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第1回 今なぜ「共同物流」なのか?

共同物流が求められる理由

 企業にとって、物流は必要不可欠なプロセスだ。このプロセスへの取組みとして、90年代以降、多くの荷主企業は物流をアウトソーシングしながらコストダウンを図ってきた。しかし、一昨年後半から、この物流分野の再評価・再構築をしようという動きが加速している。企業の置かれた経済環境の悪化に伴い、外部流出コストである"物流"のコストダウンを徹底して目指す動きが始まっている。

 この動きの中で特徴的なことは、自社の物量が伸びない、もしくは減少することを前提として、「いかに効率的な物流システムを再構築するか」に各社が取り組んでいる点にある。

 言うまでもなく、物流はスケールメリットが働きやすいプロセスである。JMACが過去にコンサルティングを行ってきた企業は、ほぼ例外なく量的な成長を事業計画の前提としてきた。しかしながら、この数年でその様相はまったく変わってきている。前年度対比でマイナス売上を前提として、いかに収益を確保するかを至上命題とする企業が明らかに増えている。

 量的な拡大が望めない状況下で物流のコストダウンを達成するために、まず自社の物流をできるだけシンプルにして、量のまとめ効果を図ることになる。たとえば在庫拠点集約とクロスドック化、企業グループ間での物流統合、物流事業者の絞込みなどである。

 このような流れの中で、次の一手として注目されているのが共同物流である。自社だけでの量まとめには自ずから限界があり、また波動性の吸収という高いハードルもクリアできない。従来は競合企業同士が共同配送を企画すると、営業部門からの反対で見合わせざるを得ないケースが多く見受けられた。それもある程度払拭されつつあるのでないだろうか。

 さらに共同物流の追い風となっているのが、二酸化炭素排出量削減の動きである。2005年度にはエネルギー合理化に関する法律(省エネ法)が改正され、2006年より荷主及び輸送事業者のエネルギー使用が法的に規制されることとなった。また、2009年9月には鳩山首相が「2020年までに温暖化ガスを1990年比で25%削減する」ことを国連気候変動首脳会議で発表した。

 以上のような背景により、共同物流がクローズアップされてきているが、物流の共同化と言っても、実にさまざまな共同化が存在する。それらを整理すると、次のようになる。

共同物流のパターン

 共同物流は、主体となる企業の組合せによって、大きく3つに区分できる

■同業種による共同化

 この場合は、荷量の集約による量的拡大のメリットをねらう。共同輸配送、共同保管、共同受発注、ユニット標準化などの連携により、規模統合による効率化を追求する。荷扱い特性や輸送・配送先特性に類似性があれば、共同化の条件を整えやすいという特徴があり、従来の共同物流の主流となっている。拠点間の相互ラウンド運行、納品先荷量が少ないエリアでの共同配送などがその代表例である。

 確かに条件さえ合致すれば実施の難易度はさほど高くないと言えるが、各社の生産・流通戦略の変更によって短期間で終わるケースも少なくない。



■サプライチェーン全体の連携による共同化

 このパターンでは、メーカー・卸・小売の流通三層が、在庫情報、販売情報、輸配送情報などを共有化して、生産から店頭販売までのプロセスを共同プラットフォームで運営していくことにより、効率化を追求する。

 本格的にこのパターンを志向する場合、物流インフラの大規模な改廃、新たな情報システムの構築、取引制度の変更などを伴うことになるため、各社間の調整を含め、実施の難易度は高いと言える。日本における流通構造が大きく変わろうとしている時期でもあり、今後はこのような共同化が進んでいくと考えている。

 一方、取引上の関係という足枷の中での活動となるため、そのサプライチェーンでの主導権を誰がどのように発揮していこうとしているかによっては、企画倒れとなるケースも発生する可能性が高い。



■物流ネットワーク資産の活用による共同化

 これは主に物流事業者が、保有している資産・ノウハウを活用して各種物流サービスを創出し、単一企業が行うよりも安価な物流を提供することにより成立している。共同集荷、共配センター運営、納品代行など、業種業態に特化した高い専門能力を保有しているがゆえに実現可能なのである。

 この場合、取引上の制約条件などを考慮する必要がないため、荷主企業の参画は比較的容易である。逆に物流事業者は、インフラの整備、質の高いサービスの継続が求められるため、事業運営のさらなる向上が必要となっている。

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 以上述べてきたように、共同物流にもさまざまなパターンが存在する。次回以降はパターンごとにそれぞれの成立条件や成功要因を考察していく。

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