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第4回 計画遂行とやる気の関係

2016年10月27日

 本コラムでは、技術部門の職場の現実を直視しながら「技術者の知的生産性向上と職場活性化」を考えていきます。「慢性的に忙しく元気がない」職場を真に活性化するためのヒントを提案していきたいと思います。第4回目は、日常の計画遂行とやる気の関係について考えたいと思います。

日々のやる気の源泉は何か

 みなさんの職場は元気がありますか?
 一人ひとりは、仕事へのやる気を高めながら日々の仕事を進めていますか?
 モチベーションを上げながら仕事をしたいとは誰もが考えますが、
「日々あふれる仕事に追われる中で、疲弊してしまう」
「みんなが黙々と仕事をしているが職場の雰囲気が暗い」
「一方通行で受身の仕事になっている」
との声も聞かれ、やる気に満ちあふれているとまでは、なかなか言い切れない職場もあるようです。
 小手先の活性化策ではなく、根本的には何が求められているのでしょうか?
 一番の仕事の動機づけになるものは何でしょうか?

日々の仕事の進捗が意欲を高める

 興味深い研究結果があります。ハーバード・ビジネススクールのテレサ M・アマビール教授は、知識労働者の日誌を詳細に分析し、仕事のモチベーションをもっとも高めるのは、「有意義な仕事の進捗を図ること」であるという「進捗の法則」を明らかにしました。これは、報酬としての「優れた仕事に対する評価」「目に見えるインセンティブ」などよりも、目の前の「日々の仕事の進捗」がもっとも意欲を高めるというものです。

 逆に、日々の仕事の進捗を妨げる障害があり、それが繰り返されると、人々は組織を否定的に見るようになり、内発的動機(好奇心や関心など)も失ってしまうとのこと。それが、組織の生産性と創造性の両方を低下させ、仕事の達成量が減り、仕事の内容にも不満を持ち、組織全体が悪循環に陥ってしまうようです。

 アマビール教授は、マネジャーが進捗を促す方法として、
・有意義な仕事(仕事の重要性、意味を理解してもらう)
・明確な目標(仕事の方向性を理解してもらう)
・自主性(目標達成のために独自の能力や専門知識を発揮する)
を原則として重視し、
・小さな成功機会をつくる(目標は中期的で達成可能なステップを含める)
・障害の芽を摘む(進捗を阻害する要因に注意を払う)
ことを勧めています。

 詰まるところ、「目の前の日常業務そのものがいかに気持ちよく進捗するか」が日々の実感であり、それに向けたマネジャーや周囲の関わりが、職場のやる気を生み出すうえで、もっとも重要だということです。もちろん、個々人のモチベーション論としては十人十色のところもありますが、根本的なやる気の土台としては、一人ひとりの仕事の進捗にまずは目を向けていくべきでしょう。

 通常、どの職場でもプロジェクトの進捗会議は行われています。ただし、その"進捗"管理が、発生した問題や遅れの対策に追われる"結果"管理になってしまっていませんか?

 その"進捗"の中身がいかにマネジメントされているかが問われています。

進捗を促す計画づくりと振返り

 日々の仕事の進捗を促し、意欲を高めるために「計画づくりと振返り」のマネジメントを再考してみてはいかがでしょうか。

 みなさんの職場でも日常業務の計画を立てていると思います。プロジェクトの日程計画や課題一覧表などの仕組みに加えて、個人レベルの週間日程表として電子ツールやスケジューラーにタスクを書き出したものを運用している職場も多いようです。しかし、具体的な細かい作業は個人の手帳の中に、手順は頭の中だけに、閉じ込められてしまっていませんか? もしそうであれば、進捗の法則が十分に実践できていない可能性があります。

 たとえば、週間日程表をつくる場合、下記の要素を盛り込みたいところです。

 まず、個人が直近の小さな目標を立て、上司は必要に応じて仕事の背景や意義をしっかり伝え直し、方向性をしっかり定めてお互いに合意、納得します。そして、具体的な計画業務とともに、事前段階で障害となりうる懸念点や心配点を洗い出します。障害の芽に対しては、チーム、マネジャーや有識者の知恵を集め、事前に芽を摘み、実現性を高めておくことが重要です。そして、計画を遂行しながら、実績を記録します。計画した仕事一つひとつを消し込むことで、仕事が前に進んでいる実感も得やすくなります。また、日々の気づきについても記録をしておき、埋もれないようにしておきたいところです。週の終わりには、振返りをして、進捗の達成感を味わうとともに、次に向けた課題や教訓も抽出します。

 日々の当たり前の週間計画でも、やる気を高める具体的な実践手段のひとつになり得るのです。

計画は人とチームの成長の場

 目標設定においては、プロジェクト業務の目標だけではなく、個人やチームとしての目標も同時に考えることが有効です。「今やっている仕事に自分のチャレンジや工夫が盛り込まれているだろうか?」「(チームリーダーやマネジャーは)日々のチャレンジを提供できているだろうか?」......日々の進捗会議でも自分達の成長目標も話題にしたいところです。

 目標管理の面談のときだけではなく、目標設定でかかげたことを具体的にどの仕事で達成していくのかについて、日々の仕事の中でその目標を常に見えるようにし、達成に向けて計画し、チームでサポートし、振返りをしていくーーこれらを実践することが日々の仕事への意欲となり、最終的な目標に一歩一歩近づいていく実感を生み出すことにつながります。

 計画の役割は、単なるスケジュールや管理ツールにとどまるものではありません。仕事の事前段階で問題を表出化させ、見えにくい思考やアイデアを見える化し、知恵集めの土台となることはもちろん、それらの計画行為を通して、人の意識、やる気を変えていくものでもあります。計画は人と業務をつなげ、やる気を生み出すシステムとして捉え、活用していただきたいと思います。

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 次回は、日常業務において効率化すべきものを考えていきます。

■参考文献
テレサ M. アマビール、スティーブン J. クレイマー(2012)「知識労働者の生産性を高める 進捗の法則」、『Harvard Business Review』2012年2月号、ダイヤモンド社

コンサルタントプロフィール

星野 誠

星野 誠

KIセンター チーフ・コンサルタント

技術者や事業スタッフの知的生産性向上と職場活性化を専門としている。知的生産性を妨げるさまざまな問題が絡み合う職場に飛び込み、日常業務の仕事のやり方を具体的に変えていくコンサルティングを実践。300チーム以上の職場変革支援の経験から、やらされ感でなく自分たちで自立して変革を進めるための考え方と実践手法を日々研究している。とくに輸送機器業界や精密機器業界など製造業の開発設計/技術部門における変革活動の支援経験多数。
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