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第1回 あなたがチームマネジメントに活かしている視点はどんなものか?

 本コラムでは、リーダーが直面するマネジメントの課題について人材・組織開発の視点から考えいく。第1回となる今回は、人材や組織の状態を見るエンパワーメントの視点について述べる。

あなたはどのくらい自分から動けているのか?

 あたなはこんな状態になっていないだろうか?

  「目の前の業務の忙しさに追われて、大事なことに取り組めていない」

 もしそうであれば、あなたはアクティブ・ノンアクションの罠にかかっているかもしれない 1)。日々、忙しく活動しているにも関わらず、実際には本当に必要な行動や課題に取り組めていない状態にあるということである。
 それでは次に、あなたが自分から主体的に行動できている度合いを仮に100点を満点で考えるとき、今現在は何点だろうか? あなたがその点数を低いと感じるなら、もしかすると今日は残業を控えて自分のために振り返りの時間をとったほうがよいかもしれない。
 あなたが振り返るときにおすすめの視点が4つある。

問い1: いまの自分の状態は、自分で選んで得た状態だろうか?
問い2: いま自分が取り組んでいることに、意味を見出せているだろうか?
問い3: いま自分が取り組んでいることは、誰かの役に立てているのだろうか?
問い4: これから取り組んでいくことは、意欲を持って取り組めるだろうか?

 この4つの視点から自分の行動を見直すことができるようなら、ぜひやってみてもらいたい 2)

チームや組織の状態はどのような状態だろうか?

 リーダーは業務の進捗や課題だけでなく、メンバーやチーム、組織の状態に目を向けることを期待されている。それが組織として継続して成果を創出する状態をつくる鍵だからだ。
 それでは先ほどのJMACセルフエンパワーの4視点を使ってみると、あなたがマネジメントしているメンバーの状態はどのような状態に映るだろうか? 同じく100点満点で先の問い1〜4について、手元の手帳などにメンバーの名前(イニシャルでよい)と点数を推察して書き出してほしい。あなたから見て低いと感じるメンバーには、何らかの支援的な関わりが必要かもしれない。
 それでは、どのような関わりがよいのだろうか? リーダーがとれるメンバーとの関わりの例を、2つのアプローチで示しておく(下図)。

col_hori_01_01.png

 アプローチAは、メンバーのこれまでの業務への関与が限定的で、本人もさらに関与することにポジティブであれば有効だ。いままでみえなかった世界が開け、担えなかった役割が担える実感を持つかもしれない。
 一方でアプローチBはどうだろうか。あなたにとってアプローチBはアプローチAより難しいかもしれない。それは、あなたがメンバーのことをよく知らないと適切にアプローチできないからだ。ことによるとメンバー自身もふだんから考えていなければ自分がどうしたいかわかっていない可能性がある。その場合、あなたはメンバーの自覚を促すところから始まる。ではどうやって自覚を促すのか。

主体性発揮にエンパワー促進モデルを活かす

 自分がどうありたいのか、自覚を促すための考え方として、"JMACエンパワー促進モデル"を提案する。エンパワー促進モデルは実践的なインタラクティブアプローチで、以下の4つの段階からなる(下図)。

col_hori_01_02.png

 参考までに歴史をたどるとエンパワーメントの考え方や実践技法は、ソーシャルワーク(社会福祉援助技術)の分野で発展してきた。人種差別など抑圧された環境で支援を必要とする人々、また心身の発達や老化の面から支援を必要とする人々を対象に実践されてきた。その実践技法の一例をあげると、個人的なパワーの回復を図るカウンセリング次元や相互支持次元、自分を取り巻く環境や関わり方を問題とするアドボカシー次元、社会的、政治的側面への関わりを持つソーシャルアクション次元の4つの次元がある 3)
 JMACでは、社会福祉援助の受け手と援助者の関係性の文脈で語られるソーシャルワークのエンパワーメントをビジネス環境における組織マネジメントの文脈で考え提案していく。
 筆者は今回、リーダー自身やチームメンバーの主体性発揮を促す観点からエンパワーメントを述べた。次回以降、今回提示した"エンパワー促進モデル"4つの視点と組織マネジメントへの活用について、さらに考察していきたい。

【参考文献】
1)『リーダーシップの旅 見えないものを見る』(2007)野田 智義、金井 壽宏 光文社 p164〜166
2)JMAC WEBコラム 笠井洋:「しなやかな組織・人・チームづくり」
3)『エンパワメント実践の理論と技法』(1999) 小田兼三、杉本敏夫、久田則夫 中央法規 p84〜94

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