDGで実現する工場DX改革∼経営と現場をつなぐ全体最適志向∼/住友化学株式会社
INTERVIEW
産業界と共に未来を切り拓く
「伴走型」のコンサルティング
株式会社日本能率協会コンサルティング 代表取締役社長 大谷 羊平
- ▲TOP

- ページ: 2
- T E R V I E W
Vol.79
2
- ▲TOP

- ページ: 3
- 「伝統と革新の融合」
が導く
未来の価値創造
「 科学は人の役に立たなければ意味がない」と社会への貢献を
150年も前から、
事業の柱としてきた島津製作所。最新技術を生み出しながら見据える未来とは。
科学を﹁ 実学 ﹂として
届けるということ
小 澤 本 日 は、 京 都 で
年の
歴史をもつ島津製作所の上田会長に
誰もが科学を体験できる教育用理化
学機器の開発から着手し、のちに医
学・化学・工学などあらゆる現場に
件にも
製品を届けていきました。二代源蔵
の生涯の発明考案は
は、今 の 私 た ち の 製 品 づ く り に も
合って技術を届ける 〟という
のぼります。この〝 社会課題に向き
話を伺います。まずは島津製作所の
﹁ 伝統と革新の融合 ﹂をテーマにお
創業についてお聞かせください。
上 田 創 業 者 の 島 津 源 蔵 は 仏 具 職
はい ぶつ き しゃく
人でした。廃 仏 毀 釈 で需要が低迷
脈々と流れていると感じます。
年の中で
伝統というのは
先輩たちが苦労をして創りあげてき
1
5
0
I N
TERUHISA UEDA
T O P
し、 都 が 東 京 に 移 さ れ た
計測機器/医用機器/産業機器/
航空機器
年から京都の人口は大きく減少した
事業内容
せい みきょく
14,481人(2025年3月31日現在)
の で す。 そ の よ う な 中、
年に京都舎密局が設立され、源蔵も
﹁ 日本の進むべき道は科学立国だ ﹂
と理 化学 機 器 の製造、販売で創 業
したのが始まりです。
年に日本初の
源蔵の息子、梅治郎︵ 二代源蔵 ︶
年に蓄電池の工業生産
は
を 開 始 し、
線撮影装置を完成させて
います。
﹁ 科学は実学である。人の
Business Insights Vol.79
3
従業員数
ファースト推進協議会 」議長に就任し、環境経
営にも注力。また、京都産業21理事長や国際
高等研究所理事長も務めるなど、産学官連携
の推進にも貢献している。
約266億円
資本金
医療用
役に立たなければ意味がない ﹂と、
[ 株式会社島津製作所 ]
1
7
8
D
N
A
二代源蔵が1896年に初のX 線写真の撮影に成功
1
5
0
1
8
6
8
1
8
7
0
1957年、山口県生まれ。京都大学大学院工学
研究科を修了後、1982年に島津製作所へ入社。
分析計測機器の事業拡大に尽力し、2015年に
社長、
2022年に会長に就任。2022年には「エコ・
1875(明治8)年3月
[設立 1917(大正6)年9月]
創業
X
1
9
0
9
1
8
9
7
株式会社島津製作所 代表取締役会長
上田 輝久 氏(うえだ てるひさ)
- ▲TOP

- ページ: 4
- V I E W
創業の理念が事業に活かされている
すると﹁ 科学は実学である ﹂という
範囲を広く展開されているのを拝見
史の中で培われた優れた技術が応用
小澤 先ほど、最新の医療機器や分
析機器などを拝見いたしました。歴
くことです。
来に向けてアップデートし続けてい
ではなく、伝統の中にある本質を未
す。革新とは、伝統を否定すること
の中に多様性への理解を根づかせて
バーと研究所を運営したのは、自分
文化も言葉も違う中で、多国籍メン
ロジェクトで現地に赴任しました。
アメリカのカンザス大学との共同プ
携 わ り、
な試料の分析が可能です。
年 間、
年に島津製作所に入社
後は液体クロマトグラフの開発に
析、ポリマーの分析など、さまざま
品に含まれる有機酸やアミノ酸の分
含まれる機能性成分の分析や、医薬
が経営者として経営戦略を担う側に
事業部しか経験してこなかった自分
経験があります。しかし、その後は
る対応だった ﹂と評価をいただいた
からの信頼も獲得し、
﹁ 責任感のあ
ことがありました。結果として顧客
現地スタッフと一緒に検証を進めた
とき、自分が真っ先に現地入りして
というスタンスです。たとえば、あ
私は開発部門にいたときから、何
かあれば﹁まず自分が現場に行く ﹂
感した経験でした。
の製品を用いると、データが一瞬の
るものだったのですが、島津製作所
分析機器はデータ処理の手間がかか
です。それまで研究室で使っていた
デモンストレーションに来られたん
あるとき、研究室に島津製作所の
方が液体クロマトグラフの新製品の
グラフの研究に取り組みました。
があったこともあり、液体クロマト
時代は化学を学び、分析化学に興味
重要な品質課題に遭遇したときは、
つを新たなミッションに。さらに、
迅速化 ﹂
﹁サービスマン教育 ﹂の
のクレームゼロ﹂
﹁クレーム対応の
当時は製造能力に課題があり、品
質保証部に異動してからは﹁ 新製品
ことに初めて気づいたのです。
あればそうでない製品もある。その
てを品質保証の観点で見る役割を経
計測機器の のカテゴリー製品すべ
液体クロマトグラフだけでなく分析
たちも同じように取り組んできたわ
けで、その積み重ねが現在の島津に
験しました。すると、優れた製品も
島津製作所の つの柱
医療から航空事業まで
なり、新たな体験で苦労することも
る海外顧客で製品トラブルが起きた
ことがよくわかりました。
くれた経験です。
年から
では、改めて上田会長のご経歴に
ついてもご紹介いただけますでしょ
ありました。
うちに自動計算され、たいへん驚き
小澤 島津製作所といえば分析機器
航空機器
うか。
日本に帰国後、再び液体クロマト
グ ラ フ の 開 発 に 従 事 し ま し た が、
つながっています。私たちが当たり
ました。
﹁これはすごい、優れた技
部員から報告を受けるだけでなく、
産業機器
年に品質保証部に異動に。
前のように持っているものの中に、
術を持っている企業だ ﹂と意識した
自ら現場に出向いて、現場の人達と
たとえば質量分析計のような装置
会話することが問題解決の迅速化に
医用機器
10
4
計測機器
上田 私は山口県岩国市の出身で、
大学から京都に出てきました。学生
守っていくべきものがある。
一方で、
きっかけでした。
つながることも経験しました。現場
やデジタル技術などの新
も、原理は古くからありますが、近
年は
3
として取り組んでいることには先人
固執するだけでは成長できません。
液体クロマトグラフというのは、
液体試料にどのような成分がどれく
を自分の目で見て、自ら行動するこ
科学技術で社会に貢献する事業
2
らい含まれているかを定性・定量分
技術との融合によって分析のスピー
ドや精度が飛躍的に向上していま
現 在 の 4 事 業セグメント
た文化です。今、私どもが社会課題
1
9
8
9
1
9
8
2
2
0
0
7
とで周囲を動かす姿勢の重要性を実
京都・三条の島津製作所本社にて、JMAC 代表取締役社長( 現会長 )・小澤勇夫と
析する機器です。たとえば、食品に
A
I
4
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 5
- ターボ分子ポンプは世界トップシェ
確な判断を支えています。
用いられ、救急現場では迅速かつ的
です。循環器や脳血管の治療などで
す。創業以来続く﹁ 正確さ ﹂へのこ
信頼性と長期供給体制が求められま
機の安全性に関わる部品には、高い
置 ︶を供給しています。とくに航空
ク チ ュ エ ー タ︵ エ ネ ル ギ ー 変 換 装
つ目は航空機器事業です。防衛
や民間航空機向けに、精密部品やア
解 や 好 奇 心 が 必 要 で あ り、そ れ が
な連携には、まず幅広い分野への理
レーションするのではなく、本質的
ですが、島津製作所では単にコラボ
小澤 外部との連携はサステナビリ
ティ経営においても重要なポイント
の技術力の研鑽につながっていま
アです。現在の事業全体についてお
伸びてきているのは産業機器事業
です。ターボ分子ポンプをはじめ、
だわりが、こうした分野でも生きて
くで高精細な画像を提供できる製品
聞かせください。
半導体など新たな分野の発展に貢献
で知られていますが、産業機器でも
上田 私どもの事業は つのセグメ
ントに分かれています。主力は計測
する産業機器を提供しています。半
めています。食品中の成分や医薬品
導体業界では、高い精度で真空を制
いるのです。
あって初めて﹁ 何と何を組み合わせ
す。
機器事業で、売り上げの約 %を占
の分析、環境汚染物質の検出など、
ニークな考え方や創造性を重視する
文化 ﹂があるとお聞きしました。ユ
上田 そのとおりです。
視点があるということですね。
ると何が生まれるか ﹂という発想が
御できるかが製品の命運を分けます
あらゆる分野で活用されているもの
が、ここでも私たちの精密機器の技
生まれる。つまり、連携には土台と
術が生きています。
なる学びや探究心が不可欠だという
です。最近ではメンタルヘルスや感
取り組んでいます。
もうひとつは、外部の方々や機関
との共同です。足もとの業績をしっ
中から生まれました。
ルスの試薬も、そういう企業風土の
て資産として残る。新型コロナウイ
ますが、そこで得られた知見はすべ
の、売れないもの、どちらも出てき
う ﹂という企業風土です。売れるも
要 望 に 応 え る た め に﹁ や っ て み よ
論する場があります。まずは顧客の
古くから技術者たちのアイデアを議
上田 私どもは長い歴史の中で﹁ 開
発会議・技術会議 ﹂を重視しており、
言われていますが、社会実装にはこ
共鳴、共創 ﹂はいろいろなところで
ンが生まれ、
つながっていく。﹁共感、
鳴という形で広がっていくこと。す
な共感で終わらずに、多くの人に共
が必要です。そこでは単なる一時的
んダメで、社会が共感するシナリオ
い売ってきてください、ではもちろ
上田 いちばん大事なのはシナリオ
づくりですね。製品を開発して、は
お考えでしょうか。
装するためのポイントはどのように
する ﹂ですが、事業や製品を社会実
小 澤 島 津 製 作 所 の 経 営 理 念 は
﹁
﹃ 人と地球の健康 ﹄への願いを実現
かり上げていく一方で、中長期的な
るとそこで、共創、コ・クリエイショ
テーマを多くの専門家や先生方と共
れが不可欠です。
のでしょうか。
メカニズムはどのようになっている
企業風土は創業の源流にあると思い
ますが、それを維持してきた組織の
業とも言えます。血管撮影システム
X
︵トリニアス︶
﹂は、低被ば
﹁ Trinias
社会実装のための
シナリオづくり
線診断装
次 に 医 用 機 器 事 業。
置をはじめとする画像診断装置は祖
データ化するという新たな領域にも
性 測 定 な ど、人 間 の 感 情 や 感 性 を
小澤 まさに﹁ 科学を実学に ﹂を実
践 さ れ て い ま す ね。島 津 製 作 所 は
「 技と業 」の融合をコンセプトモデルとして「 蒔絵 」を施した液体クロマトグラフを製作
﹁ 技術者のチャレンジを否定しない
65
4
4
同研究・共同開発する。これが島津
Business Insights Vol.79
5
I N T E R
TERUHISA UEDA
T O P
- ▲TOP

- ページ: 6
- V I E W
もっと身近になります。
ています。
小澤 まさに﹁ 伝統と革新の融合 ﹂
ですね。では、さらに未来に目を向
どんどん個人の健康管理
このように分析機器が
小型化されると、測定が
伝統工芸と当社製品の融合に取り
けると、どのようなビジョンをお考
年を
今 年、 私 ど も は 創 業
迎え、記念事業の一環として京都の
組みました。私が開発に関わった液
の中に入っていき、デー
上田 今ある分析機器のサイズはま
だまだ大きい。たとえば血管撮影シ
線 撮 影 装 置、
され、フィードバックさ
れていく。ですから分析
に
機器は多くの分野に広が
り、 い ず れ は
︵クラフ
がコンセプトの﹃ Craftech
テック ︶
﹄と位置づけています。創
た。このプロジェクトは﹁ 技と業 ﹂
はもっとコンパクトになっていいと
必要になります。しかし、分析機器
るものなので、ある程度のサイズが
装置などの医用機器は人間を診断す
のでなければなりません。単に、健
るか。そこまでわかるも
もっと健康改善に寄与す
で は な く、 ど う し た ら
には、ただ測定するだけ
考えています。そのとき
どで人に優しい診察室をつくる。あ
技術、データ管理技術、高感度化な
も浸透する時代がくると
業当時の理化学機器にも漆塗りや銅
思っています。
康のために﹁ 食事、睡眠、運動に気
ステムなど
タがリアルタイムに解析
えでしょうか。
まき え
業のひとつ、西陣織を輝かせてきた
。
蒔絵で彩られています︵ 前頁写真 ︶
装置に
頭部と胸部専用の
は京友禅のお誂えの柄を。ほかにも
金継ぎや京七宝、京漆器などの伝統
工芸を機器に施していただきまし
板加工などの技術が応用されてお
センサ﹂
︵写
たとえば﹁
真左上 ︶を先ほど見ていただきまし
わざ
り、その﹁ 手仕事の品質 ﹂は現代の
わざ
高精度を誇る工業製品にも脈々と受
技術や、生体デー
るいは自宅が診察室になる遠隔医療
を実現する
タ を 常 時 計 測 で き る 小 型 化 技 術、
何を行えばどのような効果があるの
か、その効果測定も含めて、各種分
ウェアラブル技術など、未来を予測
﹂を簡単に測定で
きる装置です。体内のたんぱく質が
析データに裏付けられた対策を提案
で、 老 化 物 質
糖と結びつき、コゲのような状態に
なったのが
センサ﹂では、
働きがあります。近い将来、オキシ
ラックスしてストレスを軽減させる
圧を下げ、心拍数を下げるなど、リ
分泌されますが、オキシトシンは血
るとオキシトシンというホルモンが
きます。また、人間は幸福感を感じ
その蓄積量をわずか数十秒で測定で
を提供していきたい。
合し、幅広い領域で製品やサービス
入れており、分析と医用の技術を融
るための最先端技術の開発も視野に
来を考えています。それらを実現す
ドバックされていく。そのような 未
そしてわかりやすい形で人々にフィー
機 器 は もっとコンパク トに な り、
データの活 用 方 法 を提 案していく。
に、
いくつかの展示を行っています。
上田 まさにそのとおりです。未来
社会を体感していただくことを目的
とらえられているのでしょうか。
おける科学技術の社会実装 ﹂として
小澤 大阪・関西万博にも出展され
ていますね。こちらも﹁ 未来社会に
A
I
ホ ー ル デ ィ ン グ ス、
T
O
P
P
A
N
ひとつ目は、大阪大学大学院工学
研究科と島津製作所、伊藤ハム米久
トシンも簡単に短時間で測定できる
しています。
ような技術が開発されることを期待
のひとつ。
﹁
A
G
E
s
A
G
E
s
たとえば心の健康を見守るロボッ
技 術、 セ ン シ ン グ
ト 技 術 や、
進めています。
した最先端技術の開発︵ 右画像 ︶を
I
o
T
A
G
E
s
A
G
E
s
できるような仕組みが必要です。
る成分﹁
をつけてください ﹂だけではなく、
未来を予測した最先端技術の開発
たが、あれは指一本で老化につなが
P
E
T
け継がれている、ということを表し
X
B
to
C
分析が家庭の中へ
未来を変える解析技術
体クロマトグラフも、京都の伝統産
1
5
0
P
E
T
数十秒で測定が可能になった「AGEs センサ」
6
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 7
- 者が運営パート
もつなげていくことを目指していま
す。
バイオプリン
トモデル 機種を関西パビリオン京
つ目は、先ほどご紹介した京都
の伝統工芸技術を融合したコンセプ
月 日∼ 月 日まで展示 ︶
。
がを読んだり、世界史を学び直した
背景を知ることが、本当の意味で技
りしています。社会や人間、文化の
小澤 いずれも、技術そのものより
も〝 社会との接点 〟に強く意識が向
術を〝 人に届くもの 〟にするために
月 日まで展示しました。
なる技術紹介ではなく、
﹁ 科学技術
する場ですから、私たちの展示も単
戦して失敗して、その中から何を学
また、若手の皆さんには﹁ 失敗し
てもよい ﹂とも伝えたいですね。挑
大切だと感じているからです。
る技術を展示し、将来的には動物実
私自身、数えきれないほどの失敗
を通じて数多くのことを学んできま
した。でも、その学びを周囲と共有
して、再び新たな挑戦につなげるこ
した挑戦と失敗と通じて周囲と信頼
とで、次の一歩が踏み出せた。そう
小澤 それでは最後に、これからの
社会を担う若い技術者たちへのメッ
関係を築くことも、技術者として大
若手技術者へ
専門と広さ、両方を持て
アートのひとつである﹁
か?﹂というメッセージを込めてい
Sound
of
﹂
。これは高速度ビデオカ
ます。
Ikebana
その映像をアート作品として可視化
するものです。このようなアートを
見たときに、人はどれを見てインス
パイアされるかを当社の脳機能計測
セージをお願いします。
研究室の中でしかできなかった高精
そして つ目は、量子化学と赤外
分光技術を融合させた、次世代型の
ジ﹂でご覧いただけます。
という試みも進めており、万博会場
し、
﹁ 感情 ﹂と﹁ 科学 ﹂の接点を探る
性計測技術でリアルタイムに計測
めに、鑑賞者の脳波や心拍などを感
アートによる脳活動の反応を見るた
軟 性 こ そ が、こ れ か ら の イ ノ ベ ー
置きつつ、異なる分野とつながる柔
社会の課題が多様化し、複雑化し
ている現在は、自分の専門に軸足を
がっていきます。
れが自分自身の成長と自信につな
磨きつつ、広い視野も必要です。そ
べ ﹂と言われがちですが、専門性は
持ってほしい。よく﹁どちらかを選
分野を学ぶこと
その両方を
専門分野を深めていくことと、広い
をつくってはいけないということ。
上 田 私 が 共 同 開 発 相 手 の ひ と り
から教えられたことは、自分で限界
ざいました。
いたしました。本日はありがとうご
くて温かい道しるべになると確信
すべての技術者と企業にとって、強
社会をつなぐ姿勢 ﹂は、未来を志す
ます重要になっていく時代。その中
技術が進化する一方で、人とのつ
ながりや現場のリアルな声がます
ました。
み出し続けてきた軌跡であると感じ
とに、人と社会の役に立つ技術を生
社会に活かす ﹂という強い信念のも
小 澤 島 津 製 作 所 の
年 は、
単なる企業の歴史ではなく﹁ 科学を
切な力だと思っています。
度 な 分 析 が、将 来 的 に は ス マ ー ト
ションを生むために必要だと思いま
︵ニルス︶
﹂で計測すると
技術﹁ NIRS
フォンサイズの機器で実現できるか
す。私自身、理系の道を歩んできま
小型分析装置の展示です。これまで
メッセ﹁ WASSE
﹂にて
│
もしれない。そんな近未来の姿を感
の﹁ フ ュ ー チ ャ ー ラ イ フ ヴ ィ レ ッ
じていただける内容になっています
いう共同研究も進めています。また
長はありません。
験の代替や、栄養バランスに配慮し
上田 そうですね。万博は未来の課
題解決に向けて共に考える場を提供
けられているのが印象的です。
20
上田 ありがとうございました。
︵
で、島津製作所が体現する﹁ 科学と
1
5
0
ターを開発して人工的に肉を生成す
8
したが、最近は孫と一緒に歴史まん
4
た個別対応の食品開発、あるいは人
口増に起因する食糧不足対策などに
﹂にて
都ゾーン﹁ ICHI-ZA KYOTO
14
ぶかが重要で、そこにしか本当の成
3
D
があなたの未来をどう変えるの
で す。 私 ど も は
造コンソーシアム﹂のプロジェクト
上田会長が開発した液体クロマトグラフの前で
ホールディングス、シグマクシス、
の
6
ナーとして参画する﹁ 培養肉未来創
Z
A
C
R
O
S
つ 目 は、 京 都 大 学 特 定 教 授・
アーティストの土佐尚子先生の
4
メラで水滴が広がる瞬間を撮影し、
6
8
本稿は 2025 年 4 月に実施した対談の内容を構成したものです。
Business Insights Vol.79
7
2
3 22
E
X
P
O
I N T E R
TERUHISA UEDA
T O P
- ▲TOP

- ページ: 8
- 左から、専務執行役員・佐藤喜一さん
オカムラビジネススクール事務局・中村公則さん
株 式会社オカムラ
自前 のビジネススクールで
次世代経営人財の育成に挑む
経営環境が目まぐるしく変化する近年、時代の変化に対応しながら経営の舵取りができる次世代リーダーの育成
が急務となってきている。こうした背景の中で、オカムラは、経営人財を育てる研修「オカムラビジネススクール」
を開講。1年間の育成プログラムの具体的なカリキュラム内容や受講した社員のリアルな声をお届けする。
1945 年創業の国内最大手オフィス家具メーカー。オフィスだけでなく、商業
施設、病院、学校、物流施設まで多様な場づくりへの事業を展開。収益柱
はオフィス環境事業、商環境事業、物流システム事業等。
オカムラの課題
次世代 経営人 財の育成
縦割り組 織からの脱 却
行動につながる実 践的研 修
Vol.79
8
- ▲TOP

- ページ: 9
- OK AMUR A
C ONSULT ING C A SE 1
オカムラが将来の経営を担う人
財を育てようと﹁オカムラビジネス
着実に業績を拡大している。
れるなか、環境変化を的確にとらえ
を提供する存在へと進化が求めら
い、単なる﹁モノ﹂売りから﹁コト﹂
やデジタル化、働き方の多様化に伴
た老舗企業だ。最近では少子高齢化
日本のビジネスシーンを支えてき
家具を中心とした空間創造を軸に、
したわけです。販売店の前に、まず
育てる必要があるということに直面
オカムラ自身に経営ができる人財を
か。
そんな風に考えてみてはじめて、
当社に経営できる人財がいるだろう
を解決していく必要がある。ただ、
引先の大きな課題である後継者問題
と相談されることがありました。取
をオカムラから出してもらえないか
て話をするなかで、後を継げる人物
﹁ 当社社長の中村が販売店に出向い
からだった。
村公則さんは説明する。
カムラビジネススクール事務局の中
をお願いすることにしました ﹂とオ
く り た い と 思 い、
チャーを融合させるプログラムをつ
界的な視点と社内の実践的なレク
蛙状態になる懸念がありました。世
ラム内容も講師も社内では井の中の
﹁ 自前でつくると言っても、プログ
設することにした。
ら、自社内にビジネススクールを開
な経営を学んでほしいという考えか
では、学問ではなく実践的、現実的
リーダー。お金の流れを学ぶプログ
いる﹃ 自分で問題を見つける力 ﹄を
40 12
容を見ると、﹁ 経営戦略 ﹂﹁ 財務戦略 ﹂
されている。具体的なプログラム内
す﹂
︵ 佐藤さん ︶
考えるプログラムも重視していま
オカムラビジネススクール事務局・中村公則さん
﹁マーケティング戦略 ﹂など経営に
関する幅広い知識を身につけられる
講師によるインプットは最
まで一貫して担当する事業本部制を
益 責 任 を 持 ち、製 品 開 発 から 販 売
﹁もともと、各事業部が独立した利
い、経営に必要な思考力や判断力を
て受講者間でディスカッションを行
小限にとどめ、各回のテーマに沿っ
からの講話の時
オカムラ役員
磨いていく。昼食の時間を活用した
ようになっている。
1
各部門のリーダーは育っていると思
J
M
A
C
O
B
オ カ ム ラ は 創 業 以 来、オ フ ィ ス
スクール﹂の開設に本腰を入れ始め
はオカムラの経営人財をしっかり育
てようということになりました ﹂と
います。
ラムをメインにしているのもその
行動変容のカギは
アクションラーニング
月から 月の 年間で実施
毎年
しているオカムラビジネススクール
さんは振り返る。
は現在、 期目のプログラムが進行
育てたいのは、事業全体を見て企
業の成長につなげられる会社経営
関する知識やスキルを教える教育機
店長や部長など部門長クラス 人を
8
基 本 的 な 日の研 修カリキュ
ラムでは、
﹁ 実 践 や 討 議 ﹂を 重 視。
の部門を交えると解決できるかを
身につけ、その問題はどの部門とど
1
対象とし、 回の研修は 時 分か
12
9
ら 時 分までの濃密な内容で構成
1
経営やビジネス、マネジメントに
に支援
たのは、今から 年ほど前のこと。
中村雅行社長と取引先である家具
専務執行役員
働きやすい空間構築を提案
J
M
A
C
関はいくらでもある。だがオカムラ
HR本部長 CHRO・佐藤喜一さん
ためです。また、社長が常に言って
の佐藤喜一
販売店社長との何気ないやりとり
C
H
R
O
中だ。月 回のペースで全 回、支
専務執行役員 経営企画本部長兼
10
1 3
20
取っているため、事業を成長させる
Business Insights Vol.79
9
17
4
- ▲TOP

- ページ: 10
- オカムラビジネススクールのカリキュラム
基本的な1日のカリキュラム構成
自学自習を促すレクチャー
役員OBの講話(昼食時間を活用)
※1年を通じて行動変容を促す
日々業務での実践
だったときの経営判断など、裏話も
間 で は、こ れ ま で の 歴 史 や 工 場 長
て 人ひとりが発表を行う。
を実務に落とし込み、経営層に向け
回は、経営視点で研修で学んだこと
にある。重視しているのは、﹁実践力﹂
の視点を持った人財 ﹂を育てること
は、単なる﹁ 管理職 ﹂ではなく﹁ 経営
こ の カ リ キ ュ ラ ム の な か で も、
部門横断の
プロジェクトも誕生
落とし込むかが受講者に問われる。
わらせず、現場や自身の行動にどう
と﹁ 自発性 ﹂
。単なる知識習得に終
含め経営のリアリティを肌で感じ、
先人の教訓を学ぶ。事前課題をもと
ならでは ﹂と中村さんが
評価する点がある。それは、その日
﹁
けでなく部門を超えた課題の発見、
の始まりと終わりに入れている﹁ア
に受講者間で討議を行い、自部門だ
どうやって解決につなげるかといっ
照︶
。 日のカリキュラムの最後に、
クションラーニング﹂だ︵ 左上図参
期 か ら の 新 企 画 と し て、受 講
た考えを深める。
実際、 期生として参加した執行
者間で共有。新たなアクション事項
コンサルティング事業部 事業部長
役員 オフィス環境事業本部 働き方
日の気づき、学びを言語化し受講
相互に高め合うトレーニング内容を
﹁ 視座が
の碇山友和さんは受講後、
PM
第 2 期生(または第1期生)の卒業発表テーマと
最近の実践内容の共有
1日の学びの共有・次回までの実践事項の設定
アクションラーニング
※ YWT:「やったこと・わかったこと・次やること」で振り返りを行うフレーム
ラーニングにつなげる。継続して自
回の研修の冒頭で行うアクション
務で研修での学びを実践に移し、次
事業のことしか考えていなかったよ
で考えていたため、自分の目の前の
﹁ 受講前は、事業部門ごとに縦割り
大きく変わった ﹂と振り返る。
頭を切り替えていく。われわれだけ
考えながら、その日の研修テーマに
日々の業務で実践できたかどうかを
い。研修の冒頭で前回を振り返り、
に頭を切り替えてと言われても難し
が、財務がテーマの研修だからすぐ
マーケティング業務を行っている人
間が経つと忘れてしまいます。
通常、
に会社の戦略や数字の背景をロジカ
になりました。事業部の部門長たち
業部の同期生たちと話ができるよう
部のなかだけではなく他部門、他事
になっているのは何か、自分の事業
社利益を考えたときにボトルネック
をとらえ直すようになりました。全
係性のなかで、自分の事業部の役割
門や新規事業、本社機能などとの関
ると全社利益につながるのか、他部
の理解が深まり、部員がどう貢献す
では、このようなアクションラーニ
ルに説明しながら、自分の言葉で伝
果だと感じています ﹂
︵ 碇山さん ︶
えられるようになったのも大きな成
ングをカリキュラムに取り入れるこ
プロ グ ラ ム 導 入 の 最 大 の ね ら い
村さん ︶
とはできなかったと思います ﹂
︵中
1
や経営戦略など経営層が発する言葉
身の行動を振り返り、行動変容をう
日の濃密な研修カリキュラムで
1
学びを得ても、次回は カ月後。時
﹁
うに思います。受講後は、人事戦略
1
ながしていく。
いかりやま
回の研修と研修の間は、日々の業
JMAC 専門講師による
事前課題を活用したグループ討議
ワークショップも行っている。最終
を定め、行動変容につなげる。月に
者自身がリーダーシップを発揮し、
1
盛り込み、自主企画による自発的な
1
1
J
M
A
C
1
3
次回の研修に向けた
事前課題(個人検討)
JMAC シニア・コンサルタント・栗栖智宏が
コーディネーターとして一貫したサポートと講師を務める
前回の研修に基づく
AM
前回からの実践振り返り(YWT※)
アクションラーニング
各回テーマに関するオカムラの
社内実践レクチャー
方針や取り組みを学ぶ
各研修間の取り組み
JMAC 専門講師による
10
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 11
- OK AMUR A
C ONSULT ING C A SE 1
体的なアクションへとつながってい
クールで生まれた視座の転換が、具
ト な ど が 進 ん で い る。ビ ジ ネ ス ス
革や、製造と営業の融合プロジェク
ンバーと連携し、提案スタイルの改
新規ビジネスや営業、製造部門のメ
門横断のプロジェクトも生まれた。
に学んだネットワークを活かし、部
さらにビジネススクールでとも
とだと気づかされました。気づけた
に、これは考えなければいけないこ
営にどう効くのか 〟と問われるうち
せん。講師から繰り返し〝それは経
ますが、うまく言語化ができていま
て具体的な説明が必要とされてい
な形で貢献できるのか、研究所とし
与えるのか、利益に対してどのよう
した。研究成果がどう経営に影響を
いう思いです ﹂
︵ 森田さん ︶
続いていく後輩のためになるならと
いまでは、私のキャリアがこれから
の講話もとても参考になりました。
うになりました。女性の社外取締役
のとらえ方を少しずつ理解できるよ
ぜ女性活躍を求めるのか経営視点で
この研修を通じて、社会や会社がな
ることに抵抗感がありました。でも
﹁もともと〝 女性だから 〟と言われ
践が最大のポイントです ﹂と中村さ
ローを続け、実務と地続きである実
る研修で終わらせず、修了後もフォ
カリキュラムの変化は続く。
﹁ 単な
な ど、自 前 の ビ ジ ネ ス ス ク ー ル の
受講者同士の実践共有の会を設ける
スカッションの時間を増やしたり、
にある。受講者の要望を受け、ディ
ネススクールは、現在も進化の途上
等に結びついている。オカムラビジ
げや利益に直結しない研究部門の貢
どのような価値を持つのか、売り上
進化し続けるカリキュラムで
次世代の経営人財を育成
いる。
として、すでに現場に芽吹き始めて
自ら見つけ言語化し、行動に移す力
財の育成。その成果は、経営課題を
を自ら切り拓くことのできる経営人
オカムラビジネススクールが目指
すのは、変化を恐れず、企業の未来
んは強調する。
ことが重要なのだと実感していま
長の森田舞さんは、研究部門のリー
献をどう説明し、どのように社内で
プログラム最後の最終発表は、﹁私
講者個々人に自信と責任意識をもた
オカムラビジネススクールは、受
す﹂
︵ 森田さん ︶
ダーとして、
﹁ビジネススクールで
意味づけていくか。これは森田さん
が考えるオカムラの使命 ﹂
﹁オカム
研究所の役割が会社全体の中で
る。
期生で、働き方コンサルティン
の学びが、自分自身と組織の役割を
にとって今後の大きなテーマとなる
ラの置かれた現状 ﹂
﹁オカムラが目
グ事業部ワークデザイン研究所所
再定義する機会になりました ﹂と語
だろう。加えて、女性管理職として
らしつつある。
る。
の気づきもあった。
(上)執行役員 オフィス環境事業本部 働き方コンサルティング
事業部 事業部長・碇山友和さん(下)働き方コンサルティング
事業部 ワークデザイン研究所 所長・森田舞さん
40
れまでさまざまな研究をしてきま
本ビジネススクールの特徴は、スクール卒業後の各受講
者の「経営課題解決実践」にあります。多くの課題発表型
研修は最終発表で終わり。実務との連続性が乏しい場合
が多いのではないでしょうか。しかし、本スクールは、
経営陣への最終発表に向けて各受講者が自身の業務を起
点に経営の視座から課題を見出し、卒業後は課題解決の
実践まで一貫して取り組みます。これにより、卒業後も
受講者同士が期を超えてつながり続け、部門や立場を越
えて意見を交わし共に助け合う関係性が広がっています。
﹁ 研究所発足から 年以上経ち、こ
シニア・コンサルタント
指すべき姿 ﹂
﹁ 目指すべき姿実現に
栗栖 智宏(くりす ともひろ)
向けた経営課題と解決方法 ﹂
﹁ 自ら
の経営課題解決に向けた実践状況 ﹂
﹁ 自らのありたい姿と行動宣言 ﹂で
構成。これらを経営陣に向けて発表
するプレゼンはまさに〝 卒業試験 〟
。
合格できなければスクール修了も認
められないという厳しさのなか、受
講者は膨大な準備に取り組む。
碇山さんは﹁ 夏休み返上でつくり
込んだ ﹂と笑うが、最終的には納得
のいくアウトプットが生まれ、それ
社名、役職名などは取材時
(2025 年 4 月)のものです。
Business Insights Vol.79
11
は単なる研修内の発表にとどまるこ
となく今も経営改革のプロジェクト
C ONSULTA N T
2
- ▲TOP

- ページ: 12
- 左から、人事部長
(旧三井製糖)太田信之さん、
人事部 人事課長
(旧大日本明治製糖)細谷育生さん
DM 三井製糖株 式会社
製糖業界ツートップの合併で
加速した人事制度改革の舞台裏
三井製糖と大日本明治製糖の合併で「DM 三井製糖」が発足して2 年半が経った。三井物産系と三菱商事系とい
う大きく企業文化が異なる2 社の、統合に伴う人事制度の1本化の大変さは想像に難くない。給与や評価制度、働
き方など多岐にわたる改革をどのように行ってきたか、人事担当者の話から改革の舞台裏に迫った。
2022 年 10月、三井製糖と大日本明治製糖が合併し、DM 三井製糖に。
精製糖のほか砂糖関連商品、機能性食品の製造・販売を行う。製糖
業における国内市場シェア約 4 割。
DM 三井製糖の課題
企業 文化の違い
納得 感の醸 成
管理職の適 正配置
Vol.79
12
- ▲TOP

- ページ: 13
- DMMITSUISEITO
C ONSULT ING C A SE 2
合併に伴う人事制度の統合
日 本 の 各 業 界 で は、生 き 残 り を
糖 ︶は﹁ 合併は既定路線でしたが、
ンセプトからつくりなおす﹁ 変革重
視 ﹂の考え方がある。どちらの考え
う状況になった。どうやって進めて
合フェーズ﹂
、合併後を﹁ 抜本改革
の プロ ジェク ト で は 合 併 前 を﹁ 統
、 年
方でいくかは、基本的には プロジェ
ホールディングス発足から
かけた業界再編が進んでいる。製糖
先のことだろうと考えていました。
年
月に三井
業 界 では、
クトの期間による。そのため、今回
い く の か、こ れ は 大 仕 事 に な る な
そ れ が、合 併 ま で
年もないとい
月には、
三井製糖ホールディングスが
製糖 と大日本明治製糖が経営統合
し
年
月末ま
フェーズ﹂とする 段階で進めるこ
年
と思いました ﹂と当時を振り返る。
合併発表から
度 を 統 合 し な け れ ば な ら な い。そ
基 盤 を 構 築。そ し て 合 併 後 に、新
人事諸制度の統合のほか、採用・配
酬 な ど の 制 度 や 労 働 条 件 と いった
連 の 取 り 組 み は、等 級・評 価・報
合 併 に 伴 う 人 材 マ ネ ジメント 関
ルを組み、定期的に労働組合と協議
合案の詳細設計を進めるスケジュー
方針や改革ロードマップの策定、統
状 分 析 に 始 ま り、人 事 諸 制 度 統 合
働条件の把握や差異を整理する現
統合フェーズでは、人事制度と労
をうまく取り入れることができま
仕組みをもっていたので、その制度
福利厚生は大日本明治製糖が良い
﹁フレックス勤務やテレワークなど
していった。
革へとつなげていくという流れだ。
たな人事戦略に基づく抜本的な改
三井製糖は、
置・育成など人材フローの方針や仕
を 行 い、検 討 状 況 を 従 業 員 に 発 信
統合後の﹁一体感醸成 ﹂を視野に入
れつつも、今回は﹁人事諸制度の統
合 ﹂に焦点をあてた支援内容を提案
した。
統
「 合フェーズ か」ら
抜
「 本改革フェーズ へ」
人 事 諸 制 度 の 統 合 で は、両 社 の
現 行 制 度 を ベース に ど ち ら か 片 方
員 は み な 不 安 を 感 じ て い た。と く
合 併 で 生 活 が ど う 変 わ るのか 社
糖 ︶は語る。
人事部長の太田信之さん︵ 旧三井製
いよう配慮を求められました ﹂と、
との協議では不利益変更にならな
統 合 さ れ ま し た。 そ のた め、 労 組
制度は、三井製糖に寄せていく形で
いがあった給与 や就業規則 、評価
きたと思います。一方で、かなり違
のあたりは非常にスムーズに統合で
糖はまだ検討中だったんですね。そ
ズ が 強 く なって い ま し た が 三 井 製
した。コロナ禍でテレワークのニー
組みの統合、人材業務 プロセスの統
は合併までの期間を考え、
や組織文化醸成まで多岐にわたる。
や 構 築、さ ら に は 経 営 理 念 の 浸 透
合 や 再 整 備、人 事 システムの 統 合
援を依頼した。
こで
に支
着実、効率的に既存の制度を統一し
とにした。まずは合併前の短期間で
2
発 足 。そ の 後
年 月に合併することが
で カ月という短期間で、人事諸制
9
傘下の三井製糖と大日本明治製糖
を
発表された。
新人事制度の導入に向け
た経営陣への報 告 や労
働組合とのコミュニケー
ション、社員への説明な
どを側面支援する。
1
へ寄せていく﹁ 統合重視 ﹂の考え方
人事部長・太田信之さん
三 井 製 糖・ 人 事 部 人 事 課 長
合併前に構築した等級・
評 価・賃 金 制 度につい
て、人事戦略に基づくあ
りたい姿に沿った抜本的
な改革を行う。
の細谷育生さん︵ 旧大日本明治製
新 会社の企業理 念や行
動指針、経営戦略、サス
テナビリティ面の重要課
題などを踏まえて、人事
戦略の策定を支援する。
2
0
2
2
と、新会社で目指す姿をベースにコ
Business Insights Vol.79
13
3. 新人事制度の導入支援
10
4
11
2. 人事制度の抜本的改革
J
M
A
C
10
1. 人事戦略の策定
人事部 人事課長・細谷育生さん
2
3
支援テーマ
D
M
J
M
A
C
2
0
2
1
2
0
2
1
D
M
2
0
2
2
D
M
合併前に実施した人事諸制度統合における残課題を解決し、新会社の方針に合致した
人材マネジメントを行うための制度基盤を確立すること。
目的
- ▲TOP

- ページ: 14
- 新たに定義された
「等級と役割」
す る た め、合 併 後 に ど う 変 わ る の
な っ た こ と か ら、こ の 不 安 を 解 消
業規則や給与体系が変わることに
に大日本明治製糖は合併により就
で き る だ け わ か り や す く、理 解 を
の処遇を詳細にシミュレーションし、
ここで大事だったのが、
﹁ 各社員
回って説明することに力を注いだ。
員が遠い存在になり、意思決定のス
が る こ と で す が、現 場 は 部 長 や 役
す。これはリスク管理の強化につな
厳 格 な 決 裁 プロセ ス が 求 め ら れ ま
ていなかった新たな試みでもあり、
た︵ 上図参照 ︶
。両社ともに導入し
等 級 と 役 割 を 新 た に 定 義、整 理 し
献する﹁スペシャリスト職 ﹂にわけ、
スキルを生かし企業価値向上に貢
G3
班長
G2
班長代理
G1
部員
2級
1級
J
M
A
C
を明確にした組織づくり
す る た め、 指 示 命 令 系 統
して、効率的に業務を実行
た。三井製糖は上場企業と
合において大きな課題だっ
い も ま た、 人 事 制 度 の 統
で は な い。 企 業 文 化 の 違
や就業規則、評価制度だけ
違いがあったのは、給与
ションに直結するためだ。
の変更は、社員のモチベー
感を醸成していったのです ﹂
︵ 太田
し、直 接 意 見 を 交 わ す こ と で 納 得
場社員の対話の場を意図的に増や
考えました。そのため、経営層と現
や意思決定の違いが課題になると
﹁ 人事諸制度の違い以上に、働き方
直接聞く場を設けた。
に 実 施。現 場 社 員 の 声 を 経 営 層 が
ンドテーブル形式の座談会を定期的
ミュニケーション強化として、ラウ
交流を深めた。加えて、合併後のコ
れの部門に分科会を設けて議論し、
生 産 部 門、管 理 部 門 な ど、そ れ ぞ
前の助走期間には両社の営業部門、
この懸念点を払拭するため、合併
の 意 志 は 明 確 で し た。後 は そ れ を
の等級制度の導入に関しても会社
を 取 り な が ら 進 め た の で、複 線 型
経営陣と密にコミュニケーション
度の抜本的改革の内容については、
﹁ 人事戦略とそれに基づく人事制
の各種資料作成の支援を行った。
また経営陣や社員に説明するため
門 家 と し て の ア ド バ イ ス を 行 い、
大きな課題となった
企業文化の違い
をしていた。一方で、大日
子 会 社 で 非上 場
企業。三井製糖より規模が
小さい分、上長との距離が
合 併 後 の 抜 本 的 改 革フェーズで
接役員とやり取りする場
が 重 複 す る 問 題 が 発 生 し た。そ こ
合 併 に よ り、管 理 職 ポ ジ シ ョ ン
もっとも苦労したのが、
﹁ 複線型人
面が少なくありませんで
で、幹 部 職 以 上 は 組 織 の 管 理・ 運
﹁ 大日本明治製糖では、た
し た が、 三 井 製 糖 だ と よ
営を担う﹁マネジメント職 ﹂と専門
事制度の導入 ﹂
だ。
りフォーマルな承認ルート、
とえば非管理職社員が直
近い組織となっていた。
重 複 す る 管 理 職ポジション
をどうするか
さん ︶
の ポ イ ン ト、運 用 面 ま で 含 め た 専
J
M
A
C
本明治製糖は三菱商事の
保 秀 明 は い う。 給 与 体 系
は導入事例や制度設計上
ピードが落ちたと感じることもある
係長、チーフ
非管理職
G4
管理職
課長代理
5 級専門専任職
B
A
G5
3級
課長
係長・チーフ
班長
G6
部長
次長
さん ︶
のではないかと思いました ﹂
︵ 細谷
1級 A
の大久
1級 B
得られるまで何度でも丁寧に説明
2級
することだった ﹂と
3級
か全社員向けにシミュレーションを
M1級
次長、課長
6 級専門専任職
課長
課長代理
G7
4級
部長
一般社員=職能等級
4級
つ く り、全 国 の 事 業 所 や 出 向 先 を
S1級
M2 級
G8
幹部職=役割等級
M3 級
工場長、部長
5級
1
0
0
%
S2 級
M4 級
G9
工場長
6級
スペシャリスト職群
マネジメント職群
役割グレード
役職体系
資格等級
新制度
現行制度
東京都港区にある本社ビル
14
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 15
- DMMITSUISEITO
C ONSULT ING C A SE 2
﹁ 説明会を何度も実施しましたが、
積みだ。
度 の 検 討 な ど、ま だ ま だ 課 題 は 山
か
社員からの質問は尽きることがあ
﹁ 社員のモチベーションや会社への
見をもとにした助言を
ら も ら う こ と が で き、明 快 に 素 早
りませんでした ﹂
︵ 太田さん ︶
い か に 社 員 の 方 々 に 理 解・ 納 得 し
て も ら う か。そ こ で 丁 寧 な コ ミ ュ
く回答することができました。
遇 は ど う な る の か?﹂
﹁ スペシャリ
て社員からは﹁スペシャリストの処
実 際、ス ペ シ ャ リ ス ト 職 に つ い
かけて意見を聞く場を設けていき
に 説 明 す る 機 会 も つ く り、時 間 を
協 議 は 定 期 的 に 行 い、直 接、社 員
事 だ と 考 え ま し た。労 働 組 合 と の
れるまで何度も説明することが大
場からは﹁ 評価制度の公平性をどう
適材適所の人材配置を実現するた
し、人事業務の効率化も進めたい。
愛 着 心、貢 献 意 欲 な ど を 測 定 す る
スト職とマネジメント職はどちらが
ま し た。い ま も 幹 部 職 対 象 の オ ン
やって確保するか ﹂など課題点があ
の強化が必要だなと感じていると
た と こ ろ、ま た 新 た な 課 題 が 見 え
年 月に
も う ひ と つ、
行った人事評価制度の改定は
こ ろ で す。新 基 幹 シ ス テ ム を 導 入
て き ま し た。リ ー ダ ー シ ッ プ 研 修
年 が 経 ち、 現
月で
め、社 員 の ス キ ル と 業 務 の マ ッ チ
年
がっている。
ングをより精緻に行う必要もあり
な ど、現 在 進 行 形 で 取 り 組 ん で い
ます ﹂
︵ 太田さん ︶
費高騰につながるのではないか ﹂な
﹁ 制度はつくって終わりではなく、
人 事 制 度 改 革 は、 継 続 的 な 社
ます ﹂
︵ 太田さん ︶
運用段階での対話がもっとも重要
員 と の 対 話 が 成 否 の カ ギ を 握 る。
ど、数 多 く の 質 問 や 懸 念 点 が 人 事
懸 念 点 を 払 拭 す る た め、 社 長、
なんですね。疑問や懸念点があがっ
の か、わ れ わ れ だ け で は 考 え あ ぐ
伝えていけば懸念点が払拭される
う に 回 答 し て い け ば い い か、ど う
ぞ れ の 評 価 制 度 を 明 確 化 し、説 明
的 な 業 務 設 定 と 役 割 を 整 理。そ れ
回実施。スペシャリスト向けの具体
が参加するラウンドテーブルを複数
しい制度を浸透させるのは時間が
ル ー ル は 守 ら れ な く な り ま す。新
る。 手 を 抜 い た り 粗 末 に 扱 う と、
副社長、
ね て い た と 思 い ま す。対 応 に 困 る
かかるものだというのを念頭にお
会を開催した。
粘り強く続いていく。
合併は会社が厳しい経営環境の中で生き残るために大きな
決断のもとでなされるものですが、成功するかどうかはひ
とえに社員が合併後の会社の将来に希望を持てるか否かに
かかっています。その意味で合併後の人材マネジメントの
基盤となる人事制度の統合・改革は極めて重要なテーマで
す。円滑なトランジション(移行)のために、制度の十分な
検討に加えて何より大事なのが社員とのコミュニケーショ
ン。不安の解消や将来への期待の醸成を図るコミュニケー
ションプランを推進計画に組み込むことが肝要です。
き、評 価 者 の 目 線 が 現 在 の ル ー ル
に合っていなければしっかり指導、
教育して改善し続けることが大切
だと考えます ﹂
︵ 細谷さん ︶
合 併 に よ っ て、制 度 面 だ け で な
く、働 き 方 や キ ャ リ ア パ ス の 考 え
方も変わった。
﹁ 今後は社員に挑戦
や 主 体 性 を 求 め る。制 度 の 運 用 を
通じて社員の意識変革につながる
の大久保はいう。
よう、継続的な取り組みが必要だ ﹂
と
三井製糖の改革はこれからも
てきたら横に置かず真摯に対応す
4
住 宅・ 社 宅 制 度 の 統 合・ 改 定、
シニア・コンサルタント
部に寄せられた。
2
0
2
4
1
︵ 最高人事責任者 ︶
3
導入の是非を含めたエリア社員制
大久保 秀明(おおくぼ ひであき)
C
H
R
O
と、世 の 中 の 情 報 や こ れ ま で の 知
(上)人事制度について、規模の大小問わずさまざまな
ミーティングを重ねた(下)DM 三井製糖の商品
D
M
C ONSULTA N T
﹁ 労働組合経由で届く質問にどのよ
エンゲージメントサーベイをやっ
昇 進 し や す い の か?﹂
﹁ スペシャリ
回開催する
こ こ は 手 を 抜 か ず、理 解 を 得 ら
ニケーションをとることを心がけ
・大久保 ︶
ストとして何をすればいいのかわか
ラインセミナーを月
人事制度改革を社員の
意識変革・組織文化変革に
らない ﹂
﹁ 幹部職が増えすぎて人件
ました ﹂
︵
J
M
A
C
1
2
0
2
5
J
M
A
C
社名、役職名などは取材時
(2024 年 12 月)のものです。
Business Insights Vol.79
15
J
M
A
C
- ▲TOP

- ページ: 16
- 工場を流れるブラックサンダー
有楽 製 菓 株 式会社
みんなでつくる未来の夢工場
工場建設を成長のプロセスに
人気菓子「ブラックサンダー」を手がける有楽製菓は 2024 年、愛知県豊橋市に新たな工場を建設。単なる増設で
はなく、業務や働き方の改善につながる改革のプロセスである。従業員の成長と意識改革を促すプロジェクトの
背景にはコンサルタントとの対話と学びがあった。
1955 年創業。主力商品「ブラックサンダー」などの菓子製造・販売を手がける。
地域限定の土産菓子を展開する観光事業や、海外事業も展開。売上高 165
億円、従業員数 458 人
(2024 年 7月期)
。
有楽製 菓の課題
能力最 大化とコスト最小化
物流の最 適化
工場の
「魅せる」化
Vol.79
16
- ▲TOP

- ページ: 17
- YUR AKUSEIK A
C ONSULT ING C A SE 3
有 楽 製 菓 は﹁ ブ ラック サンダー﹂
にコン サ
ル ティ ン グ を 依 頼 し た の は、 プロ
そ う し た 中、
要に応えるには不十分だった。こう
ジェクトを通じて課題解決の手法や
生産ラインの増設を経てもなお、需
年末、隣接地に﹁ 豊橋
して
分析を学ぶことで、社員一人ひとり
夢工場第
を新設する計画が始まった。
ち込むほどの好物 ﹂とメディアで大
ツ大会に出場した選手の﹁ 現地に持
トにも携わり﹁ 当時は新設備の導入
通昭さん。夢工場の建設プロジェク
ダ ー を 務 め たの は、取 締 役 の 高 橋
新 工 場 建 設 の プロ ジェク ト リ ー
既存工場のコピーではなく
将来を見据えた新工場に
きく紹介され、爆発的なヒットとな
本靖が訪問した際に
に新工場を建設し、段階的に旧工場
際標準化機構 ︶
の基準に対応した製
手法である
た ﹂と振り返る。加えて衛生管理の
による生産力向上が最大の目標だっ
何が必要かを決めていくことを目
か り 策 定 し、そ の 指 針 に 基 づ い て
様な人々が働きやすい職場づくりが
据 え、年 齢 や 性 別 に 関 係 な く、多
不可欠であると考えたのだ。
だ っ た。進 行 す る 少 子 高 齢 化 を 見
から移転。経営理念である﹁ 夢のあ
標にした ﹂と語る。
そ の 結 果、 段 差 の な い 床、 く ぐ
また夢工場は複合的な発想で設
え、豊橋夢工場と札幌工場で担当者
ながら新しい工場を建てたい ﹂と考
まずは﹁みんなの視点を反映させ
た設計が進められた。
現場の細部にまで配慮が行き届い
しやすさを意識した設備設計など、
動できるレイアウト、清掃や点検の
計 し た が、結 果 的 に 壁 や 仕 切 り が
への聞き取りやアンケートを実施。
化は現在も進行中で、将来
そ の 結 果、 現 場 か ら は
件も
多 く、周 囲 を 確 認 し に く い 場 所 も
の課題が集まった。
そ の す べ て に 目 を 通 し、整 理 す
的には夢工場の約半分にあたる﹁ 省
人化 ﹂を目指すという。
本気で変えるため目標は
﹁ 生産性を 倍にする ﹂
その反省を踏まえ、今回は﹁ 既存
多く﹁ 必要なものは必ず取り入れよ
分たちでは気づけなかった視点も
性を
という目標を掲げた。
﹁ 最初は生産
新工場では﹁生産性 倍を目指す﹂
工場のコピーではなく、将来のもの
う ﹂という思いで、実直にコンセプ
る作業は連日夜遅くまで続いた。自
I
o
T
トに基づき施策に反映していった。
想とのギャップを振り返る。
外でした ﹂と、高橋さんは当時の構
取りにくい構造になったのが想定
生 ま れ た。
﹁コ ミュニ ケ ー ション が
圭佑さんらを中心に始まった。
り 抜 け 動 作 を 必 要 と し な い 動 線、
︵国
る安くておいしいお菓子を創造する
造体制の構築も急務だったという。
コンセプトづくりは高橋さんのも
年 が 経 ち、社 会 は 想 定 以 上
モノを持ったままでもムリなく移
ら約
宇 野 泰 生 さ ん、保 全 課 課 長 の 若 見
I
S
O
境 を 整 備 し た。だ が 夢 工 場 建 設 か
や
企業を目指します ﹂から、
﹁ 豊橋夢
と、推 進 事 務 局 と し て 副 工 場 長 の
新工場建設のプロジェクトリーダーを務めた、
取締役・高橋通昭さん
H
A
C
C
P
の速さで変化を続けている。
10
づくりを見据えた新工場をつくる ﹂
2
6
0
0
2
割 ほ ど 上 げ よ う、と い う 話
3
れた。だが、
その後も人気は衰えず、
当 時 も 喫 緊 の 課 題 に 応 え つ つ、
で﹁ 働きやすい ﹂環境を整えること
は、現場で働く人々が﹁ 安全・安心 ﹂
﹁ 新 工 場 企 画 構 想 ﹂で 重 視 し た の
さんは振り返る。
乗ってくれると感じました ﹂と宇野
指 摘 を 受 け、親 身 に な っ て 相 談 に
は﹁ 初回の打ち合わせ時点で多くの
の
の成長が期待されたからだという。
工場 ﹂
︵ 以下、新工場 ︶
J
M
A
C
できる限り工夫を重ねて設備と環
年に豊橋市内
副工場長・宇野泰生さん
工場 ﹂
︵ 以下、夢工場 ︶と名付けら
そのため
り、生産が追いつかなくなった。
ラックサンダーはとある国際スポー
2
0
2 2
2
な ど で 知 ら れ る 菓 子 メ ー カ ー だ。
年に東京都世田谷区で創
年には愛
年に小平市へ本社
と 工 場 を 移 転。
業 し、
年から製造が始まったブ
知 県 豊 橋 市 に も 工 場 を 新 設 し た。
1
9
7
9
2
0
1
1
と決意。
﹁まずはコンセプトをしっ
Business Insights Vol.79
17
J
M
A
C
1
9
5
1 5
9
6
2
1
9
9
4
- ▲TOP

- ページ: 18
- 新工場企画構想から実現までの流れ
・フェーズ 2 構想具体化:設備要求仕様の具体化、コンセプトに基づく施策(生 産性、品質など)の具体化
・フェーズ 3 立ち上げに向けた初期準備:工事、設備導入における課 題管理、 SCM のオペレーション改革の構想検討
JMAC の
・フェーズ 4 新工場運用準備:新工場稼働に向けたオペレーションの準備、関連情報システムの改革の構想検討
支援範囲
フェーズ 3
フェーズ 4
フェーズ 5
構想具体化
立ち上げに向けた
初期準備
新工場
運用準備
新工場
稼 働前準備
新工場
企画構想
フェーズ 2
フェーズ 1
2024
2023
えたいなら、 倍ぐらいで考えない
物事を考えていない証拠。本気で変
という数字は今の延長線上でしか
れない地震のために、毎日膨大な労
なった。
﹁ 何年かに一度あるかもし
せた方が合理的だとの思いが強く
を考えると、人がやるより機械に任
た結果、モノを探す時間、運ぶ時間
しかし運搬距離や工数を分析し
割
と、本当の変化は生まれない ﹄と言
が出ました。でも、ある人に﹃
われ確かにそうだと思ったのです ﹂
倍は難しいと思っていました。で
一方、宇野さんは﹁ 正直なところ
策を講じたうえで、自動化による日
のか?﹂
。最終的には必要な安全対
力をかけ続けるのは本当に合理的な
3
︵ 高橋さん ︶
2
も数字を意識することで、なんとか
判断し、導入を決断した。
常的な生産性向上を優先すべきだと
ていきました。社内だけでなくメー
カーとも話し合いを重ね、どうすれ
ば達成できるかを真剣に考えるよ
うになったんです ﹂と語る。
稼働までのスケジュールが 年と非
最大の課題は、
新工場の立ち上げ・
進めた協力会社との強固な関係性に
支えたのは、プロジェクトを一緒に
となくアイデアを出し続けること
り、適切な意思決定やあきらめるこ
産性 倍 ﹂という目標が判断軸とな
る。このときに、
あらゆる場面で﹁ 生
範囲にわたって検討する必要があ
にはオペレーションの改善など広
ず、工程の改善や設備の改善、さら
全社一体で取り組まなければなら
する体制づくりが、早期から求めら
ため、確実な計画と進捗管理を実行
が高まって大きなロスを生む。その
が、検討が甘ければ手戻りのリスク
定を前倒しで進めなければならない
ては、要求仕様の策定やベンダー選
実に導入が決まっている設備につい
ネックとなったのが設備の導入。確
常 に タ イ ト だ っ た こ と だ。と く に
流の
時間外労働に上限規制を設けた﹁ 物
ほかにもトラックドライバーの
らいやすい環境が整っていたのだ。
れが多く、意図や考えを理解しても
関係各社も夢工場建設時と同じ顔ぶ
ちろん、ゼネコンやサブコンなどの
もあったという。設備メーカーはも
が停止し、原料や製品の出し入れが
た。理由は東日本大震災で自動倉庫
当初、導入には慎重な意見が多かっ
原料倉庫の自動化もその一例だ。
短期間でのプロジェクト推進を
ロジェクトはスムーズに進行した。
期を乗り越えたことで、その後のプ
苦笑いする。しかし、この困難な時
んらは﹁ 地獄のフェーズだった ﹂と
らなかった当時を振り返り、宇野さ
企画構想と同時に進めなければな
工場として、太陽光発電の活用や地
も着手した。また﹁ 環境に配慮した
率化を図るなど、出荷体制の改革に
待機時間の短縮や積み込み作業の効
ラックの滞留時間を計測・可視化し、
テーマとして掲げて取り組んだ。ト
物流をどう変えていくか ﹂も大きな
がっていく。
できなくなる事例があったからだ。
荷の流れが変化するため、
﹁ 出荷の
工場稼働により、夢工場を含めた出
2
0
2
4
2
なども徹底的に見直すことにつな
年問題 ﹂を見据え、新
につながっていった。結果、清掃の
生産性 倍を達成するためには、
保全課 課長・若見圭佑さん
れた。
2
しやすさや機械切り替えの効率性
2
タイトなスケジュールを
いかにして可能にするか
実現したい、という気持ちに変わっ
2
12/4 稼 働
設 備 工事
建 築 工事
企画フェーズ
本生産
開始
竣工
生産設備着工
建 築着工
設備発注
建 築 業者決定
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
・フェーズ 1 新工場企画構想:新工場のコンセプト検討と実現課 題の明確化
・フェーズ 5 新工場稼働前準備:コンセプトや目標 達 成度の評 価と実現に向けた課 題 解決の推 進
18
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 19
- YUR AKUSEIK A
C ONSULT ING C A SE 3
下水の利用といった、持続可能性を
整理整頓や設備管理に対する姿勢が
いる、という意識が働けば、現場の
で示す機会が少なかった。しかし、
を し、具 体 的 な 成 果 や 課 題 を 数 値
た経験や学びは、着実に成果を生ん
新工場建設のプロセスを通して得
で い る。 将 来 を 見 据 え、
重視した取り組みも積極的に取り入
のコンサルティングを通
変わってくる ﹂と話し、見学通路の
年 月には新たに﹁イノベーション
も併設し、観光客の誘致などで地域
たなファン創出を図ること。直営店
して地域とのつながりを強化し、新
績管理チーム、原料における誤使用
整備チーム、記録効率化チーム、実
場の課長や係長も加わり、作業標準
場プロジェクトだったが、次第に現
当初は少人数でスタートした新工
たという。コンサルティングの過程
ンサルタントの言葉にも影響を受け
いよう出し切る ﹂といった、 本コ
さらに﹁やり切る ﹂
﹁ 後戻りしな
前になっている。
議でも数字を用いた議論が当たり
できるようになり、今では普段の会
結果、必要な指標を次々と見える化
取り組むようになったという。その
慣化され、データ収集にも積極的に
れる人が思わずワクワクするような
して働ける職場であると同時に、訪
精神が込められている。社員が安心
戦し続ける﹁ワクワク第一主義 ﹂の
員一人ひとりが前向きな気持ちで挑
﹁ワンユーラク﹂
の考え方、そして社
員が一丸となって仕事に取り組む
﹁ユーラク社員の心得 ﹂には、全社
でいくという。
上げなどに今後も積極的に取り組ん
剰スペースがあり、新ブランド立ち
ラボ﹂も始動。工場敷地にはまだ余
じて、自然と数字を用いた評価が習
経済に貢献したいと考えた。
防止検討チーム、自主保全問題解決
で何度も使われた﹁やり切る ﹂
﹁抜
副次的効果にも期待を寄せた。
れた。
さらに大きな目玉は、悲願だった
﹁ 従業員にとっても家族や友人に自
高 度 化 チ ー ム な ど、複 数 の チ ー ム
け漏れなく﹂
といったキーワードは、
﹁お客さま用見学通路 ﹂の新設だっ
分の働いている場所を見せられれ
が立ち上がっていった。宇野さんは
工場 ﹂
﹁ファンとつながる工場 ﹂と
た。ねらいは﹁お客さまに開かれた
ば、誇らしい気持ちになると思うん
﹁みんなで一緒に勉強させてもらっ
次第に現場の共通言語となり、社員
及ぼしていった。
﹁ 言葉は発した瞬
て、全体の意識改革にもつながりま
保全課でも変化が見られたとい
間に、自分自身がその言葉に向かっ
ングする姿が見られるなど、小さな
ントも自分たちで担ったおかげで、
の大きさ 〟
、つまり費用のマネジメ
事に稼働し始めた。
﹁ 今回は〝 財布
新工場建設において、建屋や設備などハードの改善はもち
ろん、その活動を通じての業務改善や人材育成が図られ
る、貴重な場でもあります。特に企画構想のフェーズは大
変だったと思いますが、深い分析に時間を費やした分、そ
の後何回と訪れるさまざまな意思決定場面でも、自信を持っ
て判断・行動ができたと思います。今まで光が当たっていな
かった出荷や物流の改革にも目を向け、改善を進められた
ことも成果でした。今回の経験が未来に向けた、より良い
工場運営につながっていくことを期待しています。
。有楽製菓の新たな挑戦
場所へ ̶̶
は、今まさに始まったばかりだ。
う。
﹁ 保全の立場から積極的に意見
て動き出すようなところがある﹂︵高
気づきの積み重ねが、現場の成長に
やりたいことがたくさんある中で何
本 靖(つじもと やすし)
シニア・コンサルタント
一人ひとりの思考や行動にも影響を
を出していましたし、打ち合わせで
橋さん ︶
さ ま ざ ま な 取 り 組 み を 経 て、
宿題が出されると、すぐに宿題ミー
ティングが立ち上がっていました。
月 か ら、 新 工 場 は 無
つながっていったと思います ﹂
︵若
判断するプロセスも生まれました。
年
見さん ︶
その意味でも以前のプロジェクトよ
必要なことを自発的に図面にマーキ
また﹁ 数字で会話する ﹂ことが当
た り 前 の よ う に な っ た の が、大 き
り、やりきったという感覚がすごく
を優先し、何をあきらめるかを自ら
な 成 長 だ っ た と 口 を そ ろ え る。こ
強いです ﹂
︵ 高橋さん ︶
12
れ ま で 現 場 で は、な ん と な く﹁ 良
C ONSULTA N T
した ﹂と話す。
新工場建設のプロセスで
得た学びを生かしていく
2
0
2
5
です ﹂
︵ 若見さん ︶
4
J
M
A
C
2
0
2
4
い﹂
﹁ 悪い ﹂といった感覚的な評価
社名、役職名などは取材時
(2025 年 3 月)のものです。
Business Insights Vol.79
19
高橋さんは﹁お客さまに見られて
新工場につくられたお客さま見学通路
- ▲TOP

- ページ: 20
- チームミーティングは、部署に向けてどんな能力が
必要で、どんな活動を行うべきかなどを付箋に書き、
模造紙に貼って可視化
第一三共バイオテック株 式会社
目指すべき北極星は目の前
「ニコニコ活動」が組織を変える
2018年に事業会社から生産機能会社へと大きな変化があり、新たな文化の形成を目指して企業活動がスタートし
た第一三共バイオテック
(DSBT)
。創業4 年目となる2022年に社長の命を受け、全社の風土変革が始まる。改革
の進め方、基本構想、改革実行の経緯など、
「ニコニコ活動」
と名づけられた活動の経緯や成果を聞いた。
第一三共グループのワクチン製造とバイオ技術の会社として 2018 年創業。ワ
クチン、バイオ関連医薬品、治験薬などの受託製造および試験、研究を受託。
日本の公衆衛生、予防医療に貢献している。
第一三共バイオテックの課題
人材育成
組 織 力向上
業務 効率化
Vol.79
20
- ▲TOP

- ページ: 21
- DAIICHISA NK YOBIOTECH
C ONSULT ING C A SE 4
「100日改革プラン」の概要
変化が激しいワクチン業界
求められるのは組織の変革
新型コロナウイルス感染症への対
応 と し て ワ ク チ ン 開 発・ 生 産 体 制
の強化戦略が閣議決定されたのが
月。 そ の 後 も 続 く ワ
め ら れ て い た。一 人 ひ と り が 変 化
に思います ﹂
︵ 片山さん ︶
きを失っている人が多かったよう
月には改革活動がキックオフし
参加したのは
年 秋。 同 年
が改革を支援する形で
対応力をつけ、自発的に行動する。
自分たちで変える組織風土になら
な け れ ば、こ の 先、確 実 に 起 こ る
変化に対応ができないからだ。
年 夏、 全 社 の 風 土 変 革
を 進 め る こ と に な っ た。そ の 足 が
かりとして品質管理部門の試験課
た。職 場 の 現 状 把 握 の た め 試 験 課
スタッフの約半数に対してインタ
ビューが行われ、問題点を抽出し共
有 す る。そ の 結 果 を 踏 ま え て 会 議
に自転
を 繰 り 返 し、改 革 シ ナ リ オ が 決 め
られた。
﹁ 最 初 の 調 査 で、
車 操 業 の 組 織 で あ る こ と、マ ネ ジ
課 は 受 動 的 で 保 守 的 で、社 内 で の
の 集 合 体 で す。そ も そ も ひ と つ の
と か ら、複 数 の 文 化 を 持 っ た 人 々
の ㎝を動かす駆動力 ﹄と﹃ 継続の
れたことは痛かったです。
﹃はじめ
巻き込むことはできなかった。
決活動を推進しても全員を改革に
フ は い た が、少 人 数 で 組 織 課 題 解
﹁ 当時はさまざまな会社の文化や常
化の形成を目指しつつ企業活動を
現在の
として
と な り、新 た な 文
スタートさせている。
識 を 持 ち、組 織 と し て 均 一 な 教 育
なルールや業務の進め方に戸惑い
した。スタッフは、コロナ禍も影響
ツに関連すると取締役 北本工場長
という会社はルーツの
ながら奮闘しているという印象で
﹁
ケーションが希薄であり、うつむき
し た か も し れ ま せ ん が、コ ミ ュ ニ
異なる母体︵ 会社・研究所 ︶が つ
加 減 で 歩 く 人 が 目 に つ き、目 の 輝
次 の 改 革 構 想 段 階 で は、目 指 す
た﹂
︵ 青木さん ︶
ための慣性力 ﹄が課題と言われまし
1
年
クチン業界の変化の激しさに対応
から改革がスタートする。当時の様
全体が変化対応力の不
百合子さんが振り返る。
﹁
足 や 主 体 性 に 欠 け る 風 土 で し た。
存在感、発言力が弱い印象でした。
企業文化が育ちにくい環境である
メントに問題があることを見抜か
それでいて通常業務の負荷が多く、
は第一三共グループの
ワクチン製造とバイオ技術の会社
複数の文化の集合体を
ひとつの企業文化に育てる
を受けてこなかった人たちが新た
年 に 創 業。 社 名 も
のルー
それまでも問題意識の高いスタッ
ていない状態でした ﹂
ことは間違いないと思います ﹂
品 質 管 理 部 も 同 様 で、と く に 試 験
J
M
A
C
12
皆が手一杯で組織改革に手が回っ
品質管理部長・青木百合子さん
の片山通博さんは解説する。
こうした風土は、
2
0
1
8
合 わ さ り、さ ら に 大 量 に キ ャ リ ア
Business Insights Vol.79
21
D
S
B
T
採用した人員で構成されているこ
取締役 北本工場長・片山通博さん
すべく、第一三共バイオテック︵ 以
右の星のマークはスタッフが考案した北極星のマーク
子を北本工場品質管理部長の青木
Small Win の積み重ねでいつかありたい姿(ビジョン)に到達できる。
Small Win の達成に向かって 100 日改革プランで実行。
︶では、組織改革が求
チーム改革活動実施計画
2
0
2
2
J
M
A
C
2
0
2
2
3
Small
Win!
改革
プランを
実行した
組織
D
S
B
T
D
S
B
T
Small
Win!
Small
Win!
Small
Win!
D
S
B
T
6
D
S
B
T
Small
Win!
D
S
B
T
2
0
2
1
各チーム・
課の
ありたい姿
ビジョン
チーム改革活動の
コンセプト
下、
2024 年度活動計画
- ▲TOP

- ページ: 22
- べき北極星とスローガンを次のよ
うに決めた。
います。
改革テーマは﹁ 試験課プロフェッ
ショナル人財の育成 ﹂
﹁ 細胞試験能
力のパワーアップ﹂
﹁ムダ・ムラの
︻ 北極星 ︼
・どこよりも信頼性の高い試験結果
年
是正による業務効率化﹂
と決まった。
月、試 験 課 全 員 で 組 織 開 発 運 動
こうした段階を経て
をオンタイムで提供し、高品質の
ワクチン供給に貢献する。
・どこよりも迅速に新規試験体制を
﹁
月、 試 験 第 一 課 で
ダーを務めている。
﹁コンサルティングが入ると聞い
年
日改革プラン﹂がスタート
て、最 初 は 私 た ち の 仕 事 ぶ り が よ
し、 同 年
三課が続いた。
活動を続けるのはきついが
成果実感する現場スタッフ
よ い 印 象 は あ り ま せ ん で し た。そ
の一方でコンサルのノウハウに興
味 が あ り、よ い き っ か け だ と も 感
当事者である現場スタッフはどのよ
験 課 プロフェッ ショナ ル 人 財 の 育
じました。改革活動では、私は﹃ 試
始 ま る。名 称 は 愛 着 を 持 っ て 笑 顔
成 ﹄を担当しています。それまでは
パスや育成の仕組みが存在しない状
うな印象を持って改革に取り組ん
況 で し た。そ の 状 況 を 改 善 す る べ
で 活 動 し、活 動 の 結 果 で 笑 顔 に な
試 験 第 一 課・ 課 長 代 理 の 齋 藤 晃
試験者の将来像に応じたキャリア
多 さ ん。検 体 の 採 取、保 管 管 理 業
く、試 験 者 と し て の キ ャ リ ア や ス
できたのかを聞いてみた。
務 を 担 って い る チ ー ム で 副 責 任 者
キルを整理し、そのレベルごとに段
れ る よ う に と 願 い、活 動 の 立 ち 上
い、チャレンジを称えよう!
︻マネジャー職のスローガン︼
を担当している。
階的に一覧化しました ﹂
﹁
日改革プラン﹂で
はじめの1㎝が動いた
も周囲を巻き込み、全員で対応して
﹁ 私自身が活動を牽引することより
る。チ ー ム ご と に 改 革 プ ラ ン を 設
発的に動いてくれるのだろうと、そ
ら一部の人員だけでなく、全員が自
いくことを重視しました。どうした
﹁
︶さ せ
日で目
定 し、 実 行 し た ら
標 達 成︵
こはかなり気を使いました。活動を
分析ではなく、しっかりと現状分析
日でまた新たな
や要因分析、目標設定など共通認識
る。 次 の
の積み重ねでいつかあるべき姿︵ビ
実施するにあたっては、自己完結の
ジョン︶
に到達するという進め方だ。
を持った状態で実行に移すことで
を達成する。こ
月からの半
年 は、組 織 全 体 を ど の よ う に 巻 き
ます。
改革を実施するにあたっては、
スムーズに進められたと感じてい
年
込 め ば よ い か が わ か ら ず、ム ダ に
メンバーと議論、意見交換をして共
﹁ 最初の
時間を過ごしてしまった気がしま
通認識を持って実行に移すことで
各自が自発的に対応する体制がで
す。 覚 悟 を 決 め て
きたと思います ﹂
さんは微生物チームのチームリー
試 験 第 三 課・ 主 任 の 沼 田 喜 弘
ランを立ち上げて全チームでの活
の ㎝が動いた感触がありました ﹂
動 に し て か ら は、ま さ し く は じ め
1
0
0
共通した回答が﹁ 活動時間がない ﹂
活 動 の 難 し い と こ ろ を 聞 く と、
日改革プラン ﹂の実行であ
改革推進の原動力となったのは
献する。
︻スローガン︼
ニコニコ活動は現在も継続中だ。
く 思 わ れ て い な い の か な と、正 直
月 に は 試 験 第 二 課、第
11
げメンバーで考えて決めた。
﹁ニコニコ活動 ﹂
︵ 通称・ニコ活 ︶が
1 2
0
0 02
12
3
・ものごとの本質を見つめ語り合
構築することにより、革新的医薬
品およびワクチンの早期上市に貢
2
0
2
3
4
日改革プ
2
0
2
3
︵ 青木さん ︶
試験課は原料受入れから製品出荷までの全工程を検査
5
1
0
0
1
0
0
S
m
a
l
l 1 S
W 0 m
i 0 a
l
n
l
W 10
i
n 0
1
・マネジャー職は率先してチャレン
ジし、皆さんと一緒に考え寄り添
埼玉県北本市にある本社ビル
22
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 23
- DAIICHISA NK YOBIOTECH
C ONSULT ING C A SE 4
れでも実行していかなれば北極星
くことは正直とてもきついです。そ
識を持ち、改革業務に取り組んでい
﹁ 通常業務を抱えつつ、常に改革意
の両立はやはり難しい。
こ と だ っ た。通 常 業 務 と 改 革 業 務
活動が始まっておよそ 年が経っ
た今、二人はこの活動を﹁やってよ
じました ﹂
︵ 沼田さん ︶
周りの理解が得られにくいように感
改革業務にリソースを割くことへの
の確保が難しかったのはもちろん、
なかったため、開始直後は活動時間
た と 感 じ ま す。当 初 は 問 題 の 本 質
﹁ 以前よりチーム内の連携が深まっ
寄り添いながら見守ってきた。
て や る 気。青 木 さ ん は そ の 様 子 を
課 チ ー ム の 心 意 気 や 雰 囲 気、そ し
﹁ 課 題 は ま だ ま だ 多 く、改 革 半 ば
の展望、抱負を語る。
進行しているなか、青木さんは今後
いる者はもういない。順調に改革が
えていく試験課。目の輝きを失って
﹁ 生産計画における業務配慮がない
大切だと感じました ﹂
︵ 齋藤さん ︶
して考えながら進めていくことも
など負荷を軽減できる施策も併行
ます。そのため、通常業務の効率化
﹁ 課題解決力やタイムマネジメント
︵ 齋藤さん ︶
することができたと感じています ﹂
とができたことで自分自身も成長
﹁ 多 く の 知 識 を 学 び、 経 験 す る こ
かった ﹂と口をそろえる。
風土改革でのサーベイの数値も各
と
ているエンゲージメントサーベイ
ループ全体で定期モニタリングし
まってきたと感じます。第一三共グ
みても個々の試験者の存在感が高
も レ ベ ル ア ッ プ し ま し た。外 か ら
な く な っ て き て お り、議 論 の 仕 方
た チ ー ム も あ り ま し た が、そ れ が
にせまらない改革計画を立ててい
拡 げ て 取 り 組 む 予 定 だ。目 指 す 北
今後は工場全体でも改革活動を
に 必 要 な 対 応 力、柔 軟 性 を も っ と
継続的に行うことでワクチン会社
常の業務に加えてこの改革活動を
常 に 求 め ら れ る と こ ろ で あ り、通
チン会社として有事への対応力は
て 取 り 組 ん で い き た い で す。ワ ク
一つひとつ地道に課題改善に向け
ですが、組織員個人の成長を促し、
を優先する必要があったため、繁忙
︵ 目標 ︶は達成できないと思ってい
ため、十分な改革活動の時間を確保
管理の成長につながったと感じま
項目ともわずかながらですがアッ
極 星 は 以 前 よ り 輝 き を 増 し、輪 郭
がはっきり見えてきた。
強化できると考えています ﹂
できない時期もありました。どうし
す﹂
︵ 沼田さん ︶
プしています ﹂
期は改革活動に割ける時間が限られ
片 山 さ ん は、社 内 行 事 で ス タ ッ
フの様子に変化を感じ、喜んだ。
不確実性の高い環境下で組織が成長するには、組織のあり
たい姿を共有した上で、一人ひとりの意識や行動の変容を
促し、周りの巻き込みや自身の成長を考えるように導くこ
とが大切です。第一三共バイオテックの試験課では、マネ
ジャー・リーダーが議論して設定した組織ビジョンを北極
星として改革を展開し、共感する同志を増やしながら、組
織と個人の成長を仕掛けています。全員が北極星の意味を
考え、誰かと一緒に実現に挑む、その環境をつくることが
全員参画の改革のキーポイントであると考えます。
全体で取り組んだ組織
てもコア業務︵ 生産品の品質試験 ︶
チーム連携が深まり
メンバーにもプロ意識が
少しずつ改善が進んでいく試験
コンサルタント
﹁ 役員と従業員の対話会が開催さ
石塚 周太(いしづか しゅうた)
れ、手 上 げ 式 で 参 加 者 を 募 り、試
験課から多くの従業員が参加して
く れ ま し た。彼 ら は 自 部 署 の 置 か
れ た 環 境、組 織 の 課 題 を 的 確 に 把
握し、自分はどうしたいのかをしっ
かり発信できる人が多かったと思
い ま す。ま た、工 場 の 設 備 審 査 会
でも例年にない多くの試験課員が
投資設備の内容を説明してくれま
したが、事前準備がしっかりできて
おり、質疑にもそつなく答えてくれ
プロ意識を持ったスタッフが増
C ONSULTA N T
てしまいました。それと組織全体に
改革活動を行う文化が醸成できてい
(上)試験第一課 課長代理・齋藤晃多さん
(下)試験第三課 主任・沼田喜弘さん
D
S
B
T
る印象が年々深まっています ﹂
社名、役職名などは取材時
(2025 年 3 月)のものです。
Business Insights Vol.79
23
2
- ▲TOP

- ページ: 24
- 日綜産業・岩間事業所の機材センター。
建設現場で使われる足場などの各種機材が保管されている。
左下は BCP について話し合う取締役から構成される
「方針策定委員会」の様子
日綜 産 業株 式会社
従業員の命を守って災害復旧へ
実践を重ねて磨く
「使えるBCP」
大規模災害が相次ぐ中で重要視されるようになっているのが、企業などが緊急事態下でも事業を継続するための
計画である「BCP(Business Continuity Plan)」。策定しただけで満足してしまう企業も多い中、日綜産業では
訓練と計画のブラッシュアップを重ねている。
「 使えるBCP」はいかにして磨き上げられるのか、話を聞いた。
1968 年創業。建設、土木などの現場に必要不可欠な 足場 を中心とする
仮設機材の開発、設計、製造、販売、レンタルを行い業界トップクラスの
シェアを誇る。創業以来、自社製品に起因する死亡災害ゼロを続けている。
日綜産業の課題
災害時の安全確保
復旧作業への貢献
BCP への理 解の浸 透
Vol.79
24
- ▲TOP

- ページ: 25
- NISSOSA NGYO
C ONSULT ING C A SE 5
東日本大震災も教訓に
災害復旧企業の自覚
物資を積んだワンボックスカーを自
災だ。岩間事業所︵ 茨城県笠間市 ︶
ました。社員が安全に働ける環境を
人間は生きていけないのだと実感し
災害については、もうひとつ考え
なければならないことがあった。建
を策
と二人
な っ た。 本 社 に 設 置 さ れ た
事 務 局 を 中 心 に、
三脚での作業が進められた。
サーバーの外部移管は
費用対効果面でも合理的
事 務 局 は ま ず、全 国 の 各 拠 点 か
ら災害時の想定リスクをヒアリング
し、リスト化。優先順位を考慮しな
がら対策を考えていった。事務局メ
ンバーを務める管理本部 総務部 総
務課の城戸嘉浩さんが語る。
﹁ 社員やその家族の命を守ることを
に関する社内のノウハウはほぼ皆
社会的責任を果たす、という原則に
用を守り、最終的に復興支援により
最優先に、雇用やお客さまからの信
無。 策 定・ 運 用 作 業 に つ い て は、
整うことを目標にしています ﹂
週間で緊急復旧機材の出荷準備が
基づいて対策を考えていきました。
の支援を受けることと
社員の安全面に関しては水や食
料などの備蓄を用意したほか、全社
で安否確認システムを導入し、災害
発生時の安否確認をスマートフォン
から迅速に行える体制を整えた。
東日本大震災の際に荷崩れが発
生した機材センターにも、新たな安
全対策がとられた。事務局メンバー
の管理本部 総務部 企画厚生課の髙
岡朋子さんがこう説明する。
㌔を超え
るものもあり、落下すれば人命にも
﹁ 資材の中には重さ
関わります。通路に近い場所では積
み上げの段数を低くして、奥に行く
に従い階段状に高くなるように配置
を変更しました ﹂
日々の業務に欠かせない社内シ
ステム用サーバーの被害対策にも取
り組んだ。それまでサーバーは千葉
管理本部 総務部 企画厚生課 係長・髙岡朋子さん
ら運転して救援に向かった。
して、水や食料のように普段当たり
﹁ 社員の中には、親族を失った者も
の取り組みを
日綜産業が
始めるきっかけになった出来事のひ
前にあるものがひとつでも欠けると
の機材センター︵ 右の写真 ︶では、
つくることが何より大事だという思
いました。極限状態を目の当たりに
年の東日本大震
倉庫内や屋外に積み上げられた機材
いが一層強くなりました ﹂
と つ が、
の一部が崩れ、復旧に カ月ほどを
店は、輸送手段を失い孤立。小野大
・ 後も各地で災害が頻発する
は言う。
ことが私たちの使命 ﹂だと小野社長
状況下でも迅速に支援体制を整える
できる企業として、自社が被災した
しい機材もある。
﹁ 災害復旧に貢献
造物など、同社でなければ運用が難
た。橋脚の崩壊を防ぐための仮設構
害のたびに復旧作業に貢献してき
多くの機材を保有する同社は、大災
設現場に必要不可欠な﹁ 足場 ﹂など
要する大きな被害を受けた。仙台支
1
代表取締役社長︵ 当時は副社長 ︶は
代表取締役社長・小野大さん
管理本部 総務部 総務課 課長・城戸嘉浩さん
B
C
P
J
M
A
C
それ以前から生産効率を高めるた
し か し、 こ の 時 点 で は
年秋にスタートした。
定・ 運 用 す る 取 り 組 み が
業務を継続するための
中、
緊急事態下で社員の安全を守り、
11
めのコンサルティングを行ってき
た
Business Insights Vol.79
25
B
2 C
0 P
2
0
B
C
P
1
0
0
3
J
M
A
C
1
B
C
P
2
0
1
1
- ▲TOP

- ページ: 26
- 日綜産業におけるBCP基本方針
2
被害の軽減を図り、自社の経営を維持する
3
供給責任を果たし、顧客からの信用を守る
4
従業員の雇用を守る
5
災害復旧貢献や地域社会からの需要に応える
県千葉市の本社内に置かれていた
人命(従業員・顧客)の安全を守る
事務局を統括する専
務取締役 管理本部の土屋豊さんは、
な る。
ていくのだ。
その意義を強調する。
でディスカッションしながら確認し
他の企業と一味違うのは、ここで満
﹁ 発災当日から翌日にかけては、社
﹁ 拠点の近くに住む社員を集めると
ひととおり定められた。日綜産業が
足して立ち止まらなかったことだ。
員の安否確認や非常食の配布、家に
て初めて気がつくことや、見えてく
小野社長が次のように語る。
ることがあります。訓練後にはそう
計画されていても、緊急時に実際に
の後は、復旧支援のための機材を出
し た 情 報 を 出 し 合 い、
出社できる状態なのかなど、訓練し
荷できる体制を構築しなければなり
帰れない社員が寝泊まりする場所の
ば意味がありません。災害が起きた
ません。全員が出社できない状況下
確保といった動きを確認します。そ
らすぐに動けるように、トレーニン
ラッシュアップしていく作業をして
をつくっても、実際に機能しなけれ
グの反復が重要だと繰り返し伝えて
でどうやって仕事を回すのか。機材
をブ
きました ﹂
います ﹂
策定後はそれを全社に定着させるた
こういった点を、一つひとつ議論し
はどのような手段で連絡するのか。
都度柔軟に見直されている。たとえ
計画と現実とのギャップは、その
の
めの各種訓練が行われている。事務
ば機材の輸送に必要な燃料は当初、
うち、当初の計画では考慮しきれて
こうしたシミュレーションを行う
討していく中で、安全面やコスト面
が考えられていた。しかし詳細を検
自社で設備をつくって備蓄すること
発電装置などのバックアップ体制が
社外のデータセンターであれば自家
電源供給が止まれば停止しますが、
﹁ 本社内のサーバーは停電でビルの
ることになった。
確認なども定期的に実施。こうした
座学だけでなく、災害時の避難経
路の確認や、非常食や備蓄品の在庫
合格するまで続けられた。
長の強い要請もあって、社員全員が
われ、
﹁ 導入編 ﹂については小野社
勉強会後には﹁ 理解度テスト﹂が行
れている。災害後に設置される﹁ 対
策本部 ﹂を中心に﹁ 救護班 ﹂
﹁ 情報
収集班 ﹂
﹁ 物品統制班 ﹂などの班ご
とに分かれ、それぞれの行動を机上
を改善するための貴重なデータに
のため現在は、普段から取引のある
から現実的ではないことが判明。こ
いなかった課題が浮かび上がってく
整っているので、災害時のリスクを
基本的対策に加え、事業継続に主眼
2
週間後といったタイムスパンを想
1
定したシミュレーション訓練も行わ
3
る こ と も あ る。 こ れ ら は、
の考え方や実際
﹁ 意識醸成勉強会 ﹂を開催。
ていきます ﹂
︵ 髙岡さん ︶
B
C
P
局メンバーは全国の拠点をめぐって
こ う し た 方 針 の も と、
を運搬するトラックのドライバーに
﹁せっかく時間とお金をかけて計画
B
C
P
とは何かという説明から始まり、同
社における
低められる。
コストもかかりますが、
を置いて災害翌日や 週間後、 ∼
の行動手順などを確認していった。
システムが停止した場合の被害を想
が
年夏までには、
2
0
2
1
基礎的な事項を網羅した
B
C
P
こうして
事業継続訓練を重ねながら
をブラッシュアップ
的だと考えました ﹂
︵ 髙岡さん ︶
定すれば、費用対効果の面でも合理
が、社外のデータセンターに移管す
B
C
P
B
C
P
1
B
C
P
B
C
P
専務取締役 管理本部 副本部長・土屋豊さん
B
C
P
大規模災害が発生した場合に
東日本大震災発生直後の岩間事業所の場内。
積まれた機材が崩れるなどの被害を受けた
26
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 27
- NISSOSA NGYO
C ONSULT ING C A SE 5
社の 周年に当たるので、そこに向
本部 管理統括部 統括長の高橋誠さ
ています ﹂
けてさらなるレベルアップを目指し
生産部門の代表委員を務める生産
輸送に優先的に協力してもらえるよ
んはこう語る。
外部の運送業者と連携し、災害時の
う交渉を進めているという。
について﹁ 確実
小野社長は
に よ く な っ て き て い る け れ ど、ま
た意見を吸い上げて会社全体に共有
ところを取り入れたりしてきまし
だまだ課題がたくさんある ﹂と道半
ばであることを強調しつつ、会社と
を通じていざというときに
して真剣に取り組む意義をこう語っ
た。
﹁
備えておくことで、社員は自分たち
が守られていると感じ、
安心できる。
いて、
﹃こんな災害があった場合ど
ことが明記されています。これにつ
てきます。経営者ならば、絶対やっ
ンゲージメントの向上にもつながっ
りますし、それは最終的に社員のエ
幾多の壁を乗り越え、未来への確かな道標を築かれている
日綜産業。その多大な労力の歩みに長年伴走させていただ
いたコンサルタントとして深く感動しております。BCP の
物語は、一人ひとりの理解と粘り強い努力、そして何より
「社員と社会を守る」という強い意志によって紡がれてきま
した。計画に魂を吹き込むのは、反復される訓練と改善サ
イクル。実践こそが BCP 定着の鍵であることを皆さまの姿
が示しています。さらなる安心の未来を創り上げることを
信じて、自走化への挑戦をサポートいたします。
。こうした流れをより
年からは社内の推進体制も強化さ
た。これまで部門ごとの取り組みが
仕組みを構築していく必要があると
うするべきか ﹄と事前に拠点長から
ておくべきことだと思います ﹂
シニア・コンサルタント
社の
れた。従来の事務局に加え、経営幹
中心でしたが、今後は部門を横断し
したり、他部門の対策を聞いてよい
部も参加して会社としての方向性を
た一連のプロセスとして
の
決定する方針策定委員会と、各部門
﹃社員を大事にしたいと考えている﹄
相談が来るようなりました。管理職
感じており、そうしたことも議論し
も自分たちが社員の安全を確保する
推進活動の要となる代表委員会が発
ここまでの活動によって、社員の
という経営者からのメッセージにな
意識にも変化が見られるという。安
役割を担っていることを理解して、
ていきたいと考えています ﹂
否確認システムを使った訓練は導入
真剣に対策を考えるようになった証
大森 靖之(おおもり やすゆき)
変わってきた管理職の意識
自走化へ向け続く試行錯誤
当初、
回答しない社員も一定数いた。
に関わる活動は
なのではないかと思います ﹂
足。定期的に会合が開かれている。
橋脚を支え崩壊を防ぐ支保工。緊急復旧機材としての活用が期待される
B
C
P
その後、
繰り返し訓練を行った結果、
現在では事前通告なしの訓練にも関
年夏で 年目。現在は、推進体制を
さらに進化させるための検討が進ん
わらず、回答率は当初より %超上
でいる。土屋さんはこう説明する。
の支援を受けな
昇し、大部分の社員が応答するよう
﹁ 今後は
になった。城戸さんはこう語る。
という言葉自体を
く て も、
﹁ 当初は
知らない社員が多かったのですが、
きるようにしたい。現在、自分たち
体制づくりを目指した
カ年マス
サイクルを回せる
の手で
で は、 緊 急 事 態 下 で
今では﹃ 自分自身の生活にも関わる
弊社の
タープランを策定する作業を進めて
年は弊
い ま す。
年後の
は各拠点長は本部の指示を待たず、
C ONSULTA N T
強固なものにするために、
推進チームから上がってき
﹁ 代表委員の活動を通して、現場の
60
日々の実践や訓練を通じて
を回すことで磨かれてきた同
生産本部 管理統括部 統括長・高橋誠さん
こと﹄
という意識が生まれています。
B
C
P
社員の安全確保のための判断を下す
3
2
0
2
8
の代表者が集まり日ごろの
B
C
P
25
2
0
2
5
の活動を自走化で
B J
C M
P A
C
B
C
P
B
C
P
B
C
P
B
C
P
P
D
C
A
3
社名、役職名などは取材時
(2025 年 2 月)のものです。
Business Insights Vol.79
27
B
C
5 P
P
D
2
0
2
3
B
C
P
C
A
- ▲TOP

- ページ: 28
- (左から)
生産技術部 主席部員・橋爪悟さん
生産技術部 担当部長・酒匂良和さん
千葉工場 生産管理部 主席部員・大園侑利さん
住友化学株式会社
SMDGで実現する工場DX 改革
∼経営と現場をつなぐ全体最適志向∼
化学業界をリードし続ける総合化学メーカーの住友化学。全国にある各工場ではデジタル技術を駆使した変革を推進し
ているが、より経営に貢献する活動へと進化させるのが課題だ。2024 年6月に公表されたスマートマニュファクチャリン
グ構築ガイドライン(SMDG)の有効性に着目し、まずは千葉工場で取り組みが始まった。
個別最適ではなく全体最適
フィロソフィに深く共感
は現場課題を経営課題に紐づ
け、俯瞰した視点からのアプローチ
領域の生産性向上 ︶か
が望ましい。住友化学も
︵ デ ジ タル
︵ 事業競争力
︵ 新しいビジネ
D
X D 4
3. X
2
0 .
0
の ひ とつ で あ
D
X
1.
0
年から推進し、石油
2
0
1
9
場では
を活用した活動も
化学製品事業をメインとする千葉工
組みを
﹂と呼ばれる取り
る﹁ Digital Plant
している。
スモデルによる価値向上 ︶
へと進化
の強 化 ︶
、
ら 始 ま り、
D
X
1.
0
D
X
年度よりスタート。これは
を単なる技術導入に留め
の 勉 強 会 を 経 て、 生 産
の姿を設定するとい
のフィロソフィに 深 く
D
X
﹁
住 友 化 学 は つの 事 業 部 門﹁ ア
グロ&ライフソリューション部門 ﹂
考えています ﹂と話す。
くリファレンスとして活用できると
最適化を導くためのあるべき姿を描
鑑み、工場を中心とした事業全体の
産部門がそれぞれの置かれた状況に
目指す方向性とも親和性が高く、生
共感しました。これらは、私どもの
う
況に応じた
はなく全体最適、自社の置かれた状
技術部の橋爪悟さんは﹁ 個別最適で
全体最適を目指すものだ。
ず、経営課題と現場課題を結びつけ、
工場の
2
0
2
D 5 S
X
M
D
G
S
M
D
G
S
M
D
G
4
&モビリティソリューショ
I
C
T
S U MITO M O C H EMICA L
スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン(SMDG)の実践
28
Vol.79
- ▲TOP

- ページ: 29
- 大企業から中小企業まで、スマート
化プロジェクトのリーダー役を担う
管理職と経営層の手引書に
ソリューション部門 ﹂
﹁エッセンシャ
ン部門 ﹂
﹁アドバンストメディカル
指 す。生 産 技 術 部 担 当 部 長の 酒 匂
門の情報を整流化して全体最適を目
グチェーン︵ 下図 ︶を整理し、各部
さ こう
ル&グリーンマテリアルズ部門 ﹂が
では製造業に
もそれぞれ特徴があり、異なる。製
チェーンと組み合わせて整理できて
おける生産部門の役割を事業全体の
良和さんは﹁
品特性や市場環境の違いから、課題
います。 つのチェーンで構成され
事業において、経営課題と現場課題
品やプラント設備にも共通する基盤
るものづくりの全体像は、異なる製
は期待する。
﹁このガイドラインと
視点から課題の洗い出し、施策を立
設備の運転計画も考慮し、製造コス
技術的な議論にとどまらず経営側
で、費用対効果を明確に意識できる。
を使うと、
目線としても認識が合いやすいのが
案したかった。
何をどう取り組めば現場課題が経営
す。われわれ現場からの提案が経営
門に対して提案できるようになりま
な生産計画の構築を工場から関連部
しているという。
く、事業部門にも広げることに期待
の活用を生産部門だけの活動ではな
メリット﹂と話す。また、
課題に紐づくのかを整理できた ﹂と
語る。施策への取り組みを
課題に紐づき、事業競争力を高め、
にどうつながるかも整理で
強靭なものへ転換する施策として説
住友化学・千葉工場の変革は製造
業の未来に新たな可能性を示し、業
や
きたという。﹁ガイドラインがあれば、
明できるはずです ﹂
︵ 大園さん ︶
界 全 体の 変 革 をリ ード す るモ デル
ができる土台があることは大きいで
関連部門と目線がずれません。議論
ケースとなるだろう。
S
M
D
G
あり、製品を製造するプラント設備
も共通ではない。そのため、各個別
を紐づけるための考え方の土台とな
として活用できます。この全体像を
皮切りにそれぞれの製品で機能間の
連携、チェーンの最適化など個別の
検討が可能になります。それにより
製造の部分最適に陥らず、大局を見
また、石油化学製品の製造を行う
千葉工場は
も課題だ。
﹁ 当社が
喫緊の経営課題がどうつながってい
を 活 用したいと 橋 爪 さん
待しています。その結果、生産部門
掲げるカーボンニュートラルへの取
S
M
D
G
生産を行う ﹄といった、より戦略的
G
X
トの全体最適を志向した環境配慮型
における
は俯瞰した視点でのア
ものづくりの全体プロセスの最適化を目指す前提として、
最適化の対象とするプロセスの全体像をチェーン連鎖の構
造で整理したもの
るのか、ひとつずつ見ていけば、お
プロダクションチェーン
のずと答 えが見 えてくると思いま
サプライチェーン
り組みの﹃ 責務 ﹄と﹃ 貢献 ﹄の両面に
原材料を加工し製品に仕上げる工程連鎖
おいて、温室効果ガス排出量の多い
エンジニアリングチェーン
プローチが可能になる ﹂と確言した。
技術情報を訴求する業務連鎖
す。材料は揃ったので、アクション
サービスチェーン
当工場が果たす役割は大きいです。
「サービス」を中心とした業務連鎖
推進の指揮をと
千葉工場で
る大園侑利さんは﹁ 製造現場の個別
「もの」を中心とした業務連鎖
S
M
D
G
据えた全体最適につながることに期
現品
管理
に移す段階ですね ﹂
︵ 橋爪さん ︶
生産準備
工場は従来、安全・安定操業のもと、
アフターサービス
課題の最適化に留まらず、生産計画
工程設計
ではシス
酒 匂 さ ん は﹁
テム化のレベルまで言及しているの
商談
与えられた生産量を確保することが
ニーズ探索
求められてきましたが、
﹃ 動力用役
開発・設計
データの流れを整理し、全体最適の
情報発信
を含むプラント操業に関わる一連の
マニュファクチャリングチェーンの全体像
に落とし込み詳細化、加えて
T
K O
P D
I O
今後は、全工場への横展開はもち
ろん、個々が抱える課題に対しても
すね ﹂と大園さんは話す。
社名、役職名などは、取材時
(2025 年 3 月)のものです。
Business Insights Vol.79
29
リユース
需要予測
納品
物流
量産・製造
品質
管理
製造
生産
統制
リソース
確保
る〝 参考書 〟が必要だったという。
工場の役割を「指示どおりの生産」から「事業戦略と連携する生産」へと進化させる
大きな変革が始まる千葉工場
調達
S
M
D
G
D
X
S
M
D
G
戦略的な生産計画の構築を
全工場に横展開していく
4
供給計画
4
D
X
K
G
I
で は、 つ の チ ェ ー ン
で構成されるマニュファクチャリン
S
M
D
G
- ▲TOP

- ページ: 30
- 株式会社日本能率協会コンサルティング
代表取締役社長
大谷 羊平(おおたに ようへい)
1993年、早 稲田 大 学政 治 経 済 学 部 政
治学科卒。同年、日本能率協会コンサ
ルティング(JMAC)に入社。大手・中堅
を含め、多数の業種 業 界における経営
課題解決コンサルティングを支援。収益
改革やBPR、情報システム構築、リスク
管理やガバナンス改革など幅広い分野を
支援している。
Vol.79
30
- ▲TOP

- ページ: 31
- 産業界と共に未来を切り拓く
「伴走型」
のコンサルティング
6月に代表取締役社長に就任した大谷羊平。急速な社会変化の中で「 産業界のために」という原点を
掲げ直す。業界におけるJMAC の存在感や未来への視点について語った。
う。そしてそれらは加速していくと
伴 う 企 業 統 合 が 増 えていくでしょ
効率化する。共同物流などはそのひ
題を解決するために、個社を超えて
手伝い ﹂をするのではなく、業界課
ならば、個々の案件で﹁ 飛び地のお
に同じような課題があるはず。それ
たいと思っています。これは、お客
もっと
考え方に賛同してくださる方々に、
﹁ 産業界から社会を変える ﹂という
でいかなければなりません。そして
発展させ、より優秀な人に引き継い
新型コロナウイルス収束以降、コ
ン サ ルテ ィン グ 業 界 全 体 が 好 調 な
後のプロセス︶や制度・規程の統合
さまだけでなく、コンサルタントを
マートファクトリー化はもっとも得
なって き てい ま す。生 産 現 場 のス
ジェクトを展開し始めています。
でも、業界全体を変える視点でプロ
きます。最近は官公庁や農業の分野
環境があります。それはやはり、現
ショナルへと育て上げる企業風土と
には、コンサルタントをプロフェッ
︵
など、広い領域での支援、提案を行っ
とつで、そのような取り組みも始め
目指す方々にも同様です。われわれ
予測され、私たちは
り ま し た。し か し 各 社 がコン サル
は力を発揮で
ました。意図的に業界構造を変える
は 創 業 以 来、 お もに 産
業界において現場のお客さまと伴走
意とするところですが、
ているから。各コンサルタントが自
も順調に成長してまい
ティング+αの付加価値を打ち出す
ていかなければなりません。
こ と に も、
しながら、課題解決をしてきました。
ては﹁ 最適な使い方 ﹂をフラットに
また、業種を超えたさまざまな連
携にも取り組み、お客さまの、業界
分らしく価値を発揮しながら顧客課
中、
中で、私たちも存在感を強めなけれ
や
領 域への取 り
ま た、
組みは急務で、重要な支援テーマに
を知っていただき
ばなりません。
この﹁ 伴走型プロフェッショナル集団 ﹂
設計・提案することが重要だと考え
全体の課題解決のために、各方面の
場での伴走型支援のスタイルをとっ
であることは、私たちの大きな強み
は人間以上にできる領域
えて成果を残すことにつながりま
題と向き合い、お客さまの期待を超
ク ト を 進 め て い ま す。
の
す。これはお客さまの組織づくりに
年にな
年に創業
年続く企業で
あるために
は
中でまだ取り組んでいない先進的な
取り組みを、いち早く自社でも取り
組み、お客さまへの提案にも取り入
れていくことも可能です。
次の世代にしっかりとつなげるこ
ありません。ですから、私の役割は
本のコンサルティング企業はほかに
りますが、このような歴史をもつ日
チャレンジすること。心の中でいつ
づ き で、人 が や っ て い な い こ と に
の前に道はない 僕の後ろに道は出
来る ﹀
。先駆的なお客さまからの気
光太郎の詩﹁ 道程 ﹂の中にある︿ 僕
最後に、私の好きな言葉を紹介し
ます。恩師から送られた言葉、高村
年続くコンサ
年 を 迎 え、 今 年 で
私たちは、産業を変えて社会を変
えることもミッションのひとつだと
と。 日 本 初 の
くないことのメリットとして、世の
外部専門家とも手を携えてプロジェ
が増えています。今まで見つけられ
ノ ウハウ とテ ク ノロ ジ ーの 掛 け 算
そのまま転換できるノウハウでもあ
が拾い、人間以
を育てるスキームにもなっています。
上に処理する。こうした技術の進化
ります。そして、組織の規模が大き
なかった課題を
また昨年、経済産業省と国立研究
開発法人新エネルギー・産業技術総
の影響
か っ た 範 囲 に も、
のです。業務を単に
力を広げていくことができると考え
に置き替え
作 成 を 受 託 し た﹁ スマ ー ト マニュ
るだけではなく、人間がすべきこと
が有するノ
ファクチャリング構築ガイドライン
︶
﹂は
ざまな現場の支援を伴走し続けてき
たからこそ、オペレーション実態を
私たちはオフィスや工場など、さま
のガイドラインとして、多くの企業
踏まえた提案が可能なのです。
ウハウをもとに作成されました。
﹁も
に活用され始めています。
の影響力を広げ
社会に貢献する
日本の産業界は労働力不足や
など、多くの課題に直面しています。
考えます。たとえば 社からある課
1
0
0
ルティングファームを目指し、より
も意識しています。
自 動 化 や 省 力 化への 転 換 だ け で な
83
︵
ています。
J
M
A
C
J
M
A
C
2
0
4
2
のづくりの現場を最適化する手法 ﹂
オペレーション支援に強い
現場を知る
1
0 J
0 M
A
C
題を相談されたら、それは業界全体
J
M
A
C
1
0
0
の﹁ 見極め ﹂が必要になってきます。
合 開 発 機 構 が 立 案 し、
で、こ れ ま で 私 た ち だ け で は 難 し
J
M
A
C
を顧客支援にどう活かすかが重要な
A
I
が
A
I
に関し
であり、お客さまとの信頼関係の構
ます。
M
&
A
築はもちろん、優秀なコンサルタント
J
M
A
C
P
M
I
D
X
A
I
A
I
J
M
A
C
J
M
A
C
J
M
A
C
く、今後は、経営者、労働者不足に
Business Insights Vol.79
31
A
I
J
M
A
C
J
M
A
C
S
M
D
G
A
D
X
- ▲TOP

- ページ: 32
- Business Insights Vol.79
2025年6月発行
発行人:大谷羊平
編集人:豊島涼子
編集:杉山明日美 柴田憲文
ディレクション:中山真理子
平野拓男
(集英社アーツ&デジタル)
ライティング:島田ゆかり 中原美絵子
内山賢一 小泉耕平 吉岡名保恵
デザイン:村松哉
(DynamiteBrothersSyndicate)
撮影:山田英博 杉山明日美
整理:木村舞子
(Natty Works)
校閲:寺薗かおる
表紙イラスト:嶋田里英
Licensed by TOKYO TOWER
株式会社日本能率協会コンサルティング
〒105−0011 東京都港区芝公園3−1−22
日本能率協会ビル7F
www.jmac.co.jp
© 2025 JMA Consultants Inc.
本誌の送付先情報の変更、
ご意見・ご感想は、
こちらで受け付けています
https://dlabo.jmac.co.jp/bi
本誌の無断転載・複写を禁じます
- ▲TOP